ものづくり中小企業の変革と挑戦を支援しているMOBIOでは、MOBIO 常設展示場出展企業様・インキュベートルームの入居企業様の「 変革と挑戦 」について、取り組みのきっかけ(背景)、 具体的な内容などをインタビューしご紹介していきます。ここにはヒントが沢山詰まっているはずです。 じっくりお読みください!
pick up company 016
試行錯誤の末に掴んだ技術提案力で顧客開拓
有限会社三神製作所 代表取締役 松山 昭博 氏
会社名 | 有限会社三神製作所 |
---|---|
住所 | 〒587-0022 大阪府堺市美原区平尾648番5 |
電話番号 | 072-362-3686 |
代表者名 | 代表取締役 松山 昭博 氏 |
設立 | 1975年(昭和50年) |
事業内容 | 金属プレス加工 各種溶接 電設用金具 |
自社開発製品への挑戦で目が覚める
電設用金具や精密板金用部品に関するプレス加工や板金を行う有限会社三神製作所。代表取締役の松山昭博氏は、高校卒業後、父親である先代が経営する三神製作所に入社し、ものづくりに取り組んできた。
「父親を手伝いながら、下請けだけでは厳しいと感じていました。私が会社を継いだ時に下請けを脱却したい、何か新しいことをやりたい、と考えて取り組んだのが自社開発製品の開発でした」
3年ほどでいくつかの自社開発製品を完成させ、複数の特許を取得した。だが世の中は甘くなかった、と松山氏。
「売れませんでしたね。自社開発製品といっても現行品の改良程度で中途半端だった上、営業力もなかった。今考えれば、売れないのは当然の結果なのですが(笑)」
この経験で自社開発製品ではなく、異なる方法での挑戦が必要だと痛感した。次に考えたのは「どこかのメーカーと協業する」ことだった。
「単なる発注先と受注先の関係ではなく、一緒に考えながら仕事ができるようなスタイルで依頼していただける顧客を探そう、と」
松山氏はそのような想いを胸にいくつかの展示会を回った。すると、想いが実現できそうなある企業と出会うことができた。
お客様に喜んでもらえるものづくりを目指す
加工品サンプルを送るなど、展示会で出会った企業とコミュニケーションを重ねた松山氏。そんなある日、既存の取引業者が断ったという仕事を三神製作所に依頼してもらうチャンスを掴んだ。
「いわゆる“安くて難しい仕事”です。しかし、当社ではただそれを作るだけじゃなくて、さらなるコストダウンを可能にする改良点を提案しながら製品を完成させました。それがお客様にとても喜んでいただけて、継続して発注が舞い込むようになったんです」
松山氏が持つ20年以上の経験に裏打ちされた技術と、ものづくりへの熱意が結実した仕事だった。
「自社開発製品に挑戦した経験も生かせましたし、なにより良いものを作るという自分の職人気質がお客様の喜びにつながったことは、本当にうれしかったですね」
他社が敬遠するような複雑で大変な仕事が好きだという松山氏。クリアした時の達成感が何物にも代えがたく、その瞬間が楽しみなのだそうだ。
「届いた図面通りに作って納品するだけでは、面白くないし利益も出ない。しかもお客様も当たり前と考えて喜んでくれないから、安い他社や海外にすぐ流れていく。常に『お客様に喜んでもらえるものづくり』を意識してきたからこそ、厳しい今を生き残れているのだと思います」
最高の技術は『良し悪しを判断できる目』
松山氏は会社を継いだ後、自社製品の開発に加えて、もう一つ大きな挑戦をした。それが工場移転だ。
「工場と敷地内にある機械をまとめて買わないかという話が舞い込んできたのがリーマンショック直後。しかも、その時点では機械も新たな空間も必要じゃなかったため、周囲の誰もが反対しました。でも、さらに厳しくなる時代を生き残るには、機械と場所が必要だと考えて移転を決断したんです。移転から3年経ちましたが、その考えは間違っていませんでしたね」
今後も会社のモットーでもある『正直・誠意・信用』を胸に、コツコツと着実に成長することを目指す。
「未来工業の創業者である山田昭雄氏の言葉に『楽して儲ける』があります。その言葉のように、今後は社員一人ひとりが知恵を使って楽に利益を上げられるような会社を目指して、社員教育や会社の仕組み作りに力を入れていきます」
取材日:2013年1月24日(木) ライター:中直照((株)ショートカプチーノ)
MOBIO担当者より
「良いものをお届けするのは当然ですが、技術的に可能でも過剰品質は要らないんです。」 他で難しいと言われたことにチャレンジし続ける松山社長の言葉からは、職人としての誇りと経営者としての顔を垣間見ることができた取材でした。 (担当:奥田)