ものづくり中小企業の変革と挑戦を支援しているMOBIOでは、MOBIO 常設展示場出展企業およびインキュベートルームの入居企業の「 変革と挑戦 」について、取り組みのきっかけ(背景)、 具体的な内容などをインタビューしご紹介していきます。ここにはヒントが沢山詰まっているはずです。 じっくりお読みください!
※出展終了およびインキュベートルームから退居した企業の記事は掲載しておりません。
pick up company 063
次世代の鍛造品創造に向け、複合鍛造+機械加工による高精度技術で挑戦
ヤマコー株式会社 代表取締役社長 山本 晃永氏
会社名 | ヤマコー株式会社 |
---|---|
住所 | 大阪府東大阪市加納4-3-26 |
電話番号 | 072-965-5621 |
代表者名 | 代表取締役社長 山本 晃永氏 |
設立 | 1952年 |
事業内容 | 熱間鍛造品・冷間鍛造品、熱間+冷間の複合鍛造品、機械加工品と作業工具 |
熱間鍛造・冷間鍛造に機械加工を加え、鍛造での加工の極限を極めた製品群を生み出し続ける。
自動車のエンジンやトランスミッション用部品、牽引フック等、他分野では、鉄道架線金具、産業機械部品、建築金物といった多種多様な製品を日々生み出している鍛造メーカー・ヤマコー株式会社。そのモノヅクリの特徴は、熱間鍛造及び冷間鍛造を交えた複合鍛造に、機械加工をプラスした高精度加工技術により、微細形状の製品を生み出せるところにある。
製品に高い強度をもたらす鍛造加工と、複雑かつ微細な形を再現する機械加工の融合は、まさに同社のアイデンティティと言えるもの。この複合鍛造+機械加工による高い技術力に、現社長の山本晃永氏を筆頭とした技術者たちが他社では製品化を断念した製品にも果敢にチャレンジする姿勢が合わさり、同社は今、次々とこれまでの鍛造技術だけでは実現できない製品、つまり不可能を可能にした製品を生み出しているのだ。
「当社ではこれまで鉄をはじめ、先端技術に関わるチタン素材も使った鍛造品や、最近はコバリオン、インコネル等、新素材を使った鍛造品の開発製造にもチャレンジしており、特許申請中のものもあります。医療や航空宇宙分野でも活用される製品の開発や、CFRP熱可塑での最先端素材を加工できることは、当社の大きな強みであり、次世代、その次の世代のニーズにも応えられるほど、アドバンテージとなっているんですね」と山本社長は語ってくれた。
事務・総務部門、経理部門、営業部門、製造現場の全てを経験し、あらゆる改善に取り組む。
創業から70年以上続く同社をリードしている山本社長が、経営を引き継いだのは2年前。実は大学を出てからの2年半は、自動車メーカーの広報部でPRや広報活動を経験。その中で、技術報を作成するために技術の勉強や技術者との会議をまとめるという貴重な経験をしたそうだ。
そんな山本社長が同社に入ったのは20数年前となる。最初は、事務作業を任されたものの、社内の情報管理が成されていないことに愕然。商品データや仕入れ先情報、顧客情報もすべてが紙ベースであったという。そこで、大企業で働いた経験を活かして、様々な情報・データのIT管理、一元管理体制の構築に取り組んだ。社内の情報管理が形になろうとした矢先、前社長である父からいきなり「これからは設計をやれ!」との命を受け、戸惑いつつも学校に通い、設計を習得した。
「設計経験の後、一時 結婚・出産で外れた期間はありましたが、復帰した後、経理業務にもたずさわり、銀行との取引や資金繰りにも関わった。当社に入って、色んな変化やアクシデントに対応してきた経験は、今も活きていると感じることはありますね」と山本社長。
入社から事務・総務、設計、経理等、色んな部門を経験する中で気づいた問題や課題については、徹底的に改善を行ってきた。そうして2年前の社長就任を経て、現場での改善活動に磨きを賭け、技術者の意識改革、さらに積極的な営業活動にも注力することでお客様のニーズに直接むかいあうことができ、今、これから何をするべきかを常に考えている。
社員全員の意識が大きく変化し、全社一丸となって、新しいこと、難しいことに挑戦できる体制に!
「社長になって大事にしたのは、「年度方針の全員への周知徹底」と「ISOと年度方針とPM改善活動をイコールにする」ことでした。そのために社員ととことん対話しました。今では社員自らが方針に沿って、自分の課や個人がやるべきことを落とし込み、みんなの前でプレゼンするまでに変化したんです。そしてその自分たちがつくった方針をPMや改善活動にさらに自分たちで落とし込み、自発的に活動するようにもなりました」
まさに社員一人ひとりが、会社運営や仕事改善を他人事ではなく、自分事として捉えられるようになったことで、全員で会社を成長させるという意識も生まれてきたという同社。大きく社員の意識が変わったことで、山本社長が新規営業で獲得してきた、航空宇宙分野の高難度の製品開発案件や、まだどこの鍛造メーカーもやったことのない素材CFRPの加工案件にも、技術者が積極的にチャレンジする姿勢が生まれる等、好循環が生まれているという。
そうした中で、山本社長は、若手技術者のモチベーションアップも意識して、人気ロボットアニメやその基地をイメージした設備や工場づくりにも着手。また最先端素材と複合鍛造のみで、完成品にまで仕上げる加工レス技術を確立するための検証機械として3次元スキャナーや3次元測定器を導入する等、この2年間で、数え上げれば、きりが無い程の目に見える変化も推進してきた。
「ここ数年のチャレンジと変革により、当社は技術者をはじめ、社員全員に、会社や技術を自分たちでつくっていこうという意識が芽生えました。社員が主役になって働ける企業は強いと私は思います。ですから今後は自分たちのカラーを出していけるし、オリジナリティある技術や製品も次々と生み出せるはずですものね」との山本社長の言葉からは、長年の改善に取り組んだ苦労と、その甲斐あって大きな成果につながったという喜びがあふれる。
「宇宙・航空分野に関する製品開発はもちろん、鍛造だからこういったものができるというモノをつくりたい。そして自社オリジナルの製品も生み出したい」との山本社長の思いを乗せて、同社での全社員が心を一つにしたモノヅクリが、これから新たな分野を切り拓いていく・・・。
取材日:2018年10月3日(水) ライター:北川学(文士舎)
MOBIO担当者より
「できないものを作るのがものづくり」とのコメントで始まったインタビュー。複合鍛造技術を活かし、次世代ニーズ(薄く、軽くしかも強く)へのあくなき挑戦もその一つ。その結果が出せるのは、社長就任後の社風改革により全社の力を結集できているから。「一緒に仕事をしたい会社」と顧客から言われるほど、社外からも注目されている積極的な経営姿勢をお聞きしました。(兒玉)