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MOBIO入居企業・常設展示場出展企業のスペシャルインタビュー

ものづくり中小企業の変革と挑戦を支援しているMOBIOでは、MOBIO 常設展示場出展企業およびインキュベートルームの入居企業の「 変革と挑戦 」について、取り組みのきっかけ(背景)、 具体的な内容などをインタビューしご紹介していきます。ここにはヒントが沢山詰まっているはずです。 じっくりお読みください!
※出展終了およびインキュベートルームから退居した企業の記事は掲載しておりません。

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“遊び心”で未来を切り拓き、他社にない焼結金属を研究・開発

小段金属株式会社 代表取締役 小段 勇 氏

小段金属株式会社
代表取締役 小段 勇 氏

会社名小段金属株式会社
住所大阪府大阪市平野区加美東2-6-6
電話番号06-6791-9023
代表者名代表取締役 小段 勇 氏
設立1980年
事業内容焼結金属フィルター及びサイレンサー他、黄銅鍛造製『ミニチュアバルブ』各種継手、各種金属加工全般、ソーラーパネル用架台及び関連商品、シールテープ製造販売

ブロンズとステンレスしかなかった焼結金属を、多彩な材質で展開することに成功

変革をスタートした翌年に「大阪ものづくり優良企業賞2014 技術力部門賞・知的財産部門賞」受賞

自社製品を手にして、「これ、オモロイでしょう」と目を輝かせるのは、小段金属株式会社の小段豊氏。その隣で二代目である現社長・小段勇氏もまた、豊氏の言葉に同調するように屈託のない笑顔を見せる。
「一生懸命仕事をするのは当たり前。でも限界を超えてその先へ進むには、“遊び心”がないと新しいものは生まれない」。勇氏が語るその言葉どおり、同社では日々同じものを量産するよりも、「こんなものができたらおもしろい」という柔軟な発想を第一に、未来に向け新しいものを作り出す研究・開発に心血を注いでいる。
こうした攻めの姿勢に転じるきっかけとなったのは、1960年に小段金属製作所として創業し50周年を迎えるにあたり、それまで主力としていた「バルブ」「ソーラーパネル用架台」から「焼結金属」を新たな柱に据え、同業他社との差別化を図ろうと舵を切ったことだった。しかし、“第二の創業”に向けて2008年8月に本社工場を新築・移転するも、その矢先の同年10月にリーマンショックが勃発する。しばらくは様子をみていた勇氏だったが、「このままではらちがあかない」と一念発起。2013年から、一気に改革に着手したのである。
その一つが、それまでブロンズ(青銅)とステンレスの2種類だった焼結金属を、他社にはない素材で製品化すること。そのために、売り上げが低迷している時期にもかかわらず、勇氏は新素材開発用の焼結機(電気炉)を導入するという大きなチャレンジに打って出た。結果、他に類を見ない12種類以上の新素材の開発に成功。企業成長に向けた取り組みと努力が認められ、2014年には「ISO9001」を取得するとともに「大阪ものづくり優良企業賞2014 技術力部門賞・知的財産部門賞」を受賞、2015年には日刊工業新聞の一面に取り上げられた。

金属の粒を焼いて接合する焼結金属。独自開発した素材はカタログ掲載の12種からさらに増え、現在20種以上に及ぶ

不可能すら可能にする不屈のチャレンジ精神が実を結んだ

様々な材質、薄型の積層金網まで網羅した同社の焼結金属は、使用用途も多岐に亘る

2019年にはSEM(走査型電子顕微鏡)を備えた研究室も完成

焼結金属の新素材開発を、中心となって進めているのは豊氏だ。焼結金属とは、粒状の金属を溶融点以下の温度まで昇温させて一つの集合体にしたもの。まったく新しい素材で一から作り出そうとすると、まず粒の形状、大きさ、ロット数、価格など、条件に合う材料を入手することから多くの困難があった。いざ材料が手に入っても、焼結のノウハウは素材ごとに異なる。図書館や書店で文献を読みあさってもわからないことも多く、アイデアをひねり出してはトライ&エラーのくり返し。なかには文献に書かれている理論上「不可能」とされる素材をも、研究に研究を重ねて焼結に成功した事例もある。「苦労して開発に成功したときの喜びは、何にも代えがたい」と豊氏。「すごくいい顔で見せにくるんですよ」と勇氏も頼もしそうに目を細める。
さらに、新素材ができると、今度はそれをどうやって売るかという課題にぶつかった。そこで取り組んだのは、ホームページのリニューアルだ。会社案内のほかに焼結金属に特化したサイトを制作し、SEO対策にも力を入れた。すると、大手企業や大学の研究開発部門など、遠方を含む各地から問い合わせがくるようになった。
同社が手がける焼結金属は、粒と粒の隙間を活かした多孔質の焼結体と、金網を重ね合わせて濾過孔を調節する薄型の焼結金網(積層金網)が中心だ。そのため、従来はフィルター・防爆・消音などの目的に使われることが多かった。しかし、材質が増えると用途も幅広くなり、開発者である同社ですら想像していなかったようなニーズも生まれているという。
こうして、変革に取り組んだ2013年から現在まで、新たに増えた取引件数はのべ数百件。材料費がかかるソーラーパネル用架台や機械加工品がメインだった頃は利益率が低かったのに対し、材料費が比較的少ない焼結金属を柱に転換したことで、利益率も順調に伸びている。

わくわく感を大切に、研究・開発をさらに強化したい

「納品した品物はもちろんのこと、私どもの姿勢が評価され、リピートしていただけたときはとても嬉しい」と語る反面、「『こんなことできませんか?』と、新たなチャレンジの機会を与えていただくことも最高の喜び」と勇氏はいう。他で断られた案件も、「小段ならやってくれるんじゃないか」と思ってもらえることが、他社との差別化を図り、新しいことに果敢にチャレンジしてきた同社の強みになっているのだ。実際、「うちではできないから小段さんに相談してみては?」と、同業他社からの紹介で問い合わせがくることもあるという。だからこそ、「こちらから『できない』とは絶対にいわない。どうしても不可能なことがあったとしても、お客様がやりたいことを叶えてあげられる代替案を必ず提案するよう心がけている」と豊氏は語る。
では、チャレンジが無駄になるリスクはないのだろうか。尋ねてみると、「たとえ形にならなくても、その過程で得たアイデアや経験は後々どこかで活きてくる。ニーズがあるかどうかわからず自己満足だけで作ったものでも、不思議なことにいつか必ず売れるときがくるんです」という答えが返ってきた。「それに、機械を使えば誰でも作れるものより、今までなかったものをどうしたらできるだろう?と考えるほうがおもしろい」(豊氏)。「難しい要求ほどやる気が出る」(勇氏)。どうやらこの二人は、どこまでもものづくりが好きなようだ。
そんな小段金属の次なる目標は、自社での研究・開発をさらに発展させるべく、設備を充実させ「焼結研究所」を作ること。「『わが社でできないことは、他社ではできない』といえるくらいになりたい」と勇氏は意気込む。
先代の頃からそうだったというチャレンジ精神を受け継ぎ、新しいものを生み出すことにわくわくしながら取り組む二人の熱き経営者は、既存の枠を飛び越え、その先をめざす未来への気概にあふれていた。

笑顔で夢を語り合う社長の勇氏(左)と技術開発部長の豊氏(右)

MOBIO担当者より

絶え間なく新材質が開発、製品化されるこの業界、同社のチャレンジに終着駅はなさそうですが、お二人の笑顔と“遊び心”があればNo Problem!!
PS.焼結マジックのサンプルはMOBIO常設展示場でいつでも見学できます。(村井)

2020年1月14日(火) ライター:成田知子

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