ものづくり中小企業の変革と挑戦を支援しているMOBIOでは、MOBIO 常設展示場出展企業およびインキュベートルームの入居企業の「 変革と挑戦 」について、取り組みのきっかけ(背景)、 具体的な内容などをインタビューしご紹介していきます。ここにはヒントが沢山詰まっているはずです。 じっくりお読みください!
※出展終了およびインキュベートルームから退居した企業の記事は掲載しておりません。
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「人と違うことをする」精神で
不可能を可能にする塗装専門メーカー
株式会社オークマ工塗 代表取締役 大熊 重之 氏
会社名 | 株式会社オークマ工塗 |
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住所 | 東大阪市布市町3-2-57 |
電話番号 | 072-988-1363 |
企業HP | https://www.okumakot.com/ |
代表者名 | 代表取締役 大熊 重之 氏 |
設立 | 2000年 |
事業内容 | 金属・樹脂ほか多素材の小物部品塗装 |
自動車、家電、機械部品の塗装から軟質素材の雑貨まで対応
社内のショールームにずらりと並ぶ塗装サンプルの数々。そこには各種金属・樹脂に限らず、ゴム・革・ポリエチレン・ソフトビニールといった軟質素材に塗装を施したものまで展示されている。「一般的に塗装屋は、鉄なら鉄、プラスチックならプラスチックと、得意分野に特化して、それ以外の素材は扱わないことが多い。でも当社は、要望があればとにかくチャレンジしてみる。その精神で、これだけいろいろな素材に対応できる技術力を身につけてきました」と、代表取締役の大熊重之氏は語る。
このチャレンジ精神は、塗装業を営んでいた父親から受け継いだもの。「人と違うことをしなさい」という父の言葉が常に頭の中にあり、これまで新しい取り組みをどんどん実践してきた。社内には「チェンジ&チャレンジ」のスローガンが掲げられ、今では企業風土として浸透。社員たちも新たな技術の勉強や、試作品づくりを自主的に行っている。
そんな中から生まれたものの一つが、軟質素材に塗装を密着させる「ワレンコート」という独自技術だ。通常、軟質素材は折り曲げると塗膜が割れたり、すぐに剥がれたりするため、塗装は不可能といわれてきた。しかし、なんとかその問題を解決できないかというニーズがあり、約1年かけて研究・開発を行った結果、どんな軟質素材にも塗膜を密着させることが可能になった。ほかにも様々な塗装にチャレンジし、その事例をショールームやホームページで公開。それを見て「こんなことできませんか?」と問い合わせがくることも増え、そこからまた新たな技術を獲得するという好循環が生まれている。
100%下請けの塗装屋から、発信力・提案力のある塗装屋へ
スプレーガンで手吹き塗装を行う父の姿に憧れて、高校卒業後すぐに父が経営する塗装会社に入社した大熊氏。技術職、営業職を一通り経験し、父の会社は兄に任せて2000年に新会社を設立した。そこからは持ち前のチャレンジ精神で経営手腕を発揮。当時、塗装会社にはまだあまりなかったホームページの作成、ISO9001の認定取得、3S活動などに着手して、顧客の獲得や会社の仕組みづくりを着々と進めていった。
さらに、「塗装屋は材料をお客様から預かる100%下請け業。そこから一歩抜きん出るには、ただ待つだけではなく自分たちで強みとなるものをつくっていかなければ」と、同じ課題を持つ他業種の社長数人と会社をおこし、自分たちで雑貨を製造・販売することにも挑戦した。また、リーマンショック前のどこも忙しかった時代、オークマ工塗では90分以内に塗装を仕上げる「クイックタイムサービス」を実施。これらはいずれも時代の流れとともに自然消滅したが、その時々で多くの学びや成長を得ることができた。
近年はデザイナーとのコラボレーションで誕生した、プレゼントに特化し贈られた人が好みの色を選べる時計や、樹脂に金属塗装の質感を施した器など、自社ブランド製品を販売。さらには工業塗装の枠を超え、建築塗装で古くなった家にリノベーション効果をもたらす新事業を展開するなど、大熊氏のチャレンジはとどまることを知らない。
不良率を低減するクリーンルーム、塗装ロボットもいち早く導入
様々な素材に塗装ができる対応力に加えて、現在、同社の大きな強みとなっているのが不良率の低さだ。不良の原因の多くは、ゴミやホコリが付いてしまうこと。それらは機械加工のように数値で把握することはできないため、塗装は製造工程の中でも品質管理が難しい分野とされている。そこで大熊氏は、ゴミ・ホコリを見える化し、フィルターや粘着ローラー、ファンなどを駆使して対策を講じたクリーンルームをいち早く整備。検査官の教育も徹底し、万全な品質管理体制を確立した。これにより、50%という高い不良率に悩み同社に依頼がきた製品も、不良率3%を実現。多くのクライアントの問題を解決し、高い評価を獲得している。
そしてもう一つ、大熊氏のいち早い着眼によって成果を上げたのが、塗装ロボットの導入である。人の手では難しい複雑形状の塗装も可能になり、職人の負担も大幅に軽減した。作業効率がアップしたことで、利益率も上がったという。
常に先を見据え、人と違うことにチャレンジし続ける大熊氏が次にめざすのは、新たな自社製品の開発。これまでにも他社と組んでいろいろなものづくりに挑戦してきたが、「オークマ工塗の柱となるような製品にはまだ到達できていない」と語る。どんな閃きが生まれるのか、次なる一手が楽しみだ。
2024年9月2日(月)ライター 成田知子
MOBIO担当者より
表面改質・処理方法の一つ「塗装」に関し、お客様からの様々な課題や問題を的確に提案・解決され、現在も継続されている同社。
その課題や問題の中から生まれた塗装技術の研究から試作、さらには改善を積み重ねられた成果として、応接エリアと一体化したショールームと、同社webにあるQ&Aや分かりやすい数々の動画に表れています。自社製品開発や独自サービスの展開へと、夢は多く、その夢を一つ一つクリアすべく、社員と一体となってチャレンジに邁進されている大熊社長から貴重なお話をうかがいました。
MOBIO 村井