MOBIO入居企業・常設展示場出展企業のスペシャルインタビュー

ものづくり中小企業の変革と挑戦を支援しているMOBIOでは、MOBIO 常設展示場出展企業様・インキュベートルームの入居企業様の「 変革と挑戦 」について、取り組みのきっかけ(背景)、 具体的な内容などをインタビューしご紹介していきます。ここにはヒントが沢山詰まっているはずです。 じっくりお読みください!

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環境に優しい「TOM工法」を世界に広めることが使命

布施真空株式会社 代表取締役 矢葺 勉 氏

布施真空株式会社
代表取締役 矢葺 勉 氏

会社名布施真空株式会社
住所大阪府羽曳野市駒ヶ谷2-103
電話番号072-958-1401
代表者名代表取締役 矢葺 勉 氏
設立1956年
事業内容熱成形機製造、成形加工

省スペース、省コスト、省エネルギーを実現する3次元表面加飾技術

大気圧と真空の圧力差を利用して基材にフィルムを貼り付ける

車の加飾もTOMなら簡単。通常の塗装ラインと比べて7〜8割のエネルギー削減になる

大手電機メーカーを定年退職後、2014年に布施真空株式会社の技術顧問として着任、2019年に代表取締役社長に就任した矢葺(やぶき)勉氏。同社が20年前に開発した次世代真空成形機「TOMマシン」のさらなる進化と、それを世界に向け発信するという大いなる使命感のもと、現在まで「変革と挑戦」に取り組み続けている。
布施真空株式会社は、熱成形の加工と成型機の製造というソフトとハードの両面を併せ持つ設備メーカーだ。なかでもTOM工法(Three dimensions Overlay Method)は、あらゆる材質の基材にフィルムを貼り付けることができる同社独自の3次元表面加飾成形技術。そこには従来のような真空孔を必要としない、まったく新しい真空成形法が使われている。
そのしくみとは、真空状態のボックス内で加熱軟化させたフィルムを基材に貼り付け、ボックス上部を大気圧状態、下部を真空状態にすることで、差圧によって圧空成形ができるというもの。自然の原理をうまく利用したこの発想に、長年、技術畑にいた矢葺社長ですら、初めて見たときは「なるほど、こんなやり方があったか」と驚いたと言う。
TOM工法を導入すれば、小物から大型製品、凹凸形状のものまで、あらゆるものの表面加工が一瞬にして行える。職人の技や大がかりな塗装ラインを必要としないため、省スペース、省コスト、省エネルギーが実現できて環境負荷も低減。使用するフィルムによって、ソフト感やしっとり感などの触感をプラスしたり、防水性、耐久性、透過性などの機能を付加することも可能だ。「社会に役立ち、地球環境にも貢献できる、この革新的な技術を世界に広めなければ!」と、矢葺社長の心に強い使命感が芽生えた。しかも、社長の名前は「つとむ」。「TOM(トム)という名称にも親近感を覚え、私がやらなければと思ったんです」と語る。
TOM工法は世界初の真空成形法として特許も取得しているが、「この工法をみなさんに使ってほしい」という思いから、基本原理の部分はオープンにしているのだそう。これも三浦前社長(現会長)および矢葺社長のTOM工法に対する自信と、「社会に貢献したい」という気持ちの表れといえるだろう。

車体ルーフやドアパネルにも対応する世界最大のTOMマシンが完成!

TOM成形による3次元表面加飾は新幹線の内装、エアコンパネル、便フタ、モバイル機器などに幅広く活用されている

2000年に初号機を発売して以来、50cm幅程度のフィルムを使って成形できる機械を中心に、それより大型のものから、A3サイズのフィルムで成形できる超小型用まで、TOMマシンは幅広い展開を行ってきた。これまでに車の内装、壁などの住宅建材、住宅設備や家電、大きいものでは新幹線の内装設備、小さいものでは軽くて通信に影響を与えないことからモバイル機器などに利用されている。
そして2020年、矢葺社長の指揮のもと満を持して登場したのが、世界最大サイズの「ウルトラワイドTOM」。「地球環境も含めた持続可能な世界の実現に向けて我々が何をすべきか考えたとき、この環境にも優しいTOM工法をより大型の物にまで対応できるようにすることが急務」との考えから、前年11月にプロジェクトを立ち上げ、設計をスタートした。技術的な課題をクリアするのに、担当者はかなり苦労したという。そのほか資金繰り、コロナ禍での部品の調達など大変なこともいろいろあったが、すべて乗り越え、約半年で完成にこぎつけた。このマシンを使えば、車体ルーフやドアパネルなどにもTOM成形が行える。
「環境問題に取り組むことは、産業界の責任でもあります。そのために当社のTOMマシンを活用していただき、例えば自動車メーカーさんであれば車の内装だけでなく外装まで、さらには今後ますます増えるであろうエコカーやEV車等にも幅広く使っていただきたい。そして自動車業界に限らず、住宅建材などにも大いに活用していただき、潤いのある生活環境づくりのお役に立てたら嬉しいです」(矢葺社長)。

最新マシン「ウルトラワイドTOM」。最大160cm×240cmのフィルムサイズに対応

TOMの進化は止まらない。社会に貢献すべく世界へ

布施真空の技術を海外にもアピールする英語版のホームページ

近年の布施真空の「変革と挑戦」への取り組みの中で、もう1つ特筆すべきが海外展開だ。電機メーカー時代から諸外国を相手に仕事をしてきた矢葺社長は、TOMマシンの輸出・販売を本格始動した。受け身の営業を脱し、1人でも多くの人に同社の技術を知ってもらうためホームページも強化。現在は車の内装関連を中心に、アメリカ、ヨーロッパ、中国などでのTOMマシン導入を実現している。「海外は特にホームページからの問い合わせが多く、顧客の幅は確実に広がっている。社内ではすでに外国人エンジニアの採用を開始しているが、今後はグローバル体制をよりしっかり整備していくつもりです」と、外国人の採用にも意欲的だ。
そして矢葺社長が社員に対して常に求めているのが、「社員みんなが社長という意識で仕事に取り組んでほしい」ということ。それは「一人ひとりがやりたいことや改善すべき点を自分で考え、取り組んでいけば、会社はどんどん成長するはず」との信念によるものだ。
「TOMマシンもこれで完成というわけではない。大きさや音の問題等、ユーザー目線で見ればまだまだ解決すべき課題は残されています。言い換えれば、さらなる進化が可能だということ。そこに社員一人ひとりが意欲を持って取り組み、よりお客様に喜ばれる製品を世界に発信することで社会貢献できるよう、みんなで会社を盛り立ててほしい」。穏やかな笑顔の奥には、人、社会、そして地球環境への思いやりと責任があふれていた。

MOBIO担当者より

「こんなものがあったのか!」「環境負荷にも貢献できるこの技術。これは世に広めなければ!」。矢葺社長は入社前、同社の技術を知り、そう思われたそうです。ウルトラワイドTOMを半年で完成させるということからも、穏やかな話し方の奥に熱い想いとブルドーザーのような勢いのあるエネルギーを感じました。(MOBIO 奥田)

2020年9月8日(火) ライター:成田知子