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MOBIO入居企業・常設展示場出展企業のスペシャルインタビュー

ものづくり中小企業の変革と挑戦を支援しているMOBIOでは、MOBIO 常設展示場出展企業およびインキュベートルームの入居企業の「 変革と挑戦 」について、取り組みのきっかけ(背景)、 具体的な内容などをインタビューしご紹介していきます。ここにはヒントが沢山詰まっているはずです。 じっくりお読みください!
※出展終了およびインキュベートルームから退居した企業の記事は掲載しておりません。

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素材の表面に様々な効果を付加できる

有限会社進功ブラスト工業所 代表取締役 武島 幸蔵 氏

有限会社進功ブラスト工業所
代表取締役 武島 幸蔵 氏

会社名有限会社進功ブラスト工業所
住所大阪府東大阪市長田西5-3-11
電話番号06-6745-2997
企業HPhttps://shinko-blast.jp/
代表者名代表取締役 武島 幸蔵 氏
設立1980年
事業内容サンドブラスト加工による金属の表面改質、ガラス製研磨台の開発・販売

自社製品を開発して気づいたサンドブラスト加工の奥深さ

対象物を機械に通し、圧縮空気に研削材を混ぜて吹き付けていく

自社製品のガラス製研磨台

サンドブラストとは、金属製品に砂(研削材)を吹き付け表面を加工する技術のこと。吹き付ける研削剤を変える事でデザイン性を高めたり、滑り止めや反射抑制といった様々な効果を付加することができる。
有限会社進功ブラスト工業所は1967年の創業以来、半世紀以上にわたりサンドブラスト加工を手がけてきた表面改質のエキスパート。創業者の武島功氏が社長を務めていた2010年頃までは、デジタル家電の多くが国内で生産されていたこともあり、外観が重視されるデジタルカメラのボディなど、主に装飾目的のブラスト加工を中心に行ってきた。ところが、それらの生産が海外へシフトされるようになると、同社の経営は一気に苦しくなる。
「2013年に代替わりしてからは、いかにブラスト加工および当社の存在を知ってもらえるかに注力し、とにかくがむしゃらでした」と二代目社長・武島幸蔵氏は語る。そして手がけたのが、自社製品であるガラス製研磨台の開発だ。これは、ガラスの表面にサンドブラスト加工を施すことで研磨機能を付加したもの。研磨面の平坦性に優れているため、高精度を求められる半導体断面検査にも対応でき、研磨速度や耐久性も従来品よりまさっている。中小企業庁の「ものづくり補助金」を利用して開発したこの製品は、翌2014年に大阪府の経営革新計画で承認を受け、2019年には特許も取得した。さらに、同社は2015年に大阪ものづくり優良企業賞を受賞。行政からのお墨付きを得て、プロモーションの機会を獲得していったのである。
そしてこのガラス製研磨台の開発は、武島氏自身にも大きな気づきをもたらした。「ブラストは吹き付ける研削材の大きさや形によって仕上がり感がまったく変わる。当社はそれまで装飾用途のブラスト加工が中心でしたが、ガラス製研磨台を作ったことで、材料選びによって様々な用途に応用できるブラストの奥深さを改めて実感しました。と同時に、これができたのは父の代から培ってきた美しい仕上がりを実現する材料管理のノウハウがあってこそ、と痛感したんです」。この気づきが現在の方向性へとつながっていく。

デザイン性・機能性・強度の向上など用途に合わせて最適な加工を提案

今、同社が強みとしているのは、顧客の要望をじっくり聞いて、ブラスト加工のエキスパートとして各用途に最も適した材料を選定し提案すること。
特殊なものでなければ、サンプル試作にも無償で対応。ブラストに不向きなものは正直に伝え、たとえ自社の利益にならなくても他に適した加工法があれば、そちらを提案することもあるという。「親身に対応すれば喜んでもらえるし、後々そのお客さんが別のお客さんを紹介してくれたりすることもあるんです」と武島氏。
デジタル家電を中心にしていたときのように大口の顧客に偏るのではなく、小口の顧客を多数獲得するため、ホームページを開設したり、展示会などにも参加している。最近ではそこで得た人脈が縁となり、有名アパレルブランドのショップで使われる棚板をブラスト加工するという仕事も実現した。
また、「この加工方法を幅広く知って活用してもらいたい」との思いから、MOBIOの常設展示ブースもリニューアル。ブラスト加工を漫画タッチでユニークに紹介していたり、スプーンに施された様々な材料のブラスト加工を実際に触ってみることができるなど、親しみやすくわかりやすい展示が好評を得ている。

ブラスト加工した製品の一例。(左が加工前、右が加工後)
艶消し、滑り止め、強度の向上や放熱効果など様々な機能を付加できる

実際に見て、触れて体感できるMOBIOの常設展示ブース

ムラのない品質と、それを数値化して証明することで信頼を獲得

粒子が均一でムラのない研削剤の品質を、常に保ち続けていることも同社の強みの一つだ。粒子の汚れのメンテナンスや、どのタイミングでどのくらいの量を補充するのか等、ブラストの材料となる研削材をベストな状態に管理することで、一定レベルの美しい仕上がりを維持することができる。
しかも、同社ではブラスト加工した後の表面の粗さを計測し、数値化して提示している。そうすることによって量産品でも全て同じ品質が保たれていることの証明になるほか、表面粗さの違いによる色の変化やひずみなども最低限に抑えることができ、不良が出ることはほとんどないという。それが信頼につながり、「数値で確認できるから安心して任せられる」と顧客からの評価も高い。
2022年には新たに最新鋭の大型ブラスト機械を導入し、要望の多かったサイズの大きい物にも対応できるようになった。また、前処理に威力を発揮する大型三連式超音波洗浄機も導入した事で、今まで時間を要した前処理の洗浄工程もこれにより納期短縮や品質向上につながっている。「今は技術革新によって世の中が大きく変化している時代。我々もブラスト+αの新しい何かを考えていく必要があると感じています」。長年の経験と知識を武器に、武島氏の挑戦はまだまだ続いていく。

MOBIO担当者より

塗装などの次工程へ引き継ぐ前処理だけでなく、最終工程にするなど、その用途は広範囲にわたるブラスト加工方法。無駄な不良品を無くす為の「数値化」や、製品の用途を真摯に考え、他の加工方法を提案するなど、武島社長の信念がお客様の信頼を得ていると感じた取材でした。
MOBIO 村井

2023年5月2日(火) ライター:成田知子

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