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MOBIO入居企業・常設展示場出展企業のスペシャルインタビュー

ものづくり中小企業の変革と挑戦を支援しているMOBIOでは、MOBIO 常設展示場出展企業およびインキュベートルームの入居企業の「 変革と挑戦 」について、取り組みのきっかけ(背景)、 具体的な内容などをインタビューしご紹介していきます。ここにはヒントが沢山詰まっているはずです。 じっくりお読みください!
※出展終了およびインキュベートルームから退居した企業の記事は掲載しておりません。

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ニッチな世界を開拓し、付加価値の高い製品を

株式会社マツシタ 代表取締役 松下 央 氏

株式会社マツシタ
代表取締役 松下 央 氏

会社名株式会社マツシタ
住所大阪府東大阪市川田4-7-47
電話番号072-963-2375
企業HPhttp://www.matusita.co.jp/
代表者名代表取締役 松下 央 氏
設立1973 年
事業内容線材曲げ加工、金属ハンガー・店舗用ディスプレイ関連商品の製造

ハンガーの大量生産から、小ロットの小物まで

先代が脱サラして開業したという株式会社マツシタ。当初は先代の友人が経営していた工場の協力工場として、木製ハンガーのフック部分だけを製造していたそう。そうしたなかで次第にハンガー自体を作る線曲げ加工の技術を磨いていった。松下氏が入社した頃の主な取引先は、全国展開する大手スーパーマーケットチェーン数社。「衣料コーナー用ハンガーの製造と、その延長で商品陳列用のラックに掛けるフックも納めていました。
全製造アイテムの9割をハンガーが占め、それだけで食べていけた時代でしたね」。2012年、現社長に就任した頃には、ハンガー以外の受注も増えていったという。「展示会に出展したのをきっかけに、線材曲げ加工の技術を利用してこういうモノが作れないかとお引き合いもあって、チャレンジする機会に恵まれました」。その頃は主力だったハンガーが安価な海外製品に押され始めてきていた時期。アパレルショップのディスプレイ用やインテリアとして飾られる小物など、持ち込まれる多様な要望に応じることで今までにない新しい販路を拓くチャンスでもあった。従来のハンガーのような大量生産だけでなく、小ロットのものまで幅広く対応した。
また、新たな要望に応じるため線材だけに限らず鉄板、木材、ガラスなど異素材を織り交ぜた加工にも視野を広げた。「社内ではできない加工は、協力会社にお願いしています。材料と金型を支給して加工を依頼する。一部ブローカーのような役割も担いながらという感じです。自社だけではできないことでも、協力会社の力を借りることで付加価値を上乗せすることができます」。協力会社が増え、加工範囲も増え、さらに多くの依頼が舞い込むようになった。

トップス、ボトムス、マフラー、ストッキングといった衣料用ハンガーの製造がメイン。素材、カラー、形状を自在に組み合わせ、オリジナルのハンガーを生み出している。

アパレルショップの商品ディスプレイやインテリア用に多様なオーダーを受けてきたことから、ハンガー以外の線材加工にも精通している。

機械台数の多さが受注量や短納期対応を可能にし、差別化となる

東大阪市川田に工場を、すぐ近くの今米には物流センターを構えるマツシタ。

複数台の機械を抱えることで、発注に応じた線径品をすぐに加工できる態勢を整えている。

線材加工はどの工場でもほとんど同じ加工機を使用しているため、技術的な差別化が難しい。しかしマツシタには独自意匠対応の"ハンガー製作機”を自社開発するなど、独自の優位性がある。また線材を立体的に加工する3Dベンダーをいち早く2台導入、通常のベンダーは5台、プログラムで加工を制御するNC線材曲げ加工機も導入している。
機械の台数は手数の多さだけでなく、短納期の対応も可能にする。線材を加工する際、ロール状にまとめられた線材を一旦真っ直ぐにするため、ベンダーにはたくさんのローラーが組み込まれている。線材の径によってローラーのサイズを変えなければならないため、1台しかベンダーがなければ、径に合わせてローラーを設置し直す作業だけで何時間もかかってしまう。しかしマツシタでは5台のベンダーそれぞれに異なる径のローラーを組み込んでいるため、すぐに加工に取りかかることができる。もちろん受注が重なっていても対応できる幅が広がるメリットもある。こうした対応力が、同業他社との差別化のポイントとなっている。

ニッチで高単価な分野の需要を捉える

ハンガーとそれ以外の製品アイテムの割合は時代と共にどんどん変化していった。様々なジャンルの小物の製造が増えるなかで、松下氏はニッチな分野からのオーダーに注目し始める。「自動車のカスタムパーツを取り付けるための部品の加工を受けたところ、予想以上に繰り返しの注文をいただいた。趣味に傾倒する人がそこにかける情熱の大きさに気づかされました。また父の代からお付き合いのある、フィギュアを立ててディスプレイするためのスタンドは、未だに数ヶ月に1度の周期で受注があります。このような趣味の世界に特化した製品開発にも力を注ぎたいと考えているところです」。
コロナ禍でアウトドアブームが再来した際は、キャンプギアに関連する受注が数多く寄せられた。そこから自社でも何か販売できないかと、蚊取り線香ホルダーやランタンスタンドなどを試作してみた。最近では往年の人気モデルの復刻など、スニーカーに新たなムーブメントがあることに着目し、靴を掛けてディスプレイできるシューズラックの開発をめざしている。「スニーカーを履かずに飾っておきたいという人もいるみたいですね。万人受けするよりも、そうしたニッチなところを攻める方が付加価値を付けやすいのではないでしょうか」。
どういった分野にどういったニーズがあるのか。そのリサーチを兼ねてネット通販に出店し、デッドストック品を主体とした販売を開始。方向性が決まれば今までの製品をアレンジして売り出す予定だ。またインスタグラムを開設し、製品やサンプルの写真を毎日アップしているという。数は少ないがインスタグラムから受注につながったこともあり、時代の潮流に適った取り組みが功を奏し始めている。
これらのアイデアや取り組みを発展させるため、松下氏は新たな人材を求めている。「もっと若い人の感覚を取り入れて、今の取り組みを次のステップに押し上げなければなりません。みんなで1つの方向をめざして、チャレンジしていきたいですね」と語る。線材加工は素材がシンプルなだけに、様々な製品に応用・展開しやすい。また協力会社の力を借りれば、可能性はさらに大きく広がるはず。マツシタの技術とアイデアを活かせば、新たなニッチ市場を探し当てられるだろう。

ハンガー、フックのほか、アクセサリースタンド、ポップスタンドを利用した飛沫防止シールドなど、マツシタが制作してきた製品を販売するネット通販のサイト。ブーツスタンドなどもラインナップし、新たなニーズを探る試金石の意味合いも兼ねている。

MOBIO担当者より

金属の線材を平面から立体曲げ加工まで、長年の技術ノウハウと加工設備で意志を持たない素材に命を吹き込まれるように造形されている同社。
ニーズの多様化が進み、加えてコロナ禍で社会生活が一変し、個人の意識も変革してきた状況下、若い人の新たな発想力の活用とネットという手法を組み合わせ、この「造形美術品」のような線材曲げ加工品が、様々な分野で活躍をする場を拡げたいと熱く語っていただきました。
(MOBIO村井)

2022年6月21日(火) ライター:東原 雄亮

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