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MOBIO入居企業・常設展示場出展企業のスペシャルインタビュー

ものづくり中小企業の変革と挑戦を支援しているMOBIOでは、MOBIO 常設展示場出展企業およびインキュベートルームの入居企業の「 変革と挑戦 」について、取り組みのきっかけ(背景)、 具体的な内容などをインタビューしご紹介していきます。ここにはヒントが沢山詰まっているはずです。 じっくりお読みください!
※出展終了およびインキュベートルームから退居した企業の記事は掲載しておりません。

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スーパーエンプラ成形で、地域に根ざした“グッドカンパニー”へ

株式会社ダイプラ 代表取締役会長 大東 章男氏

株式会社ダイプラ
代表取締役会長 大東 章男氏

会社名株式会社ダイプラ
住所大阪府大阪市東成区神路2-2-7
電話番号06-6977-5735
代表者名代表取締役会長 大東 章男氏
設立1989年
事業内容超エンプラ射出成形品、インサート成形品、精密射出成形品

スーパーエンプラ、精密射出成形に自信あり

左:肉厚0.48mmの成形を実現した無給油チェーン用ローラーのスリーブ(素材はスーパーエンプラのPEEK)
右:樹脂と金属を組み合わせたインサート成形部品

インジェクション成形機

2018年で創業60周年を迎えた株式会社ダイプラ。同社は、約30年前、当時まだ珍しく成形加工技術が未知とされていた、スーパーエンプラ(スーパーエンジニアリングプラスチック)に挑戦した。あるチェーンメーカーから、スーパーエンプラでの部品加工の依頼を受けた事がきっかけとなる。「金属のチェーンは、摺動性を維持するために給油が必要ですが、スーパーエンプラは素材そのものに摺動性があるため、給油が不要なんです。『できました。』とチェーンメーカーに製品を持っていった時は、『えっ?』と驚かれました。まさか、出来ると思われていなかったんですね」と会長の大東氏は笑いながら語ってくれた。
このスーパーエンプラがさらなる注目を浴び、需要が増えてくるのは約18年前。液晶パネルの搬送部品、半導体製造装置部品等のニーズが広がってきた頃である。射出成形の中でも、もっとも困難とされているスーパーエンプラ素材と、金属などの異素材を組み合わせた、複雑・精密なインサート成形にも対応できるようになったのは同社の強み。未知なる素材へ挑戦してきたからこそである。
設備面では、国産の成形機に加え、1989年から高性能なドイツ製のインジェクション成形機を次々と導入。この成形機は縦型にも横型にもなる画期的なものである。同社が薄肉・厚肉の自動成形や精密なインサート成形加工を可能としている要因の一つだ。

ビッグカンパニーよりも、グッドカンパニーを目指して

入社一年目以降はプロの似顔絵イラストによる紹介カードを掲示

入社半年で有給取得して、海外旅行をしてきたと笑う若手社員。

約10年前、上場企業と様々な業務連携を実践したが、リーマン・ショック後の影響は大きく、経営状態が厳しい時期が続いた。そんな時期にダイプラを立て直すべく会長の大東氏は、業務連携中に上場企業から学んだ大企業の組織運営を基に、詳細に亘る5カ年計画を策定し、大企業並の財務管理を行った。最初の2期は計画どおりとはいえ、財務状況は大赤字となる。設備面のメンテナンス、環境整備から人的な面での改革も行った。
部署ごとにグループを作り、それぞれの所属先をはっきりさせる組織運営で、従業員の意識向上をはかっていった。
この計画にあたり、会長の大東氏が一番大事にしたことは「経営者としてフラットな状態で、今後何を一番に思ってやるんだ、利益は何に還元していくんだと考え、『社員の休みを増やしていく、残業をなくす、有給休暇取得率をあげる。このことに利益を使おう』と、決断したんです」。これらを実現していくために算出した加工チャージは、従前の3〜4倍程度。これを見込んだ見積もり提示が必要だ。「営業は、『それでは仕事は一つも取れません。無理ですよ。』と言ってきました。だからといって、提示より安いチャージだと赤字になる。『取られへんでもええ、仕方ない』自社の技術や目的が正しいと信じて押し通しました」。そう腹をくくったものの、やはりしばらく受注が全くない状態が続いた。しかし、結果が出始めたのだった。あちこちに見積もり依頼してみても、そのような加工は出来ないと断られ、他社に比べてコスト高だが、結局希望どおりの製品を仕上げてくれるのは、ダイプラしかないと、理解してもらえるようになってきたのだ。また、低単価なままであった昔からの得意先にも、取引停止を覚悟で単価アップを要請した。真摯に説明し交渉したことから、すべて受け入れてもらえることになった。「良い会社かどうかというのは、技術だけで判断できるものではない。有給取得日数、残業時間、この2点を聞けばわかる」。
以前、会長がドイツの町工場を視察した際「大都会の大企業に勤めなくても、地元の町工場で同じ待遇で同じ給料がもらえる。」そんな声を耳にした。そのことに感銘を受けた会長は、単に休暇を増やすだけでなく、若手社員に海外の技術を目の当りにすることで、新しいことへ挑戦する精神を活かしてほしいと、ドイツに視察へ送り出している。町工場にしては、珍しがられるような取り組みではあるが、そういった機会を与えることで、働きがいも感じてもらえるようにとの会長の思いは、若い世代へ受け継がれている。
同社は年間休日129日、残業ゼロ。昨今の人材確保の困難な状況にもかかわらず、2名の人材募集に対し150名もの応募があった。現在18名の従業員すべて正規雇用である。これら施作の効果は着実に出ており、今期の売上、利益とも順調な見込みとなった。「今後も、他の製造業の町工場にも意識を変革してもらえるような、リーディングカンパニーとして頑張っていきたい。大企業もおちおちしていられないほど、小規模でも『よい会社=グッドカンパニー』にしていきたい。」これが会長の思いである。

「多品種少量生産」から「少品種多量生産・高付 加価値」へ

大東会長は「さらなる経営面での安定を目指して、取り扱う製品の種類を減らし、「多品種少量生産」から「少品種多量生産」へとシフトしていきたい。得意とするスーパーエンプラの高度な技術と、高度な管理を進め「高付加価値」な製品を作っていく。製造コストにも納得してもらえる品質とサービスで、ダイプラにしか作れないものを作っていきたい。」「また、有給取得日数は多いが、その分工夫して集中して作業する。顧客からの受注実績を基に将来の受注も予測してスケジュールを組み、計画生産することで機械の稼働率は80%を維持しており、納期面でも顧客のニーズにうまく対応できている。」と語った。
時代に先駆けて先進素材加工に挑戦、自社開発の製品製造。未知へのチャレンジ精神に加えて、人を大切にすることを第一としていくことを目標にかかげた株式会社ダイプラ。10年後に自社工場所有を目標に思想、意識、実態、すべて名実ともに『グッドカンパニー』となることを目指して、ダイプラの改革は続く。

MOBIO担当者より

2階事務所に上がる階段の“けこみ板”に書かれた同社の理念、強みのパネルは、全社員だけでなく、顧客のハートも熱くさせる。先代の父と社員、そして技術の蓄積によって今の会社があり、今後更に地域に根ざした愛され、尊敬される企業「グッドカンパニー」を目指していると熱く語られた大東会長でした。(村井)

取材日:2019年1月9日(水) ライター:ちばあやの

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