ものづくり中小企業の変革と挑戦を支援しているMOBIOでは、MOBIO 常設展示場出展企業およびインキュベートルームの入居企業の「 変革と挑戦 」について、取り組みのきっかけ(背景)、 具体的な内容などをインタビューしご紹介していきます。ここにはヒントが沢山詰まっているはずです。 じっくりお読みください!
※出展終了およびインキュベートルームから退居した企業の記事は掲載しておりません。
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航空機部品の厳しい規格をクリアした
熱処理加工のスペシャリスト
有限会社ファインテック 専務取締役 川端 健一 氏
会社名 | 有限会社ファインテック |
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住所 | 東大阪市加納5-1-8 |
電話番号 | 072-814-7000 |
企業HP | http://finetech-jp.com/ |
代表者名 | 専務取締役 川端 健一 氏 |
設立 | 1986年 |
事業内容 | 金属熱処理加工(真空熱処理、無酸化処理ほか) |
金型一つひとつに最適な熱処理加工を行うノウハウを蓄積
金属部品に硬さや強度を持たせるために行う熱処理加工。なかでも何十万回ものプレスに耐えなければならない金型に対しては、硬い素材を1000度以上の高温で加熱処理するため、酸化して表面が変化しないよう真空熱処理加工という方法がとられる。有限会社ファインテックは創業以来、金型に特化し、真空熱処理加工のスペシャリストとして実績を積んできた。「金型はほとんどが一点もの。その一つひとつに最適な熱処理を行うノウハウこそ、約40年にわたって培ってきた我々の技術力です」と専務取締役の川端健一氏は胸を張る。
金型の大きさ、形状、素材によって、熱処理に必要な温度や時間は異なる。大きさや形ができるだけ変わらないように処理するには、炉に入れるときの向き、温度の上げ方なども一点一点工夫しなくてはならない。「これらは教科書では学べない。現場での経験があってこそなんです」。その貴重な実績を同社では手順書に記録し、職人それぞれが工夫しているテクニックなども共有しながらノウハウの蓄積・継承に努めている。
産学連携による研究開発で表面処理でも信頼を獲得
2002年から二代目として創業者の父より事業を引き継いでいる川端氏は、これまでのノウハウを活かして新たなチャレンジにも意欲的に取り組んでいる。
一つは表面処理加工を行う関連会社を立ち上げたことだ。主軸となる「ファインコーティング」は、鉄の上にセラミックのコーティングを施すことで、軽量かつ高い耐久性・耐摩耗性を実現するもの。縁あって習得した技術と社内の設備を活用して開発したこの超硬質セラミック被膜を武器に、株式会社ケンテックを創業した。
しかし、技術と設備があっても、仕事を得るのは簡単ではなかった。「一点ものの金型は失敗が許されない。実績やエビデンスがないと、なかなか信用して仕事を任せてはもらえないんです」(川端氏)。
そこで、大学に共同研究を依頼。産学連携で技術的データや分析値、電子顕微鏡の写真などからエビデンスを構築するとともに、展示会にも積極的に出展して販路を開拓していった。より薄い被膜で高い密着性と耐久性を実現した「ファインコーティング ナノ」では特許も取得。同社の新たな取り組みは、約5年かけて日の目を見ることができた。今では加工メーカーと組んでファインコーティングで耐久性を向上させたプレスカッターやローラー、また金型部品など、各種機械部品の製作も受託している。
難しいといわれる航空機分野に参入。熱処理加工で大空へ!
もう一つのチャレンジは、航空機部品の熱処理加工への参入だ。同じ熱処理加工でも航空機部品は飛行機の安全、ひいては人命に直結するため、熱処理を行う温度や時間はもちろん、設備の精度や管理に関しても厳しい規格をクリアしなくてはいけない。「難しい分野ではあるけど、熱処理を行うところがなくて困っているという話を聞き、これはチャンスだと思った」と参入を決意した。
補助金を使って最新鋭の設備を導入し、さまざまな規定をクリアして航空機部品メーカー2社から認定をもらった。新型コロナウイルスのパンデミックが起き仕事の中断もあったが、取り組んできたことは無駄にはならなかった。「新設備は航空機部品専用というわけではなく、今までやってきた熱処理にも使えるものです。しかもこの機械を入れたことで、高度な技術を要する半導体部品の熱処理加工など今までになかった仕事も入ってくるようになり、我々の仕事の発展につながりました」と川端氏はいう。航空機分野にチャレンジしたことにより、ファインテックは熱処理加工業者の中でも一目置かれる存在となりつつあるのだ。それによってスタッフの士気も確実に上がってきている。
「今年に入ってようやく航空機部品の仕事も動き始めました。いよいよここからがスタートです!」と意気込む川端氏。今後は実績を増やして営業活動に力を入れ、航空機部門を柱の一つとして育てていきたい考えだ。
さらに、「これからはロウ付けにも取り組んでいきたい」と語る。ロウ付けは熱処理加工の前工程や航空機部品にも使われる技術なので、それができる体制が整えば仕事の幅はさらに広がる。同時に、他業界へのアプローチも可能になるだろう。
熱処理加工のスペシャリストとしてのベースを守りながら、その技術を活かして新たな道を切り拓いていく川端氏の姿勢には、事業を継承し進化させていくための知恵が詰まっている。
2024年5月13日(月) ライター:成田知子
MOBIO担当者より
プレス金型の焼き入れ事業に加えて、従来は大企業しかできなかった航空機部品の熱処理に挑戦。
高精度処理、高度工程管理を実現した背景には「夢は大空へ・・・」との強い思いがあるという。
今や、関西では稀という中小企業による高度熱処理技術、高性能設備により、歪みの少ない、
光輝性ある部品を加工する企業としての地位を確立。
その高精度技を活かせる市場はさらに拡大し、半導体など新規分野への挑戦が続いていました。
MOBIO 兒玉