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MOBIO入居企業・常設展示場出展企業のスペシャルインタビュー

ものづくり中小企業の変革と挑戦を支援しているMOBIOでは、MOBIO 常設展示場出展企業およびインキュベートルームの入居企業の「 変革と挑戦 」について、取り組みのきっかけ(背景)、 具体的な内容などをインタビューしご紹介していきます。ここにはヒントが沢山詰まっているはずです。 じっくりお読みください!
※出展終了およびインキュベートルームから退居した企業の記事は掲載しておりません。

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世界が驚く新製品を次々生み出すイノベーション精神

株式会社丸ヱム製作所 代表取締役社長 松元 收 氏

株式会社丸ヱム製作所
代表取締役社長 松元 收 氏

会社名株式会社丸ヱム製作所
住所〒574-0015 大阪府大東市野崎4-7-12
電話番号072-863-0100
代表者名代表取締役社長 松元 收 氏
設立1951年(昭和26年)/創業 1927年(昭和2年)
事業内容ステンレス鋼製ねじ製品
エンジニアリングプラスチックねじ・締結部品
パーツホーマー
プレス部品

30年周期で「イノベーション」に取り組むチャレンジ精神

全国有数の“ねじ産地”である大阪を代表する丸ヱム製作所は、ステンレス製ねじで国内トップクラスのシェアを誇っている。代表取締役社長の松元氏は、「弊社の歴史は挑戦と変革の繰り返し。創業以来ほぼ30年周期で、会社の進む方向を大きく“革新(イノベーション)”する商品開発を行なってきました」と語る。

第1の革新は昭和2年、創業者の田島留吉氏が「これからは工業製品の時代」と予見し、それまで営んでいた漆器卸売業に見切りをつけ、荷車の車輪を固定する「割りピン」の製造・販売業へと転身したことに始まる。これが大いにあたり、ねじ製造業者としての礎を築くことになった。

第2の革新は30年後の昭和32年、2代目経営者の田島喜代次氏が、日本で初めてステンレス製ねじの量産に成功したことだ。北陸の温泉場でサビついたねじを目にした同氏は、「サビないねじをつくれば売れるのでは!」とひらめき、2年の研究開発の末、見事量産に成功した。

「開発に2年もかかったのは、当時の日本に、小ねじのサイズに見合うステンレス鋼の線材がなかったからです。棒材を細く加工できる業者を探し歩き、やっとのことで東大阪の伸線業者を見つけ、共同で開発を取り組んだそうです。そんな時代ですから、完成したステンレスねじは瞬く間に市場を席捲し、つくれば売れる“プロダクトアウト”の時代を弊社にもたらしてくれました」

これまでにない“新素材ねじ”を次々と開発

金属ガラスねじ

マグネシウム合金ねじ

高度経済成長期に入ると、同社のステンレスねじは、住宅のアルミサッシ締結用ねじとして爆発的に売れ、1980年代まで製造品のほぼ9割が住宅建材向けに販売された。ところが、バブル経済の崩壊とともに住宅市場は一気にしぼみ、経営方針の転換を余儀なくされる。そこで同社がとった戦略が、市場ニーズから製品開発を行い顧客へと提案する“マーケットイン”型の企業へとシフトする道であった。そのために理系大学から優秀な人材を積極的に採用し、既成概念にとらわれない発想で、商品開発に取り組んでいった。

ステンレスねじ量産から30年後の昭和62年、高強度プラスチックねじの開発に成功し、同社に第3の革新が訪れる。この成功は、“新素材ねじ”の開発という同社が進むべき方向性を示すと同時に、1990年代以降、同社の商品開発をますます加速化させる契機となる。

パーフェクトステンレスやマリンステンレスなど、同社にしか製造できない付加価値の高いオリジナルねじが次々に誕生。「より強く、より軽く」をテーマに新素材への挑戦も続け、チタンやマグネシウムといった加工が難しい合金類のねじ開発にも成功した。特に、平成15年に世界で初めて量産に成功したマグネシウム合金ねじは、宇宙開発用ねじの製造依頼なども舞い込むほどであり、英語版Webサイトを通じて海外からの注目も高まっている。

「マグネシウム合金ねじは高温でないと加工できないので、専用の製造設備を自社開発しました。うちのノウハウが凝縮されたねじです。工業用金属では最も軽い合金ねじなので、乗り物やロボットといった新たな市場が開拓できると期待しています」

ねじ製造業の範疇を超えた新素材製品のインキュベーション拠点

歯列矯正ワイヤ

▲11月に竣工したテクノロジーセンター(左棟)と大東本社ビル

積極的な商品開発に取り組んできた結果、かつて売上の9割を占めていた住宅建材市場は4割程度になり、代わって環境・産業機器、船舶、家電・電子、太陽光発電、自動車、医療・福祉といった新たな市場が増加を続けている。

とりわけ現在、市場開拓に力を入れているのが医療分野である。製品第1号となったのはゴムメタル製の「歯列矯正ワイヤ」だ。ゴムメタルとはチタンの新合金で、柔らかく、しなやかでありながら高強度で腰が強いという特性を持っている。これまで一般的だったNi-Ti(ニッケルチタン)製ワイヤ中心の治療に比べ、治療期間が半分程度に短縮でき、しかもNi(ニッケル)を含まないのでアレルギーで困ることもない。まさに歯列矯正治療をイノベーションする、画期的な商品である。

「一般的なねじ製造業者は、金型や線材加工を外注しますが、うちは全て内製できる多能工集団と設備を持っています。このゴムメタルも、線材をつくるために蓄積してきた弊社独自の伸線技術だから加工ができました。この伸線技術を聞きつけた、ゴムメタルワイヤの提唱者である大学教授が、うちに製造を依頼してきたのが製品開発のきっかけです」

ねじ製造のノウハウ、経験、周辺技術といった“総合力”で、世界を驚かせる製品を次々に市場に送り出している同社だが、実は業界が注目するすごい新製品がもうひとつある。それが「金属ガラスねじ」である。

金属ガラスは、1990年に東北大学金属材料研究所が発見した、結晶構造を持たないガラス状のアモルファス金属材料で、高機能、高精度、省エネ加工が可能と、21世紀の中核を担う究極の金属として期待されている。東北大学金属材料研究所の産学連携事業に参加した同社は、平成21年についに世界で初めて金属ガラスねじの開発に成功。業界団体である日本ねじ工業協会も、この快挙を評価し、「これまでにないゆるみ難いねじが開発できる」と期待を寄せている。

同社では今年11月、医療分野の商品開発を加速させるため、研究開発拠点「M+Hテクノロジーセンター(3階建て・延べ床面積1,193㎡)」を大東本社敷地内に竣工させた。産官学とのコラボレーションにも積極的に参画し、市場ニーズを先取りした製品を開発していく考えだ。

今や同社の活躍は、ねじ製造業の範疇を超えて、ハイテク素材製品を市場に送り出すインキュベーション(孵化器)センターの領域へと踏み込みつつある。オープンしたての研究開発拠点から、次はどんなイノベーションが飛び出すのか、わくわくさせる潜在能力を秘めた伸び盛りの企業である。

MOBIO担当者より

海水にも雨水にもサビないねじの創造に、新テクノロジーセンターも建設しあくなき挑戦。マグネシウムねじの量産は世界初、日本機械学会・技術賞の金属ガラスねじなど新製品が続々。会社のロゴがブルドッグ。松元社長のブルドッグ・イノベーション探究は続きます。(兒玉)

取材日:2013年11月19日(火) ライター:三浪伸夫

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