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MOBIO入居企業・常設展示場出展企業のスペシャルインタビュー

ものづくり中小企業の変革と挑戦を支援しているMOBIOでは、MOBIO 常設展示場出展企業およびインキュベートルームの入居企業の「 変革と挑戦 」について、取り組みのきっかけ(背景)、 具体的な内容などをインタビューしご紹介していきます。ここにはヒントが沢山詰まっているはずです。 じっくりお読みください!
※出展終了およびインキュベートルームから退居した企業の記事は掲載しておりません。

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信念は「常に前進」。計測機器で暮らしを支える縁の下の力持ち。

兵田計器工業株式会社 代表取締役社長 兵田 善男 氏

兵田計器工業株式会社
代表取締役社長 兵田 善男 氏

会社名兵田計器工業株式会社
住所〒579-8034 大阪府東大阪市出雲井本町1-6
電話番号072-982-1121
代表者名代表取締役社長 兵田 善男 氏
設立1953年(昭和28年)
事業内容ダイヤル金属製温度計、変圧器用保護機器、圧力計、
各種計測機器開発製造

新幹線開通時から、車両の安全を見守り続ける

温度、圧力、レベル、流れおよびガス密度に係る工業用ダイヤル温度計・変圧器用保護機器

現代社会に生きる私たちの生活基盤となっている電気やガス、交通、エネルギー。いわゆるインフラ関係の現場で、その技術を支えるのが、兵田計器株式会社の計測機器だ。日本をはじめ世界各国における、発電所や変電所などの重電機関連、ビルや商業施設などの建築関連、鉄道車両などの輸送関連、その他、原子力、船舶、化学プラント等の重工業関連、繊維・染色・食品の軽工業関連など、あらゆる分野で兵田計器の計測機器は休むことなく計測しつづける。そして万一、異常な数値を計測した場合には、直ちに知らせ、また装置を駆動して危機状況を阻止する働きをする。

創業は1917年(大正6年)。現在の代表取締役・兵田善男氏の父が船舶関連の計器修理業を始めたことがきっかけだ。まもなく計器製造に着手し、戦後の高度経済成長期には、日本の産業発展を支えながら事業は急成長した。1953年に法人化。100年以上にわたり、温度、圧力、レベル、流れおよびガス密度に係る計測制御関連機器の開発・製造に取り組んできた老舗企業だ。
「私たちの製品は決して目立つものではありません。しかし、人々の生活や産業の基盤となる場所において、安全を守るという大切な役割を担っています。万一、製品に不備があると、大事故につながる可能性があるという、責任と自負があります。設置される場所は製品によって異なり、高温地・寒冷地である場合や、衝撃や振動が加わるような場所もあります。しかしどんな過酷な環境においても、それに影響されずに働き続ける耐久性と堅牢性、計測の正確さが求められるのです」。

1964年、東京−大阪間に開通した“夢の超特急”東海道新幹線にも、兵田計器の油圧センサーが採用された。当時の世界最高210kmの最高速度で走った新幹線は、日本が技術力において自信を取り戻したきっかけであり、国民の希望の象徴でもあったという。
「本当にうれしかったですね。当時、東京−大阪間を4時間で結んだ東海道新幹線は“国産技術の結晶”と言われ、そこに参画することは技術者の夢でした。その後、新幹線はどんどん改良され、高速化されましたが、兵田計器の製品は使われ続け、現在走行しているN700系の車両にも、私たちの製品が使われ、安全を監視し続けています。明治時代にイギリスから取り入れられた鉄道の技術は、およそ150年経って、日本から高速鉄道技術を輸出する時代になりました。私たちの製品が信頼いただき、そこに参画していることを誇らしく思っています」。

知識と技術を身につけた社員の雇用が、会社を強くする

新幹線の車両に取り付けられている車両用変圧器・保護機器。車両の振動に耐えながら正確に計測を続けている。

物心ついた子どもの頃から、工場は身近な場所だったという兵田社長。父に見込まれ、若いうちから職人として工場でものづくりに携わった。それゆえ職人気質の兵田社長は、現在でも徹底した現場主義。毎日自ら工場へ赴き、職人や技術者と会話を交わし、工場の様子や製品に目を通す。社員の一人は社長について、このように話す。「社長が『製品が私を呼んでいる』と、製造現場にやってくることがあります。社長が点検されると、必ず何らかの修正すべき点が見つかるんです」。数ある製品の一つひとつ、社員一人ひとりに心を配る兵田社長ゆえのエピソードだ。そんな兵田社長が「若い頃に一つやり残したこと」と語るのが“大学で学ぶ”ことだったという。

「父が私を見込んで、若いうちから職人にしてくれたことには感謝しています。けれど、20代の頃に大学で学んでみたいという気持ちも強くありました。学問で得た知識や技術は、人を豊かにし、人に力を与えるものですから。けれど、自分は大学で4年間学ぶことができなかった。だからこそ、父からこの会社を受け継ぐ際、学問によって知識や技術を身につけた人材を雇用しようと考えました。優秀な人材を雇用することで組織力を作り、さらに技術力を高めることで会社を強くする。そう考えた私は、国公立大学を中心に研究室などを訪れ、就職活動をしている学生を紹介していただくよう先生方にお願いして回りました。その決断が会社の一つの変革と言えるのではないでしょうか」。

努力が実り、少しずつ希望する人材が集まってきたという兵田社長。1990年代からは、府内の中小企業に先駆けて、社内にパソコン設備を導入。各地の営業所をLANでネットワーク化するなど、当時の最新の情報通信技術を先駆的に取り入れた。製品は必要に応じてアナログ機能も残しつつ、一方で半導体を採用して性能の高度化に挑戦。兵田計器の製品を支える技術へと成長した。近年では、集中管理システムに現場型とデータの遠隔発信機能を併せ持つハイブリット式計器を開発。顧客からも好評だという。

「技術や知識を持った人材を積極的に採用したことで、可能性が大きく広がりました。その社員たちは入社から30年以上たった現在、会社を支える人材へと育ち、開発した技術は製品に生かされ、兵田計器を支えているのです」。

常に前進すること。その心意気が会社を守り、成長させる

大阪モノレールの車両には、各タイヤに兵田計器の製品が取り付けられ、空気圧を見守っている。

顧客のため、そして社員とその家族のため、無我夢中で会社を支えてきたと語る兵田社長。80歳を過ぎた現在でも、決して揺らぐことのない信念がある。
「常に前向きであること。そこに年齢は関係ないと思っています。反省すべき点は反省し、そしてまた前進を続ける。その信念が、会社を守り育ててきた原動力。そして長年培った技術蓄積は、会社の誇り。今後も国内を始め、世界ブランド品質で大きく貢献できるよう、理想と努力で邁進したいと考えています」。

戦後まもない1950年代から海外にも市場を求め、各国に顧客を広げてきた兵田社長。その技術は世界で認められ、現在、ベトナム、タイ、中国、台湾、韓国などのアジア諸国、またアメリカやフランスなどの欧米諸国の各分野において、休むことなく計測を続け、暮らしの安全を守っている。兵田社長は各国の現場へ赴き、製品が働く様子をチェックし、顧客と交流し、要望を聞く。そのために必要な語学習得への努力は、現在も欠かすことがないという。「社長の人柄に惚れ込んで入社した社員も少なくない」と語る社員の言葉にも納得。これからも顧客から求められる製品を日本から世界へと広げ、さらに地球環境保護の面でも貢献できる企業でありたいと語る社長。兵田計器の製品は、私たちの暮らしを陰で支えてくれる縁の下の力持ちでありつづけることだろう。

MOBIO担当者より

たとえ何十年に1回でも確実に動く信頼性第一の保護機器づくり。その信頼度は測定器でも同じ。それだけに取り付けられた自社製品に何ら不備はなかったのに埋められたという中国の新幹線のニュースを見て涙した兵田社長。社員の皆さんに愛される人間味に溢れた姿を垣間見ました。(兒玉)

取材日:2017年9月14日(木) ライター:岩村彩((株)ランデザイン)

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