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MOBIO入居企業・常設展示場出展企業のスペシャルインタビュー

ものづくり中小企業の変革と挑戦を支援しているMOBIOでは、MOBIO 常設展示場出展企業様・インキュベートルームの入居企業様の「 変革と挑戦 」について、取り組みのきっかけ(背景)、 具体的な内容などをインタビューしご紹介していきます。ここにはヒントが沢山詰まっているはずです。 じっくりお読みください!

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製造業からサービス業へ、業態変革に挑戦!

山陽製紙株式会社 代表取締役 原田 六次郎 氏

山陽製紙株式会社
代表取締役 原田 六次郎 氏

会社名山陽製紙株式会社
住所〒590-0526 大阪府泉南市男里6丁目4番25号
電話番号072-482-7201
代表者名代表取締役 原田 六次郎 氏
設立1957年(昭和32年)/創業 1928年(昭和3年)
事業内容各種クレープ紙の製造販売、炭再生紙の製造、KAMIDECO(カミデコ)サービス

紙づくりを通して、環境に良いことをする企業になろう

▲クレープ紙の製造風景。化学薬品を最小限に抑えて、古紙再生に使う水も循環させるなど、環境性を徹底しているエコ工場だ

▲クレープ紙でつくったペーパーバッグ。ラフなしわ感があったかくていい感じ

山陽製紙は、昭和3年に原田氏の祖父が、広島県三次市で設立した紙製品卸業の法人がルーツ。その後、昭和26年に原田氏の父親が現在地に大阪工場を開設し、製紙業を始めた。その父が昭和59年に急逝したため、原田氏が34歳の若さで3代目社長に就任した。

同社は、操業開始当初から古紙再生メーカーとして、セメント袋の口縫いに使用されるクレープ紙(しわのついた紙)を中心とした再生紙を製造してきた。時代によって主力商品に変遷はあったが、60年以上続いている製品は製袋用クレープ紙のみ。

しかし袋の形態変化によって市場が縮小し、今では最盛期の6分の1程度の市場規模しかない。そのため、かつて4社あった同業者は次々廃業、いつの間にか山陽製紙だけになっていた。

結果的に1社独占体制となったが、いずれ事業が先細りするのは目に見えている。そこで、会社設立50周年を迎えた平成19年、原田氏は、「もう一度原点に立ち戻って、事業を再構築しよう」と社員に呼びかけ、企業変革の議論をスタートさせた。

「うちの強みは何か?バージンパルプを原料に大量生産する製紙会社ではなく、古紙を小ロットで再生する製紙会社だから、時代が求めるエコロジーにぴたりと符合する。だったら、紙づくりを通して地球環境に貢献できる会社になろう。それを経営理念に掲げて、徹底的にこだわった製品やサービスを提供しようと考えたのです」

「梅炭クレープ紙」の開発に成功し、新たな道を模索

▲南高梅の種(左)を炭化すると右のような真っ黒な炭に変身する

新たな道を模索し始めたちょうどその頃、とあるタオルメーカーから、「梅の種を炭にした梅炭パウダーを紙にすき込めないか」という依頼が舞い込んできた。炭には、消臭、防カビ・抗菌、調湿、鮮度保持、シックハウスガス吸着など、さまざまな効果がある。炭をすき込んだ紙ができれば、種々の機能性を活かした多彩な紙製品が開発でき、山陽製紙の未来を革新する商品になるかもしれない。

そこから商品開発チームによる、手探りの研究が始まる。炭にまみれ、全身真っ黒になって苦闘すること半年、ついに同社だけのオンリーワン技術が誕生した。

「糊剤を使って紙の中に炭粉を練り込む製品は簡単につくれますが、これだと、炭に開いている細かい穿孔が糊で埋まってしまい、炭の機能性が半減します。そこで我々は、糊を使わずに炭を定着させる方法を模索し、試行錯誤の末に、ようやくある方法を発見しました」

完成した「梅炭クレープ紙」は、マスコミなどに取り上げられ各所で話題となり、靴箱や衣類収納ケースなどのアイデア用品が次々に誕生。平成20年に開催された北海道洞爺湖サミットでは、各国首脳への振舞い酒のパッケージに採用されるといった快挙も達成した。

梅炭クレープ紙をさらに普及させるために同社では、マーケティング部を新設し、市場開拓に取り組み始めた。国内だけでなく、今年から欧州の見本市にも参加して、グローバルなPRも展開中だ。

「日本の炭文化は欧米にはないので、炭の効能を説明すると、『ミラクルでビューティフル!』と感心してくれます。かなりの手応えを感じたので、来年も参加するつもりです」

小ロットでも古紙再生ができる“カミワザ”が可能にしたサービス

▲100%再生紙でつくった長3封筒。カミデコお試しコース2万円だと、10㎏の不要紙からこれが千枚つくれる

同社の変革を担うもうひとつの新規事業が、紙でエコする「KAMIDECO(カミデコ)サービス」である。カミデコは、企業で不要になったコピー紙を回収して100%再生紙を作り、封筒や便箋などの紙製品に生まれ変わらせ、回収元の企業や消費者に届ける古紙再生サービスのこと。通常、製紙メーカーが紙をつくる時の最低ロットはトン単位だが、小ロットの古紙再生技術を保有する同社では、300㎏単位で対応することが可能。まさに、山陽製紙ならではの“カミワザ”が可能にしたサービスなのだ。

1社でオリジナルな紙をつくるなら300㎏単位で、他社とコラボレーションしてつくるなら10㎏単位☓30社1グループとなって参加できる。満杯で10㎏になる専用回収ボックスをユーザーに配布し、不要なコピー紙がいっぱいになったら料金着払いで山陽製紙に送るだけで良いので、全国対応が可能。昨年から実験的に事業を運営していたが、この12月から専用ホームページを開設し、いよいよ本格運用に乗り出した。

現在、カミデコの魅力や手軽さを知ってもらうため、再生料金2万円で、角2封筒500枚や長3封筒1,000枚などのコースが選べる「お試しコース」を用意してPRを行っている。同社の手がける再生紙は、素朴な風合いでロハスな魅力が満点。利用者からも「自分たちの廃棄紙が、こんな素敵な紙に生まれ変わって帰ってくるなんて感動的」と好評だ。

原田氏はこの新規事業を通じて、「山陽製紙という企業を、素材メーカーから“紙再生サービス業”へと生まれ変わらせたい」と思い定めている。製造業からサービス業へ・・・。80年の歴史を持つ製紙会社の「変革と挑戦」が、今まさに進行中だ。

MOBIO担当者より

炭再生紙を海外の展示会に出展したところ、ミラクル、ビューティフルと大絶賛だったとか!東京にマーケティング部を設置し、大企業との取引にも対応できる体制も構築。ただ今、変革と挑戦の真っ只中です。(奥田)

取材日:2013年12月5日(木) ライター:三浪伸夫

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