ものづくり中小企業の変革と挑戦を支援しているMOBIOでは、MOBIO 常設展示場出展企業様・インキュベートルームの入居企業様の「 変革と挑戦 」について、取り組みのきっかけ(背景)、 具体的な内容などをインタビューしご紹介していきます。ここにはヒントが沢山詰まっているはずです。 じっくりお読みください!
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塗るだけではない、高付加価値を+するオンリーワン塗装技術を創造
双葉塗装株式会社 代表取締役 深江 裕宗 氏
会社名 | 双葉塗装株式会社 |
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住所 | 〒577-0065 大阪府東大阪市高井田中3-1-21 |
電話番号 | 06-6788-4511 |
代表者名 | 代表取締役 深江 裕宗 氏 |
設立 | 1960年(昭和35年) |
事業内容 | 金属焼付け塗装(産業用設備機械の製缶フレーム) パテ埋め(美観・機能を付ける為) |
60年以上受け継がれてきた2つの技術を強みに成長
昭和26年の創業から、長年にわたって塗装事業を展開してきた双葉塗装。得意とするのは、自動車メーカーや家電メーカーで使用される工作機械、装置の塗装だ。一口に塗装と言っても用途によって多様な手法があり、同社では金属塗装、焼付塗装、耐熱塗装、メラミン塗装など、あらゆるジャンルの塗装に高レベルで対応できるフレキシブルさを備えている。
またもう一つ、塗装面の凸凹を極限まで無くし、表面を滑らかに仕上げるパテ技術を有しており、パテ技術+塗装技術で美観とクリーンさの両立を実現。同業他社にはマネのできないオンリーワンな塗装を生み出している。
「当社には、先代の社長の時代から受け継がれてきた塗装技術と他にはないパテ技術があります。この2つを組み合わせ、産業用機械の製缶フレームなどの隙間を埋める事で、液晶製造設備など、クリーンルームで使用される機械として新たな価値を+することができています」
と代表取締役の深江氏が語るように、ただ単なる着色ではなく、元々の機械が使用される場所や用途を広げる付加価値を生み出す塗装技術が同社の今の発展を支えている。
そんな強みを持ち、創業から60年近く依頼が絶えることなく、顧客への営業や新規開拓も必要ない程に安定成長を続けてきた同社。大きな転機が訪れたのは2008年のリーマンショック以降。世界的な大型不況に多くの企業が仕事を無くし、倒産していく中で同社も例外ではなかったという。
当たり前でなかった自社技術の強み、他社&他者との交流で再発見
「あまりの仕事の激減に当社もかなり厳しい経営状況に陥りました。そこで私自身も初めて経営者が集まるセミナーに参加し、何か打開策を見つけられないかと思ったんです」
それまで技術畑一筋でやってきた深江氏が取り組んだのは、初めての経営セミナー参加。最初は気後れして会場の最後列に座り、聴講する日々が続いた。
「何度参加しても講師の言っていることがまったく分からなくて、理解できない自分にも腹がたったんです。それで思い切って最前列に陣取って聞きました。そうして受講後に講師からの『今日のお話、お分かりいただけましたか?』との投げかけに『全然分からないです!』と答えたんです」
そこから深江氏は、講師に呼ばれ、じっくりと経営とは、営業とはというレクチャーを受けたという。以降、異業種交流会組織に積極的に参加し、同業他社はもちろん、異業種出身者と交流を重ねた。
「異業種の会社や人との交流で私が得たのは、今まで私たちが当たり前のことだと思っていたことが、他の業界では当たり前ではないという気づきでした。中でも当社の塗装技術やパテ技術は、自分達が考えている以上に魅力的で、武器になるということを周りから教えてもらえたのは、良かったですね」
これを機に深江氏は、自分達が持っている強みを再認識し、技術をより洗練させていくことを決意。同時に今までとは違う分野の企業にも営業活動を展開していった。
明確になったVISIONの下、動き出した同社に反応して、今までには無かったジャンル、業界からの案件が多数寄せられるようになった。具体的には、より高度な技術が必要とされる特殊自動車車両や鉄道関連車両の塗装、ステンレスへのカラー塗装、美観や衛生面が要求される高級珈琲焙煎機の塗装、おもしろい分野では、神社仏閣の飾り金具やアーティストからの依頼を受けたモニュメント塗装…など、その多くは実現するには苦労を伴うものであった。しかし一つひとつ案件ごとの課題を解決していくことで、顧客からの信頼を獲得し、自社の新しい独自技術として確立していった。
“技術づくりは人づくり”をテーマに技術者の技と心を育てる
65年以上にわたって蓄積された高度なパテ技術と塗装技術を支え、さらに発展させるために、深江氏が現在力を入れているのは人材育成。中でもユニークなのは、深江氏が独自に考えた【気づきシート】を社員各自が毎日記入し、社長自らが欠かさずチェック、そして対話する手法だ。
「当社で使用している気づきシートには、整理整頓などの製造業では一般的な項目以外に、感謝の気持ちや素直さといった項目があります。これは、社員皆に必要な心構えや向上心を育てるために意識してもらいたいと思っていること。毎日本人に書いてもらい、私と対話してもらうことで自覚を促すことがねらいです。そこから意欲的に新しいこと、難しいことにチャレンジするマインドが育ち、技術の進化につながっていきます」
こうした取り組みが奏功して、社員から自主的に新しい技術や難しい案件にトライさせて欲しいという意識が芽生えているという。さらに難しい案件をクリアした社員は、一回り成長し、また新しい案件が増えていくという+の好循環につながっているというのはおもしろい。
「人づくりをしっかりすれば、技術の進化も新しい技術の開拓も格段に進みます。そうして生まれた技術は当社の新たな提案力となり、多くのお客様の課題をソリューションできます」
現在、深江氏と社員たちが一体となって目指しているのは、“受注生産型企業から、提案型企業への進化”。その実現に向けて、ある企業とコラボした商品開発など、もう新たな取り組みが次々と始まっている。
取材日:2015年5月20日(水) ライター:北川 学
MOBIO担当者より
いつも明るい男前、深江社長の“人生を変えたエピソード”。話すのが苦手な技能者だった40代に一人で様々なセミナーに飛込み、今の仕事のスタイルを確立し、行く行くは教室も開きたい…さらなる変革と挑戦のお話をお聞きして、自ら行動を起こす勇気を頂きました。(山口)