ものづくり中小企業の変革と挑戦を支援しているMOBIOでは、MOBIO 常設展示場出展企業様・インキュベートルームの入居企業様の「 変革と挑戦 」について、取り組みのきっかけ(背景)、 具体的な内容などをインタビューしご紹介していきます。ここにはヒントが沢山詰まっているはずです。 じっくりお読みください!
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逃げ道のない一貫生産体制こそ、変革と挑戦の源泉
株式会社クヌギザ 代表取締役 椚座 寛之 氏
会社名 | 株式会社クヌギザ |
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住所 | 〒544-0015 大阪府大阪市生野区巽南5-2-41 |
電話番号 | 06-6791-7877 |
代表者名 | 代表取締役 椚座 寛之 氏 |
設立 | 1959年(昭和34年) |
事業内容 | 鏡製造 |
薄板鏡の一貫生産体制は日本唯一
株式会社クヌギザは、化粧品のコンパクト内の鏡や手鏡といった“薄板鏡”と呼ばれる鏡の専門メーカーだ。
しかも薄板鏡において、ガラスの状態から鏡にしてカッティングするまでの一貫生産を量産体制の中で整えているのはクヌギザのみ。
アジア各国で生産される低価格な鏡によって産業が衰退の危機にある中で、確固たる地位を築いている理由を代表取締役である椚座氏に尋ねた。
「当社は銀メッキを使った昔ながらの高品質な鏡『銀引き鏡』を生産しており、アジア各国が作る銀の代わりにアルミを使った低価格な鏡とは品質が違います。銀引き鏡にはメッキそのものや上に塗る塗料にも高度な品質が必要で、当社ではその塗料を研究開発&生産する会社まで作るほど、品質にはこだわりを持っています」
鏡の生産は分業化が進み、クヌギザのように一貫生産体制を構築している企業は少なく、さらに塗料まで自社開発にこだわる企業は皆無に等しい。
「すべてはお客様のご要望に応える体制の構築と高品質を維持するため。それを可能にしたのも、自社商品に対して一切の責任を持たねばならない一貫生産体制だからこそなんですよ」
変革と挑戦のシーズは、お客さまの中にある!
クヌギザの品質は、クライアントからの高い品質要求によって培われたという。
「特に化粧品のコンパクトの鏡は、女性が使用されるので非常に厳しい品質基準があります。当社はそういった仕事を受注していますので、品質ベンチマークは日本国内でも有数の高さだと思います。また、どんなクレームや不良にもきちんと対応できるのも、一貫生産体制をとるクヌギザの強みです。原因を追究してクライアントに報告し、今後の生産に活かす…そんな単純なサイクルも、分業では非常に難しいでしょうね」
原因を追究し、将来の生産に活かす一貫生産体制は高い信用を生み出しており、鏡に関するあらゆる要望がクヌギザに舞い込んでくる。
「例えば、割れても飛散しない鏡は、お客さまの要望によって研究開発のスピードが上がり販売が実現しましたし、レーザーマーキングの導入も鏡面への名入れができないかというお客様の要望がきっかけです。鉛フリーの鏡に至っては、お客様の方から欲しいというご連絡をいただいて取引に至りました」
すべては基本の鏡づくりがあって、研究開発は必須のプラスαという位置づけ。
「クヌギザの今は、真正面から鏡と向き合ってきたおかげ」と語る椚座氏の言葉が印象的だった。
原点に立ち返ることが、変革と挑戦の源泉となる
ドイツで生まれた銀引き鏡は約200年の歴史があり、クヌギザはその中で約50年以上の歴史を重ねてきた。
「銀引き鏡が最高の鏡だと思っていますが、全く新しい手法で鏡を作る研究にも取り組んでみたい。成熟産業だからこそ、鏡づくりをイチから見直すことで新しい発見が生まれるんじゃないかと。常に変革と挑戦を継続して、お客さまに喜んでいただける商品づくりを極めたいですね」
このように、常に変革と挑戦の姿勢を貫くことで、新しい技術情報やヒント、お客さまのニーズが集まってくると語る椚座氏。
その意欲の源泉を尋ねると、『原点に立ち返ること』という言葉が返ってきた。
「素材から最終製品までの知識を備えたスペシャリストの減少も、日本の製造業を弱めているような気がします。当社は一貫生産で鏡を製造するため、クレームに対して原因を追究し、改善の手立てを見つけなければなりません。すると、ドラスティックな変革はなくとも、小さな変革は日々起こります。そうした環境では、自然に鏡のスペシャリストが生まれます。昔は多くの産業、企業がそうでした。今一度原点に立ち返ることも、変革や挑戦の第一歩になるのではないでしょうか」
取材日:2012年8月20日(月) ライター:中直照((株)ショートカプチーノ)
MOBIO担当者より
挑戦は足元から始まる。「顧客・流通からのあらゆる声を誠実に聞く。他に丸投げせずに自ら方向性を探す」。薄物鏡市場に精通した椚座社長は、市場の現実を踏まえた着実な次の一歩を見つめておられました。(担当:兒玉)