ものづくり中小企業の変革と挑戦を支援しているMOBIOでは、MOBIO 常設展示場出展企業様・インキュベートルームの入居企業様の「 変革と挑戦 」について、取り組みのきっかけ(背景)、 具体的な内容などをインタビューしご紹介していきます。ここにはヒントが沢山詰まっているはずです。 じっくりお読みください!
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強みの深絞り技術に固執せずに挑戦し、新しいノウハウを蓄積し続けたい!
株式会社松永製作所 代表取締役 松永 考司 氏
会社名 | 株式会社松永製作所 |
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住所 | 〒567-0033 大阪府茨木市松ヶ本町9-14 |
電話番号 | 072-622-2265 |
代表者名 | 代表取締役 松永 考司 氏 |
設立 | 1958年(昭和33年) |
事業内容 | 深絞りプレス加工、溶接加工、レーザー加工 |
強み技術を棚上げし、新技術への挑戦を選択!
溶接加工や深絞りをはじめとしたプレス加工などを行う株式会社松永製作所。特に深絞り加工は、他社では困難な深さの加工を得意としており、その技術を活用して消火器容器などを製作している。鉄製の消火器容器を深絞り加工で製作する同社だが、数年前、ステンレスで消火器容器を製作する話が浮上した。代表取締役の松永考司氏に当時の様子をおうかがいした。
「当然のことながら、ステンレスでも深絞り加工で製作する予定で試作も行っていました。作れるメドは立ったのですが、深絞りは四角い1枚の板から作るため、材料ロス率が高いんです。そのため、材料費が高いステンレスではコストが合わなくなってしまいました」
考えた松永氏は、強みである深絞りでの製作を一度棚上げし、新たにステンレス溶接での生産に挑戦することを決意した。
「当社は鉄溶接のノウハウを持っており、ステンレス溶接のノウハウも蓄積するチャンスだと。もちろんステンレス溶接は鉄とは全く違いますから、一からの挑戦になりました」
ステンレスのロール加工や磨き加工も初めての挑戦となったが、およそ2年で量産化にメドを付けた。
新技術獲得の武器は『率先垂範』と『対話』
それまでテストしていた深絞り加工から、急遽、未経験のステンレスロール加工と溶接での製作に挑戦した松永氏。当初、社員たちの反応は冷ややかだったが、それを変えたのは松永氏自身の『率先垂範』と『対話』だった。
「普段から工場に出ていますから、最初は私が率先して新しいことに取り組む姿勢を示すようにしました。社員たちも最初は遠目に見ている感じでしたね。そして一人ずつ『一緒にやろう』と声を掛けて一緒に取り組みました」
そして、それぞれの社員に前向きに取り組んでもらうために『対話』を重ねた。一人ひとりとていねいに話し合いを重ね、この挑戦の必要性を説明した。
「話し合いを重ねることで、みんなで新しいことに挑戦しようという雰囲気が社内に生まれました。どうしても自分や会社の仕事はここまで、と線を引いたり、できることとできないことを勝手に決めてしまいがちです。それを打ち破って、社員全員で前に踏み出すのが一番大変でしたね」
新しい取り組みに挑戦する姿勢は、企業が存続する上で必須、と語る松永氏。今後もお客様の『あったらいいね』の実現に挑戦し続けたいと考えている。
常に挑戦し続けてノウハウを蓄積する!
ステンレスという初素材への挑戦を決断した松永氏。新しい挑戦の裏側には、大いなる危機感があった。それは鉄加工の海外シフトという、日本全体に見られる大きな流れだ。
「今、社内を変革していかないと時代に取り残されてしまい、生き残れないという気持ちは常にありますね」
今回の挑戦は、社内外に確実に変革をもたらした。社員の意識が少しずつ変わりはじめているのはもちろん、ステンレス素材への挑戦によって仕事の幅が広がり、具体的な依頼も増えつつあるというのだ。
「例えば、ステンレス製消火器容器の製造に取り組んだことで得た、ロール技術や真円技術に注目した企業からお声掛けいただきました。新たな挑戦が新たな仕事に結びついているのを実感しています」
現在は深絞りを前面に出してPRしているが、今後は時代の流れに合わせて柔軟に変化していきたいと語る。
「素材的には鉄にステンレスが加わりました。技術的にはロール加工の新たなノウハウを蓄積しつつあります。ロール加工も板金精度を高めることで強みとなることがわかりました。今後も、新しい素材や技術にチャレンジさせていただける機会が与えられれば積極的に取り組み、新しいノウハウをどんどん蓄積して、お客様の期待に応え続けたいですね」
取材日:2012年11月21日(水) ライター:中直照((株)ショートカプチーノ)
MOBIO担当者より
待ちの状態では仕事は必ず無くなります。常に新しいことに取り組む姿勢が重要。それを率先してみせてじっくり説明し、社員一人ひとりの意識を変えていったという松永社長様。社員に見せた後姿が浮かぶようでした。(担当:奥田)