ものづくり中小企業の変革と挑戦を支援しているMOBIOでは、MOBIO 常設展示場出展企業様・インキュベートルームの入居企業様の「 変革と挑戦 」について、取り組みのきっかけ(背景)、 具体的な内容などをインタビューしご紹介していきます。ここにはヒントが沢山詰まっているはずです。 じっくりお読みください!
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社長就任から28年。
攻めの姿勢で改革を積み重ねたプラスチックメーカーの二代目
近江化工株式会社 代表取締役社長 藤池 由章 氏
会社名 | 近江化工株式会社 |
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住所 | 大阪市生野区新今里2丁目4-2 |
電話番号 | 06-6752-2821 |
企業HP | https://www.ohmikako.co.jp/ |
代表者名 | 代表取締役社長 藤池 由章 氏 |
設立 | 1948年 |
事業内容 | 各種プラスチック製品設計、金型制作・射出成形・二次・三次加工・完成品組立まで総合生産 |
早くから三次元CAD/CAMシステムを取り入れ、一貫した生産体制を構築
プラスチック成形に携わって約70年。近江化工株式会社ではノートブック型PCや液晶テレビなどの外装品、空調機器、福祉用具や介護用品など多様な成形品を製造している。なかでも空調機器のパネルは同社の主力製品であり、ある大手空調機器メーカーの国内向け業務用エアコンパネルの製造をほとんど引き受けているという。
特徴のひとつは一貫した生産体制。これまでプラスチック製品の多くは分業体制で生産されてきたが、同社は開発設計から金型設計・金型製作、成形、仕上げ加工、組立までを請け負っている。「製品図面をいただいたら完成まで一気通貫でできるのがうちの強みです」。そう話すのは同社代表取締役社長の藤池氏だ。同社では複雑化する製品の形状に対応するため、早い時期から三次元CAD/CAMシステムを取り入れてきた。「二次元の図面上での確認が三次元でできるようになったことで、より緻密な製品設計と設計時間の短縮ができました」。
もうひとつの特徴は超精密金型から大型金型まで対応できる技術力。同社は型締力20トンから1600トンまでの成形機を導入している。「大阪近辺で1600トンの大型成形機を持っているところは少ないと思います」と藤池氏が言うように、この技術が業務用エアコンパネルのような大型製品の量産を可能にした。同社はこれらの技術力を備えた工場を国内に3か所、中国とベトナムに1か所ずつあり、多様なプラスチック製品を生み出す企業として成長してきた。
社内外の抵抗に合うも、めげない姿勢で改革を実行
藤池氏が父である先代から経営を引き継いだのは1996年。二代目社長として28年間に亘り、さまざまな改革を行ってきた。たとえば常務時代から取り組んだのが「フォワード50」と名づけた業務の合理化と効率化。不良率の50%減少、段取り時間の50%短縮、50%の生産効率アップという高い基準を打ち出した。「最初は社内から非難轟々で、“何言うてんねん、製造のことわからんくせに”と皆冷たかった」と振り返る。「それでも目標を持って取り組みたかったのです。50は無茶な数字でしたが、20でも30でもできればよいと思いました」。その思いが徐々に伝わり、フォワード50は少しずつ成果を上げていった。
また、ある時は売上拡大を目指し、発注元の大手メーカーに乗り込んだ事もあった。当時、ある企業から空気清浄機を受注していたが、別会社からも空気清浄機の依頼が舞い込んだ。一般的に市場で競合するメーカーの製品は並行して引き受けないのが暗黙のルールだが、藤池氏は「他社の空気清浄機も受注したい」と先のメーカーに申し入れた。予想通り、先方の担当者は“何を考えているんだ?”と言わんばかりの厳しい表情を見せたという。「でもこちらも引けません。にらみ合いの緊張した時間が続いたんですが、しばらくして“この話は聞かんかったことにする”と相手が席を立ちました。私は絶対に情報漏れのないようにすると約束し、関連会社名で製造を引き受けたんです」と藤池氏。この受注が同社の売上を大きく伸ばすことになった。
さらにある時は2000トンの大型成形機の導入にふみきった。「当時の金額で1億円。大きな投資になるけれど、これがあれば大企業からの仕事を安定受注できる。是非機械を導入して欲しい」と会長に掛け合った。会長の答えは「よし。競合相手が大手企業となら堂々と勝負せい」。その返事を聞くや否や藤池氏は取引先との商談をまとめ、大型成形機を奈良工場に導入した。
人と組織を育てる “No challenge, No success”の理念と取り組み
このようにチャレンジを積み重ねてきた藤池氏がこの28年間を振り返る。「就任当時は社長になったものの“何から手を付ければいいのだろう”と迷ったんです。会長は“自分でやっていけ。ええと思ったらやれ”としか言わない人で何も教えてくれなかったんです(苦笑)。だからこれまでうちがやってこなかったことをやってみようと」。藤池氏のポリシーは“No challenge, No success”。「何事も挑戦しなければ成功もない。やってみてダメとわかったら次の手を考えればいい。社員にも常に新しい事・やりたいことがあったらどんどんやったらいいと言っています」。
藤池氏は人材育成と組織づくりにも力を入れている。「社員には自立した職業人になってほしいんです。自分たちの賃金を稼ぐためにどれくらいの収益が必要なのか。指示される前に自分で考えられる人になってほしい」。そのための一策として縦割り組織から横串組織への意識転換を図っている。「各部署の長は隣の部署が何をしているのかを知り、部下にそれを教えるという取り組みを行っています。そうすることでこれまでなかった横のコミュニケーションが生まれ、社内の情報共有が進んでいます」。また、若い社員や女性社員たちを中心に開発チームを発足し、自社製品を開発している。製造を請け負うだけでなく、プラスチック成形という技術を通じて世の中が必要としているものを自らも提供していく。「そのために今後も業務を効率化する機械の導入、省力化できるシステムの構築を積極的にやっていきますよ」と藤池氏は攻めの姿勢を見せる。
2024年1月23日(火)ライター 荒木さと子
MOBIO担当者より
アメリカ留学で学んだシステムエンジニアリングを活かしたデジタル、データ解析による変革を継続されている藤池社長。社員の方々の、長年蓄積された技術力が融合して社会に貢献し続ける同社。プラスチック成形加工の業界ではパイオニア的存在であり、加工製品には納入先・使用者の目線にあったモノづくりの繊細さが表れている。
厳しい時代の波も、「ダメ元でチャレンジする」ことで、社員一丸となって上手く乗り越えていけると熱く語っていただきました。
MOBIO 村井