ものづくり中小企業の変革と挑戦を支援しているMOBIOでは、MOBIO 常設展示場出展企業様・インキュベートルームの入居企業様の「 変革と挑戦 」について、取り組みのきっかけ(背景)、 具体的な内容などをインタビューしご紹介していきます。ここにはヒントが沢山詰まっているはずです。 じっくりお読みください!
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技術力+ベンチャー精神で新たな価値を生み出す
株式会社西村製作所 代表取締役 幾留 秀樹 氏
会社名 | 株式会社西村製作所 |
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住所 | 大阪府大阪市平野区加美北9-11-8 |
電話番号 | 06-6794-8223 |
企業HP | http://nishimura-seisakusyo.jp |
代表者名 | 代表取締役 幾留 秀樹 氏 |
設立 | 1992年 |
事業内容 | 試作部品をはじめ、少量多品種での精密板金加工および金属・樹脂の切削加工 |
試作品メーカーは毎回が新しいチャレンジ。その経験一つひとつを技術力に
株式会社西村製作所の創業は1966年。半世紀以上の歴史を持つ老舗ものづくり企業として、幅広い分野の精密加工部品の試作品および少量多品種を手がけている。「同じものを大量につくる量産と違い、我々は常に違うものをつくるため毎日が新たなチャレンジの連続。スピードも求められるので、失敗しても落ち込んでいるヒマはない。そうやって日々、試行錯誤を繰り返し技術を集積してきたおかげで、できることの幅が広がり、今ではそれが当社の強みになっています」と、現社長・幾留秀樹氏は語る。
その言葉どおり、同社では板金と切削の2分野を網羅。板金はプログラムからレーザー加工、絞り・曲げ加工、溶接加工まで一貫体制を敷き、なかでも溶接は難しいとされるアルミを含む多彩な素材への高精度な加工を実現。切削は金属・樹脂を対象に、複雑形状品や難削材にも対応している。
さらに、板金と切削の2つを組み合わせた複合製品へと受注の幅を拡大しているほか、「これからは当社の持つ技術力を駆使してお客様の課題を解決する、提案型のものづくりを行うことで付加価値を高めていきたい」と、新たな方向へも舵を切り始めた。最近では、ある企業の製品の機能をどうすれば効果的にアピールできるかを考え、板金と切削の技術を使って海外の展示会で展示する装置をトータルに提案・開発した事例も。
このように顧客の課題に耳を傾け、西村製作所が持つ多くの引き出しの中から、その課題解決のために最も適した技術や手法を使って1つの製品を形にする開発事案も、徐々に増えてきているという。
“諦めない姿勢”と“考動の精神”が生んだ独自技術「SABA加工」
「こんなものできませんか?」という顧客の要望に、決して「NO」とは言わずにチャレンジし続けてきた同社には、“諦めない姿勢”が根付いている。そして近年、技術力をベースに新しい価値を創造する企業へと進化すべく幾留氏が取り組んでいるのは、与えられた仕事を単なる作業としてこなすのではなく、社員一人ひとりが柔軟な発想を持ち、自ら考えて動く“ベンチャー精神”の育成だ。
独自技術である「SABA加工」は、そんな“諦めない姿勢”と“ベンチャー精神”が見事に花開いたもの。鏡面仕上げのオーダーに対し、従来は手で磨いていたものをどうにか切削工具でできないかと担当者が考えに考え、独自の工具を開発し、研磨レスで鏡面加工を可能にする手法を編み出した。
すると今度は、別の顧客から「SABA加工を使ってすり鉢状の曲面形状に鏡面仕上げができないか」という問い合わせが。これも一筋縄ではいかない難題ではあったものの、持ち前の“諦めない姿勢”で何度も試作を繰り返し、ついに完成にたどり着いた。
「このときは本当に社員を誇りに思いました。お客様から宿題をいただくこと、それに対して諦めずに意地でも完成させる!という思いでチャレンジし続けること。それが自らの技術力を高め、成長していくための重要な要素だと痛感した、近年最も大きな出来事の1つです」(幾留氏)。
今後も顧客の要望に柔軟に対応しながら、SABA加工を大切に育てていきたい考えだ。
社員同士の交流・自発的な発言が新しい発想を生む
“ベンチャー精神”を養うため、社員の意識改革を促す環境づくりにも力を入れている。その1つが、板金部門と切削部門の技術的交流「ごちゃまぜの会」だ。何十年も同じ分野で作業をしていると、どうしても硬直化する部分が出てくる。そこで、せっかく社内に2つの分野があるのだから、それらを融合させることで多能化を実現し、視点を変えることによって新たなアイデアや価値が生まれることを狙いとしている。今まで当たり前のように行っていた工程に対して、別の分野の人が「こういう素材を使ってこういうやり方をすれば、もっと効率よくできるのでは?」と意見を出し、加工時間の短縮につながった例もあるのだそう。
加えて、それぞれの想いやアイデアをアウトプットする場として、ベテラン社員も若い社員も一緒に集まって情報交換を行う会議を、毎日朝夕に実施している。当番制で社員が主体となって進める形にしたところ、徐々に様々な発言が出てくるようになった。
「今まで朝礼でたった一言話すことすらイヤがっていた社員が、自ら想いを発信するようになったことは大きな成果だと感じています。その自発的な言葉が新たな価値を生み出し、会社を少しずつ進化させていくと考えると、高い設備投資よりも断然意義がある」と手応えは十分だ。
先代より、20歳近く若い幾留氏が事業を引き継いで8年。世代交代を果たした同社には、確実に新しい風が吹いていた。
2023年6月23日(金) ライター:成田知子
MOBIO担当者より
新しい視点で事業を捉え、ワンランク上のベンチャー企業になりたいと言われた社長。量産ではできず、多品種少量生産の試作だから可能という「高付加価値訴求」。「ごちゃまぜの会」など、加工部門の垣根を超えた交流を活発化し、開発されたのが新技術SABA加工。その仕上げのように、ピカっと光る事業経営に邁進中の社長さんでした。
MOBIO 兒玉