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MOBIO入居企業・常設展示場出展企業のスペシャルインタビュー

ものづくり中小企業の変革と挑戦を支援しているMOBIOでは、MOBIO 常設展示場出展企業様・インキュベートルームの入居企業様の「 変革と挑戦 」について、取り組みのきっかけ(背景)、 具体的な内容などをインタビューしご紹介していきます。ここにはヒントが沢山詰まっているはずです。 じっくりお読みください!

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技術とアイデアで調理機器の付加価値を高める

山岡金属工業株式会社 代表取締役 山岡 秀文 氏

山岡金属工業株式会社
代表取締役 山岡 秀文 氏

会社名山岡金属工業株式会社
住所大阪府守口市東郷通2-7-30
電話番号06-6996-2351
代表者名代表取締役 山岡 秀文 氏
設立1960年
事業内容業務用調理機器、業務用熱機器、家庭用調理機器、環境関連機器などの企画・開発・製造・販売

持っている技術を使って新たなマーケットの扉を開いてきた

上/“ヤマキン”ブランドの第一号製品『丸型コンロ』、下/珈琲サイフォンガステーブル

1999年に販売を開始し、今再び注目を集めている『パラソルヒーター®』

「創業者である祖父は、非常に製造技術に長けた人だったようです」と語るのは、山岡金属工業株式会社の三代目社長・山岡秀文氏。初代・山岡重俊氏は、1956年に山岡鉄器製作所を創業。その後、パイプのベンディングおよびプレス・板金技術を活用して、1962年より自社ブランドで家庭用ガス調理機器の製造販売を開始した。その第一号製品『丸型コンロ』は、一部の調達部品を除いてほぼ全てが自社設計による内製だったという。なかでもプレス加工で作ったガスバーナーは、日本で大手ガス機器メーカーに引けを取らないほど先駆けだった。
その後、たこ焼き器、焼肉器等の家庭用ガス調理器を経て、業務用分野にも進出。「アルコールランプで熱する珈琲サイフォンは、アルコールの匂いが珈琲の魅力を妨げる」という声から、ガス式の珈琲サイフォンを設計・製造したのを皮切りに、喫茶店の小スペースにも収まる縦型コンロなど、喫茶調理器具でヒットを飛ばしていく。さらに、業務用ガスコンロや焼物器、ガス機器を埋め込んだクッキングテーブルや無煙ロースター、宴会場でのライブクッキング用調理ワゴンへと手を広げていった。こうした事業展開について、秀文氏は「当時はマーケティングなど考えていなかったはず。持っている技術を使っていかに市場にアプローチしていくか。そこから様々な商品が生まれていったのではないでしょうか」と分析する。
この「持っている技術を活用する」という商品開発の手法は、今も受け継がれている。例えば「チャントル®」というブランド名で展開している環境関連機器は、秀文氏が入社してから手掛けたもの。無煙ロースターに使用している技術を応用した油煙対策フィルターをはじめ、タバコの煙を遮断する電子エアーカーテン、脱煙・脱臭システム等、既存技術の応用によって快適環境を創造する製品を展開している。
また、屋外用暖房機器『パラソルヒーター®』の設計・製造を決断したのも秀文氏だ。「これは直感的に売れる!と思った。なぜなら、世の中にないものだったから」(秀文氏)。持ち前の技術力による堅牢な設計、そして第三者認証を取得したことで安全性も評価され、この商品は東京を中心に一世を風靡している。そして最近、新型コロナウイルスの影響により屋外での飲食需要が増えたことで、全国から問い合わせがきているという。「何がヒットするかなんて、本当のところはマーケティングではわからない。長く続けていたら、マクロ環境の変化で急に脚光を浴びることもあるんです」。それが商売の難しさであり、面白さといったところだろうか。

独創的で付加価値の高いものづくり

「熱と空気をデザインする」をスローガンに自社ブランド製品を展開

秀文氏が入社したのは約25年前。三代目を継ぐ立場として、入社後は販売ルートの見直し、第三者認証の取得など、様々な改革を行ってきた。しかし、「アイデンティティが引き継がれていくのが家族経営のいいところ」というように、根底にある理念を守り、継承していくことも重視している。
同社が目指すのは“ヨーロッパ型の会社”。大手のようなハイテク技術で万人受けするものづくりではなく、ヨーロッパの一流ブランドや北欧家具のように、ローテクだけど独創的で付加価値の高いものづくりで、ユーザーの心に響く製品を生み出すことを目標にしている。そのために必要なのは、社員全員が自社の製品を愛し、同じ方向を見て設計・製造・販売に携わること。「祖父の時代は、みんなが製品開発者、みんなが設計・製造者、みんなが営業として働いていたことが強みだったはず。部署が細分化された今、商品に直接関わらない部署の人が『私は商品のことはわかりません』などということはあってはならない」と秀文氏は懸念する。
そこで行ったのが、スローガンの制定だ。「熱と空気をデザインする」――このスローガンのもと、同社では社員全員がベクトルを合わせ、魅力あるものづくりを推進している。

デザインや美味しさへのこだわりで“ほんまもん”を追求

同社の技術力が活かされた『トライアングル』はグッドデザイン賞を受賞   

美味しさにとことんこだわった『焼王』。ユーザーとの接点を持ちたいとの想いから、この商品でEC事業にも参入

“独創的で付加価値の高いものづくり”を具現化した製品の1つとして、業務用客席コンロ「トライアングル」が挙げられる。これは、ガス事業者と大学と山岡金属工業が共同開発したデザインコンロである。着脱可能なゴトク一体型バーナー、ポップアップ式の点火プラグ等の企画・設計により、お手入れ簡単、美しさにもこだわったガスコンロが実現。2012年にグッドデザイン賞を受賞した。「それまでデザイン性など重視されてこなかった業務用調理機器の世界に、この商品が風穴を開けたのではないか」と秀文氏は胸を張る。
そしてもう1つ同社がチャレンジしているのが、「美味しさ」という付加価値に特化した調理機器だ。大企業の万人に向けた商品ではなく、とにかく「美味しさ」にこだわり、重さ約3.4kgの鉄製鋳物プレートに、表面に肉の余分な油を落とすグルーブ加工を施した焼肉器『焼王』を2019年12月に上市した。すると、美味しさを求める人たちから支持され、当初の販売計画を超える売り上げを達成。「昔からあるものでもアイデアを加えて“深化”させることで付加価値を高めることができる」。これぞまさに、ヨーロッパ型の会社をめざす秀文氏の戦略が実を結んだ代表例といえる。
「当社は来年で創業65年。社歴が長くなると、どうしても思考回路が停止する。そういう意味では、今回のコロナによる価値観の変化は会社を若返らせるチャンスかもしれません。社員全員が同じ方向を向き、みんなが汗を流して働けば、まだまだ伸びていけるのではないか」。今後について、秀文氏はそう力強く語った。

MOBIO担当者より

「熱をデザインする」が企業スローガンで、企業運営されている山岡社長は「熱い人」。目指されているのは、スポーツカーに特化した「ヨーロッパ型」のような専門企業。主力の調理関連事業では、視点も新しく、「アイディア+化学」で本物製品を作るということ。その理念を具現化した「特化製品」が生み出されると、強く感じたインタビューでした。(MOBIO 兒玉)

2020年11月2日(月) ライター:成田知子

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