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MOBIO入居企業・常設展示場出展企業のスペシャルインタビュー

ものづくり中小企業の変革と挑戦を支援しているMOBIOでは、MOBIO 常設展示場出展企業様・インキュベートルームの入居企業様の「 変革と挑戦 」について、取り組みのきっかけ(背景)、 具体的な内容などをインタビューしご紹介していきます。ここにはヒントが沢山詰まっているはずです。 じっくりお読みください!

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低コストの排水処理設備を実現する“中小企業の味方”

有限会社エイチ・アイ・テクノス 代表取締役 浜野 孝平 氏

有限会社エイチ・アイ・テクノス
代表取締役 浜野 孝平 氏

会社名有限会社エイチ・アイ・テクノス
住所〒577-0011 大阪府東大阪市荒本北1丁目4-17 クリエイション・コア東大阪 北館4階 407
電話番号06-6744-6410
代表者名代表取締役 浜野 孝平 氏
設立2001年(平成13年)
事業内容洗浄機・工作機械用油水分離機及び小型排水処理装置の設計・製造・販売

凝集剤と油水分離装置を組み合わせたハイブリッドシステムの誕生

▲無機系凝集剤と油水分離装置を組み合わせた「凝集排水処理システム」。低コスト・短納期が特長なので中小企業にうってつけ

エイチ・アイ・テクノスは、同じ企業の先輩・後輩だった池宮千尋氏と浜野氏が、平成13年に独立・起業した産業排水処理装置の専門会社だ。社名の「エイチ・アイ」は、2人のイニシャルで、池宮氏が技術面を、浜野氏が営業面を担当している。
創業当初は、製造工場などから出る油の混ざった排水を浄化する「油水分離装置」を主力商品としていたが、油と水を機械的に分離する方法はさまざまあり、同業者も多く、経営的に苦戦を強いられていた。

なんとか他社と差別化したいと頭を悩ませていた時、環境保全工事で一緒になった大手企業が、無機系凝集剤を使って汚泥を固めているのを見て興味を持った。「油でも同じことができるんやろか?」と考えた浜野氏が、試しに油濁水で実験してみると、ものの見事に油分を凝集して美しい水に変化させるではないか。

「これや!と思いました。先に凝集剤で油分をあらかた凝集除去しておけば、仕上げの油水分離装置にそれほど負荷はかからない。つまり、低コストで開発できる軽装備の装置でも十分間に合います。大手水処理企業が手がける億円単位のプラント級装置は価格が高すぎて手が出せないという中小企業向けに、コンパクトで手軽な価格の設備が提案できると考えたのです」

訪問先企業の混濁水をその場で浄化してみせる実演でツカミは百発百中

▲左が油の混濁した原水、右が凝集剤投入後の処理水。一目瞭然の浄化力だ

浜野氏のアイデアを相棒の池宮氏がシステムとして体系化し、無機系凝集剤と油水分離装置を組み合わせたハイブリッド方式の「凝集排水処理システム」が誕生した。浜野氏のひらめきは見事に当たり、排水処理に悩む“中小企業の味方”として、全国から引き合いが相次ぐようになった。
小規模な設備なら最低300万円程度の導入費で済み、投入する凝集剤のランニングコストは月2万円程度で収まるので、排水処理にコストをかけられない中小企業でもなんとか手が届く。

「工場から少ししか油濁水が出ないのに、高額な設備投資を強いるのは中小企業には酷。環境を守った、儲けが飛んだ、会社がつぶれたでは本末転倒です。だからうちがターゲットにするのはあくまで、大手水処理企業が相手にしないニッチな市場。トムとジェリーのアニメでいえば、足元をちょこまか走り回るネズミ型の営業で、中小企業の悩みを解決していけたらと思っています」

陽性の人柄で人脈を次々に広げる天性の営業マンである浜野氏は、営業スタイルにもこだわりを持っている。設備をプレゼンテーションするのに、どうすれば最もドラマチックで説得力があるか考え抜いた結果、“おもしろ科学実験”風のデモンストレーションを毎回行っている。

「年配の経営者にはパソコンやタブレット端末で見せても、もうひとつピンときません。そこで訪問先の工場から出る油濁水をビーカーに入れてもらって、その場で凝集剤を投入する実演をしています。みるみるうちに濁った排水が、飲めるほどの浄水に変化するのを見ると、誰もが『おー!』と声をあげて感心します。種も仕掛けもない実演ですから、これほど信頼できる証明はありません」

油以外の混濁物質を除去するための研究と設備開発に取り組む

▲研磨・研削機を使用する工場向けの「研磨液・研削液再生装置HOFシリーズ」。研磨・研削廃液の寿命が驚くほど伸びると好評だ

低コスト・短納期で導入可能な凝集排水処理システムは、排水処理で悩んでいたさまざまな中小企業から注目を集め、重金属をはじめとする油以外の混濁物質の除去依頼も増えてきた。こうした新たなニーズにいかに対応するかが、同社が取り組んできた「変革と挑戦」に他ならない。
「無機系凝集剤が混濁物質を集めるしくみは、イオンの帯電を中和して、分子間引力を働かせることにより凝集させるもの。つまり、正負の電荷を帯びた物質であれば、なんでも凝集が可能です。この原理を応用して、油以外の種々の依頼に応えてきました」
重金属・非金属汚染水の処理で困っている製造業者向けの「重金属排水システム」、研磨・研削機を使用する事業者向けの「研磨液・研削液再生装置HOFシリーズ」、窒化アルミニウム加工業者向けの「ゼオライト入り窒化アルミ加工用凝集剤」など、これまでに開発してきた製品は多岐に渡る。
最近では、フッ素、ホウ素といったやっかいな物質の除去も依頼されるようになり、新たな設備開発への挑戦が続いている。

悩める中小企業のさまざまな依頼に応えるうちに、排水浄化に対するノウハウは多数蓄積されてきた。現在は、「凝集」だけでなく、「吸着」や「膜濾過」といった新たな製品の開発にも取り組んでいる。
例えば、水銀や鉛などの有害金属の混濁水には、凝集剤とキレート剤などを使った「吸着」を掛けあわせたハイブリッド方式や、0.01μの濾過膜を使った「ダイナミック膜濾過システム」などの技術が適用できるが、相手のニーズと状況を把握して適切な提案を行っている。

今後の事業展開の方向性を浜野氏は、「排水処理の入り口から出口まで、全てを一気通貫で対応できるソリューション事業に広げていきたい」と語る。
「いまうちの事業フィールドは、排水処理設備の設置までですが、排水を処理したら汚泥が出ます。これを脱水・乾燥させ、焼却処理まで代行する一貫サービスが提供できる企業体にしていきたいですね」

自らをトムとジェリーのネズミちゃんに例えて謙遜する浜野氏だが、なかなかどうして、どっしりした骨太の大志を持った会社である。

MOBIO担当者より

大手が参入しないニッチ市場にターゲットを絞りしっかりと掴む様は、まるで水と油を分け凝集剤で固めていく自社製品そのもののようです。(奥田)

取材日:2014年3月4日(火) ライター:三浪伸夫

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