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MOBIO入居企業・常設展示場出展企業のスペシャルインタビュー

ものづくり中小企業の変革と挑戦を支援しているMOBIOでは、MOBIO 常設展示場出展企業様・インキュベートルームの入居企業様の「 変革と挑戦 」について、取り組みのきっかけ(背景)、 具体的な内容などをインタビューしご紹介していきます。ここにはヒントが沢山詰まっているはずです。 じっくりお読みください!

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『おもろい製品』づくりをテーマに知財化戦略を推進

株式会社東穂 代表取締役 國本 周生 氏

株式会社東穂
代表取締役 國本 周生 氏

会社名株式会社東穂
住所〒571-0012 大阪府門真市江端町2-16
電話番号072-806-1681
代表者名代表取締役 國本 周生 氏
設立1962年(昭和37年)
事業内容合成樹脂異形押出成形品、エラストマー異形押出成形品

下請け脱却を目指して事業構造の転換にチャレンジ

▲樹脂サッシや住宅建材などでみかけるこうした部材は、押出成形の特性が活かせる製品だ

「押出成形」専業企業のことを、業界では“樹脂屋”と呼ぶ。東穂は、昭和37年の創業時から半世紀余、文字通り押出成形一筋に技術を磨き続けてきた企業だ。

押出成形とは、加熱して溶かした樹脂等を、スクリューで押し出して金型に流し入れ、断面形状が一定の製品を連続的に成形する製法のこと。押し出された樹脂がにょろにょろと出てきて、水槽の中で固化する様子は、まさに「プラスチックのところてん」という形容通り。生産される製品は多彩で、水道ホースや電線保護管、樹脂サッシのレールやパッキン、弱電製品の部品など実に広範囲だ。

東穂では創業以来、弱電部品等の量産品市場で売上を伸ばしてきた。しかし、円高やリーマンショックが度重なり、取引先の海外移転が加速して価格競争が激化。「気が付くと、資本力のある海外工場には太刀打ちできない、厳しい経営環境に追い込まれていました」と國本氏は語る。
「大手家電と取引している頃は、うちはいい仕事をしているんだと、錯覚をしていました。でも実際の所は、価格決定権のない下請企業でしかない。いつまでもこんなやり方を続けていては生き残れないと気付きました。それが2006年頃、そこから弊社の変革と挑戦が始まりました」

成功する秘訣は、成功するまで諦めないこと

國本氏はまず、「価格競争に巻き込まれる量産品市場は捨てて、自分たちだけにしかつくれない付加価値の高いオンリーワン市場を開拓しよう」という目標を掲げた。

「まだ世の中にはない“おもろい製品”を開発して、最終的にはそれを知財化する。そうした高い技術力を持つオンリーワン企業に成長するためにも、ISO9001認証を取得しようと取り組んだのです」

國本氏は社員に向けて「脳に汗をかいて、付加価値の高い製品を開発して、自分たちで値決めができるメーカーになろう」と号令をかけ続けた。顧客ニーズをキャッチするために、客先を訪問してヒアリング活動を行い、お悩み事を聞き出しては、自社技術で解決策を提案する作業を繰り返した。同時に國本氏は社員に向けて、「情熱と執念があれば絶対できる」「成功する秘訣は、成功するまで諦めないこと」といった熱い言葉でチャレンジの重要性を説き続けた。

「疑問と好奇心をお客様にぶつける、開発型の営業を徹底させました。すると、弊社の押出成形技術の蓄積から、課題解決できる製品が次々に誕生するようになったのです」

そのひとつが、近年急速に普及しているLED照明用の「ポリカーボネートカバー」である。LED照明の弱点は、光がまぶしい割に照明器具直下以外の場所は暗いという光の直進性にある。同社が開発したカバーは、光拡散剤を加えた素材で成形した上で、カバー内側をローレット加工するという合わせ技で、光の拡散効果を劇的に高めた。

この製造技術は、問題なく特許として認められ、LED照明の分野から共同開発のアプローチがあり、商品開発と権利化を達成、そして権利譲渡につなげて売り上げに貢献できた。まさに、國本氏が思い描いた通りの事業展開が回りはじめた瞬間であった。

「こうした成功体験は、研究開発スタッフのモチベーションをさらに高め、次々に『ちょっと変わった、おもろい製品』が誕生していきました」

例えば、両面テープなしで仮止め作業ができる粘着エラストマー同時押出成形品は、電設工事や住宅建築などの現場で、作業効率化に大いに役立っている。これを書類のバインダーとしてデザインした「ねんちゃクリップ」なるアイデア商品も登場した。こうした製品は、粘着性素材と弾性樹脂素材を同時に押出成形するという、同社独自の高度な技術を背景に権利化を達成、商品化を進めている。

5年かけて開発に成功した新素材の膨張性防火材

数々の自社製品の開発に成功し、特許ビジネスに活路を見出してきた國本氏が、最も印象深いプロジェクトとしてあげたのが、熱膨張防火材「火防」(ひぶせ)である。

国交省認定の防火窓をつくるには、サッシの中に高性能の防火材を充填する必要があり、それまでは、大手化学メーカーの防火材が市場と周辺特許を独占していた。しかし、製品がシート状で短尺、使い勝手が悪い。そこで、同社が5年の歳月をかけて培った技術により開発したのが膨張性黒鉛を素材にした「火防」である。この開発には、自社技術と極めた知財力で、独占市場に打って出て達成したもので、このことから、改めて壁は乗り越えられる事を実感できた。
「膨張性黒鉛とは、へび花火の原料と同じ。燃やすと膨らむ性質なので、防火材に最適。大手メーカーが特許を抑えている原材料群を回避して、この素材にたどりつくまでが大変でした。何百通りもブレンドを試して完成した製品が、摂氏700度で20分以上耐えるという性能試験をパスした時の感激は忘れられません。長尺製品にするには押出成形がぴったりですから、ユーザーの利便性を向上させる製品をどんどんつくっていきたいと考えています」

時代が求める「おもろい製品」を追い求める國本氏が、次の研究テーマとして狙っているのは炭素繊維だ。

「時代の趨勢は、軽量化されていて省エネだけど強度がある素材に向いている。それが炭素繊維だと思います。新連携等の枠組みを活用しながら、海外メーカーとコラボして研究開発できればと考えています。押出成形の世界は、間口は狭いが奥行きが深い。まだまだ困り事が潜在しているので、『なんでも押出成形でやってみる精神』でこれからもチャレンジします」

MOBIO担当者より

工場内には日本地図が逆さにかけてあり、新しい視点で「頭で汗をかいて勝とう!」が國本社長の方針。他社にない小型押出し技術をいかした「ちょっと変わったおもろい品」開発への変革と挑戦に拍車がかかっていました。(兒玉)

取材日:2015年2月17日(火) ライター:三浪 伸夫

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