ものづくり中小企業の変革と挑戦を支援しているMOBIOでは、MOBIO 常設展示場出展企業様・インキュベートルームの入居企業様の「 変革と挑戦 」について、取り組みのきっかけ(背景)、 具体的な内容などをインタビューしご紹介していきます。ここにはヒントが沢山詰まっているはずです。 じっくりお読みください!
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金型技術の付加価値をフル活用するべくメーカーになる!
株式会社日清精工 代表取締役 岩谷 清秀 氏
会社名 | 株式会社日清精工 |
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住所 | 〒577-0835 大阪府東大阪市柏田西 1-11-2 |
電話番号 | 06-6727-3717 |
代表者名 | 代表取締役 岩谷 清秀 氏 |
設立 | 1971年(昭和46年) |
事業内容 | プラスチック用金型 (弱電、家電、医療雑貨、自動車、アミューズメント) ダイキャスト用金型 |
切削でシボ金型を作る技術を開発
株式会社日清精工は、1971年に現代表取締役である岩谷清秀氏の父親が創業し、プラスチック用金型製作を中心に、ダイカスト用金型製作などを行う企業だ。岩谷氏に現在の業界状況についてお伺いした。
「インターネットが普及し、世界中の金型屋と競合しています。中国などは、昔は『安かろう悪かろう』の世界でしたが、今はそうも言えません。しかも業界全体の仕事量が5~6年前に比べると減っています」
そうした環境下で新たな活路を見いだすべく、金型製作の周辺業務を精査した結果、ある技術に目をつけた。
「オンリーワンな技術を作りたいという想いがあって、シボ加工に目をつけました。従来は、シボ加工屋が化学処理で腐食させてシボ加工を生み出していたのですが、それを金型技術で培った3DCADと切削でシボ加工を表現しようと」
経営革新に認定も受けたこの技術『デジタルフリーデザイン(以下:DFD)』は見事開発に成功した。
実績を作るために「メーカーになる」ことを決意
『DFD』を広めることが新たな売上の柱になると考えた岩谷氏。だが、営業先では新しい技術の導入には実績が必要だと言われて苦悩する。
「実績作りが一番難しい。最終的には、実績は自分たちで作らないとしょうがないと考えて自社製品を作る決断に至りました。そうして生まれた初の自社製品が『つけまつげケース』だったんです」
最初は、決して望んで自社製品開発に着手したわけじゃない、と語る岩谷氏。それでも開発途上では、女性スタッフとともにショッピングモールへ出向いて約200人の女性にヒアリング調査を行うなど、消費者ニーズも調査しながら商品を完成させた。そして第二弾として、コンタクトレンズとつけまつげをセットで保管できるケースを開発。こちらは現在も東急ハンズで販売されている。
「金型製作はもちろんですが、商品企画から製造、パッケージデザイン、販路開拓と、一連の流れを自社で構築しました。こんなことをやっている金型屋はないでしょうね(笑)」
まだ先行投資の段階だと語る岩谷氏。ここまで岩谷氏を『メーカーになること』に駆り立てる要因は何なのだろうか。
「商品を作るのに一番お金が掛かり、品質のキモとなるなのは金型なんです。我々はそこを一番安く、最も高品質なものを作れる。だからメーカーになるのは必然なんです」
変革と挑戦に必要なのは“危機感”と“勇気”
メーカーになる挑戦を続けることで“新たな芽”が生まれた。『DFD』とコラボしたいという企業の出現だ。
「ある企業から、『DFD』と相手先企業が持つインクジェット印刷の技術をコラボレーションさせて新しい商品を作る提案があり、生まれたのがiPhoneケースです。今後は出展する展示会なども選びながら、商品をアピールしていきます」
もちろん本業である金型製作も変わらず力を入れていく。
「新しい技術を吸収しつつ、金型製作の強みを十分に生かす方法を模索していきます。現在のベストな方法はメーカーになることなのですが、もっといい方法があるかもしれません。前向きに未来を見ていきたいですね」
『メーカーになる』という変革を貫いた岩谷氏。その原動力は何だったのだろう。
「危機感ですね。冷静に自社分析して危機感を感じたからこそ、勇気を持って動けたんだと思います。当社にとってメーカーになることは決して夢ではなく、強みを生かして生き残るための現実的な戦略なんです」
金型事業の足もとを固める方法もあるが、何か今までとは違う行動を起こす必要を感じた、と語る岩谷氏。
「今後の目標は、iPhoneケースの製品バリエーションを増やし、メーカーとして収益構造を確立させること。そしてもう一つ、当社には2名のベトナム人が働いています。彼らの成長を後押ししながら、将来的にはベトナムでものづくりができれば、なんて考えています」
取材日:2012年12月25日(火) ライター:中直照((株)ショートカプチーノ)
MOBIO担当者より
固有の金型製造技術があるからこそユーザーの声を活かした製品メーカーへの大変身が可能。 しぼ金型製造からつけまつげケース製造への第一歩を踏み出せたのは「やってみるか(MILCA)」精神の岩谷社長の率先垂範力。指導者として次の一手を打つことの重要性をお聞きした取材でした。(担当:兒玉)