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MOBIO入居企業・常設展示場出展企業のスペシャルインタビュー

ものづくり中小企業の変革と挑戦を支援しているMOBIOでは、MOBIO 常設展示場出展企業様・インキュベートルームの入居企業様の「 変革と挑戦 」について、取り組みのきっかけ(背景)、 具体的な内容などをインタビューしご紹介していきます。ここにはヒントが沢山詰まっているはずです。 じっくりお読みください!

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IH対応技術を武器に外食産業のニッチ市場を征圧

株式会社オーシン 代表取締役社長 藤田 剛 氏

株式会社オーシン
代表取締役社長 藤田 剛 氏

会社名株式会社オーシン
住所〒578-0905 大阪府東大阪市川田2-5-25
電話番号072-964-1112
代表者名代表取締役社長 藤田 剛 氏
設立2003年(平成15年)
事業内容厨房用ワークシューズ
IH対応厨房機器
アルミ二次加工製品

ワークシューズ・厨房機器・アルミ加工の3事業で躍進

製品用に加工されたカーボン

株式会社オーシンの創業は、明治40年(1907年)。藤田社長の義祖父が、中国大陸で満鉄相手の商売を始めたのがその前身。戦後、祖父から経営を引き継いだ先代社長(藤田氏の義父)は研究開発好きのアイデアマンで、防水に優れ滑りにくい厨房靴「ラブクック」を開発し、35年続くロングセラー商品に育て同社の礎を築いた。

先代社長は、その後次々と新たな商品開発を成功させることで事業領域を広げ、現在の(1)ワークシューズ(2)厨房機器(3)アルミ素材・加工品販売―の3事業体制を構築した。なかでも、「IH(電磁調理器)対応土鍋」を主力商品とする厨房機器事業は、同社の中核事業へと成長した。
そのIH対応土鍋は、大手居酒屋チェーンからの依頼に答えて1999年に開発されたものだが、現在のカーボン方式にたどり着くまでが一苦労だった。最も簡便な方法である、土鍋の中に直接発熱金属板を入れる方式は、客商売の飲食店ではNG。鍋底に金属板を取り付ける方式は、土器と金属板の熱膨張率が違うので、加熱すると外れたり、反りが入るトラブルが起きやすい。 鍋底に極薄の銀転写膜を貼り付ける方式は、耐久性の面で業務用としては使いにくい。

「そこで先代社長が考えついたのが、土器と熱膨張率がほぼ等しいカーボン(炭素製品)を発熱体として鍋底に接着する方法です。カーボンは電磁誘導反応が高く、熱伝導性にすぐれ、高温にも強い。こうして完成したカーボン発熱体を使ったIH対応厨房機器は好評を博し、外食チェーン店を中心に次々に新たな飲食業態へと採用されていったのです」。

プロ厨房現場の難題を解決してきた“技術力”が最大の武器

藤田氏がオーシンの社長に就任したのは2009年のこと。それ以前は、テレビのCMディレクターをしていたのだが、義父の他界により急遽事業を継承することになった。「まったく畑違いの製造業への転身で、東大阪の土地勘もない、まさに絵に描いたようなムチャぶりでした」と当時を思い出して苦笑する藤田氏だが、“異邦人”らしい新鮮な視点と柔軟な発想で、同社を大きく変貌させていく。

社長就任当時、藤田氏がまず考えたのは、主に業務用として製造していたIH対応厨房機器を、家庭用として拡販しようという戦略だった。「マジカルどなべ」の商品名で東大阪ブランドの「オンリーワン製品」にも認定されたのだが、当時は不景気のどん底。いくらIHで使えるとはいえ、1万円以上もする土鍋など、そう簡単には売れない。どうしたものかと迷っていた矢先、MOBIO主催の研修会に参加して、自社の最大の武器に気付く。

「うちの強みは業務用厨房の現場から寄せられる、あらゆる注文に対応してきた技術力。東大阪のものづくり企業に共通する“どないかしましょ精神”が最大の武器です。プロ厨房に特化したソリューションビジネスを展開する方が、我々の特長を発揮できると思い、業務用市場へと戦略を再度シフトしたのです」。

新たな業務用商品の開発には、市場調査やマーケティングが欠かせないが、同社には不要。営業担当者が行く先々で聞いてくる厨房現場の悩みが、そのまま商品開発のヒントになるからだ。

「中小企業が背伸びをして量販市場を狙うと、たいてい失敗します。中小企業は、大企業が手をつけたがらない、小さなニッチ市場に特化して市場を占有していくのが鉄則。その点、このカーボン方式のIH対応厨房機器は、製造工程が職人による手仕事中心で、量産体制には乗りにくい。まさに、技術力を武器に小さな市場で勝ち残っていく、我々のような中小製造業にぴったりの商品だと気付きました」。

喜多俊之氏とタッグを組んで“デザイナーズ土鍋”を商品化

喜多俊之氏デザインの「クックポット」

業務用に特化して以降、商品開発はますますスピード感がつき、機器の種類も拡充されていった。土鍋、パスタプレート、軽量ステーキ皿、つけ麺鉢、溶岩焼プレート、ビビンバ石鍋、IH専用加熱プレートなどの新商品が次々に誕生。納入先は、大手ファミレス、ステーキチェーン、うどんチェーン、牛丼チェーン、パスタ専門店、チゲ鍋専門店、鍋料理店、焼き肉店、麺料理店など、猛烈な勢いで広がっている。

「業務用の市場に特化していったおかげで、工場に繁閑の差がなくなり、1年通して仕事が入るようになりました。変革と挑戦による最大の成果は、この受注の増加と平準化です」。

ターゲット市場が明確になった同社では、外食産業関係者が集まる展示会を狙って積極的に出展を行っている。また、「ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金」に応募して対象企業に採択されるなど、次の戦略商品開発のための研究開発にも余念がない。

藤田氏は現在、東大阪ブランド推進機構の理事としても活躍中で、東大阪のブランドイメージを形にしようと、仲間と議論を重ねている。その間、同機構のデザインクラブで知り合ったのが、世界的な工業デザイナーの喜多俊之氏だ。意気投合した両者は2010年に、喜多氏のデザインで、ガスコンロでもIHでも調理できる洗練されたデザインの調理機器「クックポット」を商品化した。シンプルでモダンなデザインは海外の見本市でも好評を博し、フランスを始め欧米諸国へ販路を広げつつある。

東大阪のニッチな技術が、世界の市場にどこまで食い込むことができるのか、今後の取り組みが気になるホットな企業だ。

MOBIO担当者より

「ないなら作ればいいじゃないか」の視点で積極的に市場の声を吸い上げ、IH対応業務用厨房器具で市場NO.1の(株)オーシン様。涼しい調理場作り、蓄熱調理可能な調理器具の開発には、これからも藤田社長の顧客第一主義が活かされるとみえました。(兒玉)

取材日:2013年8月27日(火) ライター:三浪伸夫

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