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人とのつながりで生まれた子ども用介護肌着が起こすイノベーション

成功のツボ

挑戦:アパレル総合卸業から子ども肌着へ特化、子ども用介護肌着の開発と製造
成果:産学コラボによる認知の拡大、自社サイトと新ブランドの立ち上げ

ガロー株式会社は創業50年を越える子ども肌着専門メーカー。一通のメールをきっかけに子ども用介護肌着の開発に取り組むように。「Ai-SPEC 2016」では、武庫川女子大学とともに取り組み、優勝を果たした。

生き残りを賭けた選択と集中で子ども肌着専業の道へ!

入院中や寝たきりの状態にある子どもの看病をしている親たちから「子ども用介護肌着」が喜ばれている。着用している子どもたちが快適で、看病する親の手間を軽減する様々な工夫が施されている機能性バツグンの肌着。それに加えて、従来の介護肌着にはなかったデザイン性の高さも大きな特徴だ。その子ども用介護肌着を開発し、多くのお母さんたちに喜ばれているのが、ガロー株式会社である。

常にイノベーションと進化を考える、代表取締役の堀田泰弘氏

1964年に創業された当時はインナー、アウター、レディース、メンズ全般を扱う総合卸業であった。現在、代表取締役社長である堀田泰弘氏は、ガロー入社前に6年間在籍した大手商社で扱っていた子ども用肌着を、ガロー入社後に導入し取り扱うようになった。しかし、2001年秋、取引先の大手販売会社が2件続けて倒産。このままの総合卸業を続けていては生き残ることができないと痛感した。紳士肌着はメーカーに負けてしまう。婦人はアパレルブランドが強い。ならば社内でも売上比率が比較的高い子ども肌着はどうか? これなら生き残れるかもしれない。堀田氏は選択と集中で子ども肌着に特化した事業形態に大きく舵を切った。

一通のメールから始まった子ども用介護肌着への挑戦

卸業と並行して自社のオリジナル製品を開発、工場にオーダーを出して製造するメーカーとしての一面を持つようになった。そんなある日、堀田氏のもとに一通のメールが送られてきた。それは脳性麻痺で寝たきりの子どもの看病をしているお母さんからのものであった。そこには「子ども用の介護肌着は白色のものばかり。子どもに可愛い肌着を着させたいので、どうか作ってください」と、子を想う母の願いが綴られていた。ちょうど社内で何かイノベーションを図ろうと考えていた堀田社長は『ベッドでも着替えやすいアンダーウェア開発計画。』をプロジェクトとして立ち上げ積極的に動き出した。
まず、丹波にある同社物流センターに勤務する主婦のパート社員50名に母親目線のアイデアをリサーチ。自分たちの子どもが病気やケガで入院した時のエピソードや、実際に周囲で困っている知人の話をベースに、コンセプトや実装する機能などを考え、開発を進めていった。ベビーにはあるが子ども用にはなかった「前開き」、高熱の際に大きな血管が通っている腋の下を冷やすための「保冷剤ポケット」、肌着を脱がなくても検温ができる「体温計差し入れ口」、掛け違いを防ぐための「配色を交互に変えたボタン」、肌に刺激を与えない「タグの外付け」など様々な工夫を凝らした。もちろん、メールに書かれていた「可愛い介護肌着」を作るための、子どもたちが喜ぶ柄のデザインはガローが得意とするところ。こうして可愛くて機能的な子ども用介護肌着が開発された。

保冷剤ポケットや体温計差し入れ口など、介護をする親御さんたちのことを考え工夫された機能を多数持つ子ども用介護肌着

発売当初は、販売見込み数が全くわからなかったため、サイズを110、130、150の3つに絞り、かなりの少量生産で販売をスタートした。ところがすぐに完売。中には洗い替えとして一度に5着ほど購入されることもあった。完売後も少量生産し売り出すと、それもすぐに完売する。それを何度か繰り返すうちに、子ども用介護肌着で困っているユーザーが、自分たちの思っている以上に多いことに気づいた。その後も、積極的にバリアフリー展に出展し、そこで知り合った団体や障がいのある子どもの親の会などと、意見交換やアドバイスをもらうような交流を深めていった。その中で団体の方から「障害を持つ子どもはおむつをしているので、前開きのロンパースタイプは絶対に実現してほしい」という意見を受け、希望の柄をデザインした介護肌着を卸の形で一括提供した。「いつもベストだと思って出しているが、手探りの中で常に改良を加えていっている。展示会で出会った方々とは今でもやり取りをさせてもらっている。こうした繋がりを地道にひとつずつ作っていきたいと思っている」。

武庫川女子大学とのコラボで優勝した「Ai-SPEC 2016」

ミーティングとリサーチを何度も重ねて「Ai-SPEC 2016」に臨んだ武庫川女子大学情報メディア学科の大森ゼミの皆さん

ガローの子ども用介護肌着は徐々に知名度を広め、2015年12月には、『ベッドでも着替えやすいアンダーウェア開発計画。』が大阪府から「中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律(新事業活動促進法)に基づく経営革新計画承認企業」に認定され、28年度には子ども用介護肌着が「大阪府・新商品の生産等による新事業分野開拓事業者認定事業」の認定商品に選ばれた。そして2016年には近畿圏実践型課題解決プロジェクト「Ai-SPEC 2016」にて、武庫川女子大学情報メディア学科の大森ゼミとタッグを組み、介護肌着の市場調査とそれを反映した商品企画に取り組み、見事優勝を果たした。
学生メンバーは武庫川女子大学看護学科の教授や病院関係者、さらには西宮養護学校や学校PTAなどにヒアリング、インターネットを使ったアンケート調査を実施し、その結果をフィードバックした新たな商品として、おしゃれで可愛い「ロンパース」と「スタイ」の提案を行った。ロンパースの袖をチェック柄にし、スタイもベビーの印象をなくしたバンダナ風のデザインに。大森ゼミからはまた次年度も連携をと意欲的なコラボレーションを希望されている。
また武庫川女子大学との取り組みと並行して、2016年9月から2017年6月までMOBIOの施策の1つである「新分野・ニッチ市場参入事業化プロジェクト支援事業」による支援を受けたことも、その後の事業展開における追い風となった。バリアフリー展への出展についても同事業のプロジェクトマネージャーからのアドバイスを受け、出展にタイミングをあわせたプレスリリースを行ったところ、武庫川女子大学と共同開発した商品が計6紙に取り上げられた。その結果、新聞記事を見て来場した障がい児支援団体関係者と接点ができ、その後の共同商品開発にもつながるなど、大きな成果を得ることができた。エンドユーザーからダイレクトにニーズ把握できるメリットを今後も活かしていくそうだ。

革新を常に考え実行する。それはこれからも変わることがない

兵庫県丹波市の物流センターに勤務するパート社員の皆さん

堀田氏は常にイノベーションと進化を意識し、リサーチしたものを取り入れて工夫と改善を重ねている。それは商品展開だけではなく、従業員が働く環境にも向けられている。特筆すべきは、2014年に行われた丹波物流センターの新築である。コンセプトは「女性が安心して働ける環境づくり」「地元で働く女性を元気にしたい」で、それまで男性的で粗野な印象が強かった物流センターの内装やイメージを一新することにした。新築の際に堀田氏は、設計を担当した友人と「パートさんを主役にした物流センターにしよう」と決め、白をベースに赤をテーマカラーとしたデザインに。また一般的に物流センターには来客がほとんどないにもかかわらず、パート社員は正門ではなく裏口から出入りする決まりになっていた。それも改めて裏口をなくし、来客も従業員もみんな同じ正門から出入りするようになった。
同社ではこれまで、国内だけではなくアジアの市場を見据えた展開を考え、子ども用介護肌着が開発された当初からネット通販での卸売だけでなく、Amazonや楽天での自社出店による販売も展開してきた。しかしそこには制約も多く、購入者が喜んでくれるような独自のサービスを自由に提供することが困難であった。
そのため、止まることのない堀田氏のイノベーションは、WEB上でもさらに展開されようとしている。それが自社の直販サイト「TOKYO KiD」である。
Amazonや楽天のようなオンラインモールだけでなく、初めて完全な自社直販サイトの構築に踏み切ったのだ。堀田氏は「自社の販売サイトがあることでお客様と今以上に近づくことができる。ガローと関わる人全てに喜んでもらいたい」と力強く語る。現在、新サイトの展開に合わせてインターネット専用の商品も増やしてきており、さらには量販店用の物流センター以外にインターネット専用の物流センターを建設する予定もある。楽天での販売サイトを担当しながら、直販サイト「TOKYO KiD」のレイアウトも制作している担当者は「量販の営業さんとよく話をしていて、EC(ネットショップ)は量販とニーズが少し違うなという印象を持っています。売れるサイズも違う。そういうところからECでの人気商品を作っていきたいと思っています。またECでは直接お客さんから意見をもらえるので、そういうところも含めてお客様の使いやすいサイトを制作していきたい」と意気込む。
製造卸業者として黒子的に縁の下を支え続けるガローが、これからはそれに加えて「TOKYO KiD」で「ガロー」ブランドの子ども肌着を前面に出していく。

ブレイクタイム

Q

子どもの頃はどんなタイプでしたか?

A

自分で言うのもなんですが、ずっとマジメでした。先代の社長が父親なので、生まれた時から問屋の子どもです。父は私が勉強していい会社に入ると継がなくなると考えたのか、勉強しなくていいから丁稚に来いとずっと言われてきました。私の子どもには、継がなくていいから、すべて自分で考えて決めなさいと言っています。

Q

趣味はなんですか?

A

ゴルフです。毎週休日を使って年間で60回ほど行っています。元々やっていましたが、大手商社勤務時代の24歳の時、得意先の部長にコテンパンにやられ、それから必死で練習するようになりました。もう32年やっています。ベストスコアは67。

企業概要

企業名
ガロー株式会社
コア技術
子ども肌着の製造卸
代表者
代表取締役 堀田泰弘
住所
大阪市中央区瓦町4丁目5番3号
電話番号
06-6231-9851
企業HP
http://www.garo-net.co.jp/
資本金
6,000万円
従業員数
75名(パート45名)

認証:経営革新計画承認企業、大阪府・新商品の生産等による新事業分野開拓事業者認定事業

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