受注型から提案型へ。イノベーションを生み出す試作の場。
挑戦:MOBIOワンストップサービスの活用
成果:大手企業との案件成立、「大阪ものづくり優良企業賞2016」受賞
時代の変化に追随、適応できる企業となるために、持続的に設備の充実を図り、「クオリティ・スピード・コスト」の三拍子揃った高付加価値製品を創造、提供する。
MOBIOとの「運命の出会い」から、スピーディーな快進撃が始まった。
すべてはタイミングというべきか、それも運というべきか。西村製作所の専務取締役・村井秋子氏がMOBIOへ出向いたのは昨年春のこと。試作品専門の加工業として創業して半世紀。これまで大手企業との取り引きで成長してきた同社では、将来を見据えて新たな出会いやビジネスマッチングを求めていた時期だった。
「これまで公的機関とはほとんど関わったことがなく、知り合いの紹介で出向いたのですが、とても丁寧に説明していただき、親身になって相談にも乗ってもらえました。正直、行政のイメージが覆されました。またその日、タイミングよくコーディネーターが在籍されていて紹介してもらえ、引き合いが少しずつ増えていきました」
その後もトントン拍子でMOBIOでの常設展示場用への出展も決まった。「これまでは試作中心ということで、あえて社名を打ち出してきませんでした。でもこれからの方向性を見定めるうえで、表に名前や技術を出すことで、“世の中で自社がどのあたりに位置づけられるのかを知りたい”という気持ちがありました」。そう語るのは代表取締役の幾留秀樹氏。夏には「大阪ものづくり優良企業賞」への申請もおこなっている。この情報を得たのは締め切りの7日前。これまで行政に提出するような資料を作成したことがなく、下地もまったくないゼロの状態から分厚いファイル一冊分にもなる資料を一気に作成した。「そこでも大阪府の方々の熱意によって自分たちにも火がついて。夜10時に送ったメールの返事が翌朝出社するともう届いていて。ここまでやっていただいたら、私たちも頑張らなきゃと思いました」(村井氏)
申請書類の作成は自社が保有する技術や設備を含め、思いがけずこれまでの仕事の洗い出しにつながった。暗黙知であったことを言語化することができ、非常に重要な体験となったと幾留氏は振り返る。「これまでの受注型から提案型への転身を考えており、そうなると自分たちの強みを表に出していかなければなりません。ですから技術の洗い出しをしながら、同時にそれを具現化するサンプルを定期的につくろうという声も、社内からも上がっていました。その延長線上に常設展示場への出展の話があります。ちょうど会社がやるべきことを見定めた時期と、MOBIOと関わりはじめた時期が合致してバックアップしていただいた形です」
それにしても出会いからのスピード感は素晴らしい物がある。「大阪ものづくり優良企業賞」の申請もそうだが、常設展示に関しても出展すると決めてから数週間後には製品ができあがっている。やると決めたら一気に突き進む、フットワークやスピード感、新しいことをはじめる時には不可欠な躍動感が、社内に満ちている。「MOBIOの担当者とフィーリングやタイミングがぴったりあった。この要因も大切だと思います。次の世の中を見たときに、うちの会社はこれから何をやっていくべきか?を話しながらも、ベクトルは同じところを向いていることを常に実感できていますから」(幾留氏)
秀でた技術力を持ち、最新設備も惜しまず投資。
「自社の技術がどこまで通用するかを試したい」。その発言の源には技術力へのプライドがある。西村製作所は、精密試作において、スピーディーな開発に定評がある。最近では板圧の違う異素材を溶接する技術も注目されている。「顧客に育てられながら今に至っています。顧客の要求に高い精度で応えること、すなわちスキルアップにつながってきました」(幾留氏)。試作品の世界は初めての試みの連続。できないことは当然ある。そのような状況でも、現場の担当者が知恵を出し合い問題を解決してきた。
そうして培われた技術力の要となる職人は10年以上の人が中心。なかには曲げなど、ひとつの技術に就いて20年という職人もいる。単一の加工技術だけで、それだけの経験を積んだ職人が班長やチーフとしてチームを牽引しながら、若手を育成していく体制も整いつつあり、少数精鋭を貫くために今後は多機能化を目指すという。ベテラン職人にして営業からプログラミングまで手がける社員も在籍。彼らもMOBIO-Cafeなどにもに参加している。今までずっと社内にいたので、他社製品に触れることは少なかったが、今では積極的に情報交換をおこない会社訪問もしている。
そういった技術を伝承しながら、同時に得意先から求められる複雑かつ高精度な要求に応えるために、惜しみなく設備投資をしてきた。中には国内で3台しかない希少なファイバーレーザー加工機を筆頭に、最先端の機器が揃えられている。高精度の板金技術・精密切削技術により、金属・樹脂などの加工課題を解決し、ひずみの少ないファイバーレーザーやYAG溶接による微細加工から広範囲な試作部品加工を可能にしてきた。
しかしこれだけの技術や設備がありながらも、大手メーカーの事務機器関係の試作を中心とし、単一企業へのレスポンスだけでやってきたため、自社の位置づけや技術レベルの物差しとなるものがなかった。それも「大阪ものづくり優良企業賞」の受賞によって大きな手応えを感じているという。「今までの私たちは、井の中の蛙でもあった。それが外に出て評価を受けて自社の位置づけがはっきりしたことで、社内のモチベーションも一気に上がったように感じます」(幾留氏)
「新生西村」が目指すべきは、「試作総合プロデュース業」。
就任して2年目を迎えた2016年を「リ・スタートのはじまりの年」と位置づける幾留氏。今は洗い出しを進めながら、次なる一歩を探っている。新生西村の2017年のキーワードとして、「スピード」「変革」「独自性の見直しと高度化」「勇気」「挑戦」「経験」をあげた。社内における強味と弱味の洗い出しをして再構築することで、新たな試みにチャレンジをしていきたいとも。現在はロスが出ているところを確認し、効率化を図ることを優先事項においている。
また、今後のテーマのひとつとして女性の働きやすい環境を整えながら、人材の発掘をする「女性の価値創造」をあげた。まずは現在3名の女性社員をもっと増やしていきたいと語る。男女を区別する意識がないのは、村井氏の存在がなによりも証明している。
産休・子育てを経て事務職のパートとして入社し、専務にまでキャリアアップできたのは、実力至上主義の同社ならでは。女性にとっても非常に魅力ある職場だといえるだろう。将来的な展望として、幾留氏の口から「総合試作プロデュース企業」という言葉が飛び出した。時代の変化を見据えて、自分たちが得意とするところを踏まえ、考えだされた方向性だ。内製も含め同社には精密板金、精密樹脂加工、精密ギア加工、精密機械金属加工という4つの加工技術がある。これはメカ部品の大半を占める加工技術を持っているということ。しかしひとつの技術の深堀りだけでは、今の時代を生き抜くことはできない。
レーザー、曲げ、絞りなどのバランスをしっかり把握したうえで、総合的に精度のある形づくりを具現化できる、それこそ自社の最大の「強み」。顧客の要求事項の変化をいち早くつかみ、技術構築、提案できるかがポイント。これを前に押し出していくことで、あらゆる試作のプロデュースができるはずだ。
休日はどのように過ごされていますか?
休日はリセットして頭の中を整理する日と位置づけています。紀伊國屋書店に出かけ本を購入したら、喫茶店で1時間ほどブレイク。常に仕事のことで頭がいっぱいなので、立ち止まって整理する日をつくらないとひらめきも生まれませんから。〈幾留氏〉
小さい頃はどんな子どもでしたか?
親が転勤族だったので、10歳まで4~5回転校していました。だからいつもアウェイ環境。そこで学んだことは「自分が心を開かないと、相手も心を開いてくれない」ということです。それとサッカー少年だったったことも、友達づくりに役立ちました。〈幾留氏〉
のんびりとした性格で兄妹とも友だちもケンカした記憶がないんです。それは自慢ですね。これでもせっかちになったほうで、子どもの頃は、今よりもっとおっとりした子でした。〈村井氏〉
企業概要
- 企業名
- 株式会社西村製作所
- コア技術
- 精密試作板金・樹脂・金属切削加工及び異素材溶接加工
- 代表者
- 幾留 秀樹
- 住所
- 大阪市平野区加美北9-11-8
- 電話番号
- 06-6794-8223
- 企業紹介
- http://www.m-osaka.com/jp/exhibitors/448/
- 企業HP
- http://www.nishimura-seisakusyo.jp/
- 資本金
- 5,000万円
- 従業員数
- 26名
認証:「大阪ものづくり優良企業賞2016」(平成28年度)、2006年 第18回優秀板金製品技能フェア【技能賞】受賞