『第5回医療機器開発・製造展』MOBIOブース出展企業の紹介
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医療分野におけるGUMMETALの可能性が実感できた展示会
株式会社丸ヱム製作所 石本謙一氏/山本直訓氏/小西康介氏
展示会参加メンバーの3人が手にしているのがGUMMETAL製歯列矯正ワイヤ。右から執行役員の石本氏、メディカル営業チームの山本氏、企画開発チームの小西氏。
会社名 | 株式会社丸ヱム製作所 |
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住所 | 〒574-0015 大阪府大東市野崎4-7-12 |
電話番号 | 072-863-0103 |
代表者名 | 代表取締役社長 松元 收 |
設立 | 1951年(昭和26年) |
事業内容 | 各種ねじ(ステンレス、エンジニアリングプラスチック、マグネシウム合金、チタン合金、金属ガラス等)、金型・工具、医療機器、パーツホーマー |
GUMMETAL製品を展示訴求し、3つのねらいを掲げてMEDIXに参加
ステンレス製ねじで国内トップクラスのシェアを誇る丸ヱム製作所は、技術開発力でも業界で群を抜く存在。とりわけ、加工が難しいマグネシウム合金、金属ガラス、エンジニアリングプラスチック、チタン合金 といった素材を使った“新素材ねじ”の開発では、世界を驚嘆させる新製品を次々に世に送り出している。
そんなイノベーション精神から生み出された新規事業のひとつが医療分野。今回のMEDIXでは、GUMMETAL製の歯列矯正ワイヤを展示訴求した。GUMMETALとは、柔らかくしなやかでありながら、高強度で腰が強いという優れた特性を持っているチタンの新合金だ。
これまで歯列矯正の治療で一般的だったNi-Ti(ニッケルチタン)製ワイヤなどは、歯の動きをコントロールするさまざまな力を一度に加えることができないため、治療進捗段階に応じて、太さや種類を変えた新たな成型ワイヤをつくらなければなかったが、GUMMETALは何度も変形加工ができ、必要な力を全てワイヤに加えた状態で装着できるため、その後のワイヤ交換・調整が不要となり大幅な治療期間の短縮を可能とした。
しかも、弱い力がずっと歯列にかかり続ける弾性を持っているおかげで、患者さんに激しい疼痛を感じさせないやさしいで材料であり、Ni(ニッケル)などが含まれないためアレルギーが起こりにくい。まさに、歯列矯正治療をイノベーションする画期的な治療器具として、いま歯科医師の間でも注目を集めている次世代ワイヤなのだ。
展示会チームのリーダー石本氏は、「今回の出展のねらいは3つありました」と説明する。
「まずは、製造業の丸ヱム製作所の存在を知ってもらうこと。次に、GUMMETALの特性を訴求することで、新たな用途展開のきっかけがつかめればと考えました。3つめは、弊社が保有するマグネシウム合金などの加工技術を知ってもらい、医療分野における新たな製品開発につなげたいというねらいを持って展示に取り組みました」
製薬会社や大学研究機関から新たなオファーを受ける
新規市場の開拓を担当するメディカル営業チームの山本氏は、「歯科医の業界ではGUMMETALワイヤの存在はそれなりに認知されていて、『これが実物か』と興味を示す方が少なからずおられました」と当日の様子を説明する。
「『おたく、ねじの会社なの。それがなぜ医療分野に?』と素朴な疑問をぶつけてくる方が多かったですね(笑)。すかさず、弊社の伸線技術だからこそGUMMETALのワイヤ加工が可能になったと説明すると、なるほどと感心してくださいます」
そうしたオンリーワン技術に興味を持った大手製薬会社と連携し、現在、同社の商品開発チームが新商品ができないか、知恵を絞っている最中だ。
スタッフとして参加した若手の小西氏も、医療分野におけるGUMMETALの可能性を、展示会場で実感したひとりだ。
「主催者のホームページなどを事前にチェックして、弊社のGUMMETALワイヤめがけて来場されるお客様も何人かおられました。『実物を見て、詳しい説明を聞きたい』ということだったのですが、新素材としてのGUMMETALが、医療業界で注目されていることをあらためて実感しました」
こうしたGUMMETALの可能性に注目している大学などの研究機関からも、今回の展示会を通じて、「研究開発に協力してほしい」というオファーがあった。「大学の研究機関や製薬会社など、実際のビジネスチャンスが得られたので、今回の出展参加は大いに成果があがったと感謝しています」と石本氏も満足気だ。
今後、医療専門展へ出展するために新商品開発に注力
会期中に名刺交換できたのは、医療、製造業、自治体、研究機関など百数十社余り。そのうち10件ほどの相手には、後日アポをとって商談に結びつけることに成功した。「全体の1割ほどのお客様と後日面談できたのですから、効率の良い展示会だったと思います」と石本氏は評価する。
「医療関係の展示会は出展料が高いし、実際に効果が上がるのかわからないので、二の足を踏んでいたのですが、今回MOBIOさんの支援で思いがけず参加でき、中小企業としては本当にありがたい企画でした。こういう専門展には、ターゲットとする医療関係者がちゃんとご来場くださるというのがよくわかったので、次の出展に向けて自信につながります」
今回の出展で手応えをつかんだ同社では今後、「医療分野の展示会にも積極的に参加していきたい」と意欲を見せる。ただ、「GUMMETAL製品だけでは弱いので、あと1本、何か柱となる商品がほしい」と模索を続けている。
そのため、2013年11月に大東本社に竣工した、医療分野製品の研究開発拠点「M+Hテクノロジーセンター」で、専属スタッフがいま商品開発に意欲的に取り組んでいる。GUMMETAL製品に続く、次の“スター商品”がいつ誕生するのか、今後の成り行きに注目したい。
取材日:2014年8月6日(水) ライター:三浪伸夫