中小企業総合展2013 in Kansai 出展企業の紹介
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ビジネスの新たな可能性をさぐるきっかけに
大一鋼業株式会社 営業 野上 広之 氏
「品質とアイデア、商品ラインナップには自信があります」と力強く語る野上氏。
会社名 | 大一鋼業株式会社 |
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住所 | 〒577-0815 大阪府東大阪市金物町3-11 |
電話番号 | 06-6723-0787 |
代表者名 | 代表取締役 高橋由紀子 |
設立 | 1936年(昭和11年) |
事業内容 | キーホルダー フック |
家庭用金物のロングセラー商品を持つ老舗メーカー
色違いで並ぶシンプルな名札型キーホルダー。誰もが一度は目にしたことがあるはずだ。宿泊施設やロッカーなど、たくさん鍵を使う場所では必ずと言っていいほど使われているこの商品。大一鋼業株式会社の“マーキー”ブランドのキーホルダーだ。大一鋼業の創業は1936年。大阪市天王寺区での金物商店から始まり、現在は東大阪市金物町でフックやキーホルダーをはじめとする家庭用金物のメーカーとして、製造・販売を行っている。
「通常、この業界の商品は約5年ほどのサイクルで入れ替わると言われています。その中で弊社は、ロングセラー商品が強みです。例えばこの“マーキーシリーズ”は弊社を代表する商品の一つですが、実は40年ほど前に開発された商品なんです」と語るのは、営業・野上広之氏。
多くの歴代商品が並ぶビルの一室から選んで見せてくれたのは、発売当初の“スッポンフック”。粘着材を熱で溶かして貼り付けるこのフック商品も“マーキー”と同じく歴史のある大一鋼業を代表する商品だ。両商品ともに、現在まで少しずつ進化しながら、絶えることなく市場から求められているという。
大一鋼業の商品力の源は商品企画会議だと語る野上氏。月に一度のこの会議には、社長をはじめとする全社員に加えて、外部の専属プロダクトデザイナー、工場のスタッフが一同に会し、商品について話し合うという。
「企画会議ではいろいろなことを話し合います。小売店や販売会社の方々から提案いただいたものの検討であったり、社内での新提案だったり。新入社員も含めたいろいろな立場のスタッフが、思ったことを率直に発言できる雰囲気の会議であるようにと、社員みんなが心がけています。明るく風通しのいい社風が、よりよい商品作りにつながると考えています」。
朗らかで気さくな雰囲気ながら一言一言を真剣に話す野上氏自身からも、大一鋼業の社風が伺えるようだ。
異業種との出会いを求めて中小企業総合展に出展
今回の展示会への参加は、野上氏が常設ブースの展示を入れ替えるためにMOBIOを訪れたことがきっかけだった。
「MOBIOの方が“出展してみませんか?”と声をかけて下さったんです。展示会まで時間もなかったので、事前勉強会には一度しか出席できなかったのですが、MOBIOのスタッフのみなさんが、“補習授業”をして下さったり、“宿題”を提出したりして、他の参加企業のみなさんに追いつくようにがんばりました。きめ細かく対応して下さるMOBIOのみなさんには感謝しています」。
勉強会に出られなかった分、「自習」は怠らなかったという野上氏。業務後、実際のブースの大きさを計ってディスプレイを想定するなど、展示方法や内容を研究したという。そんな地道で前向きな努力が功を奏し、ブースはインパクトのあるコピーと分かりやすい展示で盛況だった。
「毎年DIY SHOWなどの関連の展示会には出展していますが、中小企業総合展は初めて。しかもMOBIOから出展する企業のほとんどは、加工技術や部品製造の会社だったので、少し不安でもありました。でも異業種の方々との出会いのチャンスだと考えたんです。例えば弊社の商品を部材として扱ってもらえる可能性があるかもしれないし、また弊社からも“こういうものが作れないか”と相談ができる企業と出会えるかもしれない。また販路を広げるきっかけにもなるかもしれません。従来の業界意識にこだわっていると可能性を狭めてしまうように思うのです」。
そんな野上氏の思いの通り、展示会の3日間では名刺交換をきっかけにサンプルやカタログ請求などの問い合わせも多くあったほか、実際に商談進行中の案件もいくつかあるという。
新たな販路を広げるために商品開発を
「常に“生活者視点”を大切に、日常の何気ない行動やしぐさの中に新たなアイデアのヒントがある」。大一鋼業の社員全員が意識していることだという野上氏。
ロングセラー商品のマーキーシリーズやスッポンフックは東大阪ブランド認定商品。中でも新商品“クリップマーキー”は、2010年にグッドデザイン賞を受賞したヒット商品だ。そんな多くの商品ラインナップを持つ中で、どの商品をどうアピールするかということが、悩みどころでもあるという。
「例えばMOBIO常設展示場のブースでは、製品そのものの展示に加えて、付加価値として使い方の提案ができるような展示にしていくのもいいかなと思っています。別の商材を扱う企業様とのセット販売の可能性や、機械部品としての扱いなど、様々な可能性があると思うんです。今までの方法にとらわれることなく、新しいジャンルにも販路を広げていきたい。そのためには、それに合った商品の開発にも力を入れたいと思っています」。
さらに今後は、得意としているDIYやホームセンター業界などの男性的なイメージに加えて、女性向けの文具・雑貨などソフトなイメージの店舗にも販路を広げたいという。
「そのためには市場調査からきちんとはじめなければいけませんね」と意気込む野上氏。大阪のものづくりのバイタリティとチャレンジ精神を垣間見たような気がした。
取材日:2013年7月3日(水) ライター:岩村彩((株)ランデザイン)