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MOBIO入居企業・常設展示場出展企業のスペシャルインタビュー

ものづくり中小企業の変革と挑戦を支援しているMOBIOでは、MOBIO 常設展示場出展企業様・インキュベートルームの入居企業様の「 変革と挑戦 」について、取り組みのきっかけ(背景)、 具体的な内容などをインタビューしご紹介していきます。ここにはヒントが沢山詰まっているはずです。 じっくりお読みください!

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型代不要のオンリーワン技術で特注品市場を開拓

三元ラセン管工業株式会社 代表取締役 高嶋 博 氏

三元ラセン管工業株式会社
代表取締役 高嶋 博 氏

会社名三元ラセン管工業株式会社
住所〒536-0022 大阪府大阪市城東区永田1丁目2番37号
電話番号06-6968-2037
代表者名代表取締役 高嶋 博 氏
設立1974年(昭和49年)
事業内容ベローズ
フレキシブルチューブ
ロングフレキシブルチューブ

突然の経営危機を乗り越えるため製造卸から直販への変革を選ぶ

三元ラセン管工業は、フレキシブルチューブの製造卸企業として1974年に創業した。フレキシブルチューブとは、柔軟性があり自由に曲げることができる金属製パイプのことで、水道・ガス等の住宅分野から産業機器・各種プラント分野まで幅広く使われている。今も同社の売上の6割はこの製品だ。

高嶋氏が入社したのは1976年のことで、当時は経営も安定していたのだが、時代とともに同じ製品をつくる後発メーカーが増え、次第に価格競争が激しくなっていった。「このままでは事業が先細りになる」と高嶋氏が不安を募らせ始めた1995年、先代社長が急逝。予想した通り、取引先からはぱったりと注文が途絶えた。

「突然の経営危機のさなか、私が経営を引き継ぐことに。そこで選択した変革と挑戦が、製造卸から直販へと180度事業を転換することでした。付加価値の高い商品をつくる差別化戦略にシフトすることで、価格競争の世界から脱却しようと考えたのです」。

中小企業がコンサル抜きでISO認証を取得し周囲を驚かせる

大阪テクノマスターに認定されている兼綱広さん。同社では65歳定年後も希望者には雇用を継続するので、71歳の兼綱さんは今も午前中出社して、後進に技術伝承を行っている。

新たな経営戦略を掲げた1996年1月、親しくしていた同業者から、「廃業するのでベローズ製造事業を引き継がないか。設備は無償提供、取引先もそのまま紹介する」という申し出を受ける。ベローズとは、液体や気体等の流体を扱う配管のひとつで、蛇腹構造になった伸縮管や伸縮管継手のこと。身近な製造工場から原子力発電所や宇宙空間に至るまで幅広い分野で使われている金属部品である。

喜んでこの申し出を受けたのだが、紹介された取引先担当者は同社の工場を見学するや「こんな汚い町工場とは取り引きできない」と断りを入れてきた。愕然とした高嶋氏は、「会社を徹底的に変革しないと、我々に未来はない」と覚悟を決め、全社員に向かって「ISO認証を取ろう!」と宣言した。

「大企業でも取得が難しいISOを、コンサル抜きで自分たちだけの力で取得しようとしたのですから、周囲からは無謀な挑戦と言われました。3年間社員たちは必死に勉強会を続けてくれ、2000年2月についにISO9001の認証取得を果たしました」。

中小企業が自分たちだけの力でISOを取得したというニュースはちょっとした話題となり、マスコミにも取り上げられた。以後、ISO認証がパスポートとなり、営業活動も格段にやりやすくなった。

こうした一連の挑戦と成功によって、社員の意識改革が大きく進展。工場では自主的な3S活動が始まり、職場環境の改善が進んでいった。資格取得を奨励することで優秀な多能工が次々に育ち、大阪テクノマスターも誕生するほどの高度な技術集団へと成長した。

量産品の価格より10倍高くても必要とされる市場はある

同社が製造する最も径の小さなベローズの部品。

社内変革に手応えを感じた高嶋氏は、今こそ明確な差別化戦略を立てて市場に打って出る時だと考えた。ベローズの製造を手がける同業者は多いが、自分たちにはどこにも真似のできないオンリーワンの強みがある。それが、独自の深絞り加工技術だ。

一般的な成形ベローズは金型が必須で、製造日数と初期コストがかかるのだが、同社では工場にストックされている金型を組み合わせる特殊な製法を駆使することで、この型代を不要としている。ゆえに、ごく少量の特注品にも短納期で対応ができる。顧客は金型コストが削減され、同社は手間に見合った適切な価格設定ができる、“Win-Win”のビジネスモデルが展開できるわけだ。

また、内側から圧力をかけて1回で成型する量産品と違い、同社の加工法は外側から7回に分けて圧力をかけて成型していくので、金属に無理な負荷がかからず、耐久性や精度も高まる。怖ろしく手間がかかる、中小企業ならではのガラパゴス的な製造法だが、生まれる製品は量産品にはない優れた特性を持っている。

「うちのベローズは全て職人技による手づくりなので、値段は量産品の10倍になる。その代わり、耐久性や精度は量産品より格段に上。そういう高い品質が求められる市場に特化したビジネスを展開しようと考えたのです」。

最初にターゲットとしたのは、大学や研究機関など、少量だがハイスペックな製品を必要とする要求レベルの高い客層であった。「ここを落とせば、企業からの注文はついてくる」という読みがあったからだ。ターゲット層に情報を届けるために、高嶋氏は展示会とインターネットを積極的に活用した。2004年に自社ホームページをリニューアルして、ベローズの特注品製造をアピールしたところ、わずか1週間で注文が入ってきた。

ネットの威力を目の当たりにした高嶋氏は、ブログやTwitter、Facebookなどのネット媒体を次々に立ち上げ、同社の知名度を確かなものにしていく。取引先は年を追うごとに増えていき、現在では46大学、27研究機関、1,000社以上の企業が顧客として名を連ねている。今では、ネット経由の売上が全体の3分の1を占めるほどだ。

市場に価格を決定される立場の弱い製造卸業から脱却することに成功した同社の取り組みは、ものづくり中小企業の成功事例として多くのマスコミ媒体で報道され、ITを駆使して卓越した経営を実践する企業に送られる数々の賞も受賞した。

「製造卸から直販への変革が成功したのは、インターネットがあったからこそ。ネットによる情報発信は、神様が中小企業にくれた贈り物です。これからも、積極的な情報発信を続けていくつもりです」。

MOBIO担当者より

他社との徹底的な差別化の道を邁進してこられた高嶋社長。意識改革・直販体制・情報発信などに自ら率先して挑戦。これからも明るい笑顔で「行かない営業」という新マーケティング手法確立を目指されます。(兒玉)

取材日:2013年10月1日(火) ライター:三浪伸夫

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