ものづくり中小企業の変革と挑戦を支援しているMOBIOでは、MOBIO 常設展示場出展企業様・インキュベートルームの入居企業様の「 変革と挑戦 」について、取り組みのきっかけ(背景)、 具体的な内容などをインタビューしご紹介していきます。ここにはヒントが沢山詰まっているはずです。 じっくりお読みください!
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自社技術と趣味がリンクしてオンリーワン商品が誕生!
冨士精密工業株式会社 代表取締役 竹見 升吾 氏
会社名 | 冨士精密工業株式会社 |
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住所 | 〒577-0823 大阪府東大阪市金岡3-22-32 |
電話番号 | 06-6721-1509 |
代表者名 | 代表取締役 竹見 升吾 氏 |
設立 | 1974年(昭和49年) |
事業内容 | フォトエッチング エレクトロフォーミング |
自社技術と趣味の知識が融合してオンリーワン商品誕生!
フォトエッチング加工などにより、電子部品やカメラなどの精密部品を製造する冨士精密工業株式会社。薄板の精密な抜き加工を金型なしで安価できるのが強みだ。代表取締役の竹見升吾氏は、経営者であると同時に、鈴鹿8時間耐久レースに17回出場した経験を持つ本物のプロライダーでもある。
「当社は私の父親が電子部品製造で起業しました。ただ、私がバイクレースをやっていて、自社のフォトエッチング技術を使った金属エンブレムやラジエターガードを仲間のために作っていたんです。最初はビジネスにするつもりはなかったんですが、欲しい人が増えてビジネスになっていきました」
ついには、フォトエッチング加工で作られたラジエターガードを自社ブランドで商品化。現在、全国のバイクショップなどで販売している。
「純正商品だと5,000円程度の商品が、当社のフォトエッチング加工で作ると3万円。最初は全く相手にされませんでしたが、その美しさから高級バイク市場が拡大するにつれて需要が高まり、現在はバイク関連部品が8割、電子部品が2割という売上構成になりました」
発売して10年以上経つが、フォトエッチング加工で作られたラジエターガードは、競合商品がほとんど存在しないオンリーワン商品となっている。
国内ニーズを感じ、MOBIOや展示会に参加
今後の戦略をおうかがいすると、バイク部品よりも電子部品製造の売上を増やしていきたいと語る竹見氏。 「大手電機メーカーの下請けだった当社は、発注元企業の工場海外移転によって仕事の大半を失いました。その危機を救ったのがバイク関連部品でした。しかし、やはり本業は電子部品の製造。海外販路を開拓して、仕事を取り返してやろうと思っていたんです(笑)」
だが、実際に海外視察に出てみると、自社で可能な仕事が海外に流出していなかったことに気づく。 「海外にあるのは量産工場で、小さくて精度が必要な部品、試作や研究開発に必要な部品は、まだ国内で調達されていたんです。視察先でも、当社が製造するような部品は、日本国内にニーズがあると言われました」
そこで、MOBIOなどのものづくり企業が集まる場所や展示会に、積極的に参加するようになった。ものづくりの今を体感したり、ものづくり企業の経営者と情報交換することが情報収集のひとつとなり、刺激にもなっているという。
「フォトエッチングも同じ機械を導入すれば技術の限界点も同じですから、理論上は同じモノを作ることができます。しかし実際は違う。アイディアと他社がやらない工夫をプラスすれば、その限界をほんの少しだけ超えることができて、他社よりもいいモノができる。その限界を超えるためのノウハウこそが、生き残るための強みだと改めて実感しています」
コラボレーションでオンリーワン商品を生み出したい!
自社のフォトエッチング加工を活用して、バイク部品市場を開拓した竹見氏。今度はバイクの世界で得た様々な知見や経験、人的ネットワークを自社の成長に生かしたいと考えている。
「バイクレースの現場で、様々なものづくりの知識に触れてきました。バイクは外装部品から内燃機に至るまで数万の部品で構成されています。レースでは、勝つためにそれらの部品を究極までカスタマイズします。だから処理や加工、素材特性などの知識が自然に身につくんです。近年、横断的なものづくりの知識を持つ人は減っていますが、私はバイクレースで広い知識が備わって、それを今の仕事に生かせています。うまく相乗効果が出ていますね」
再びフォトエッチング加工のラジエターガードのような世の中にない商品を生みだし、新しい市場を創造したいと考えている。
「展示会やMOBIO-cafeで当社の加工技術と他社の技術がつながることで、コラボレーションを実現させたい。どこかの企業さんとのコラボで雑貨や文房具といったものづくりにも挑戦して、オンリーワン商品を生み出したいですね」
取材日:2012年11月13日(火) ライター:中直照((株)ショートカプチーノ)
MOBIO担当者より
エッチング加工でも2輪レースでもプロ。だからこそ市場ニーズから新事業を創出された竹見社長。やさしいい笑顔にあるのは最先端を見る鋭いプロの眼。これからも事業レースにはプロとしての実績・経験が活かされると感じた取材でした。 (担当:兒玉)