ものづくり中小企業の変革と挑戦を支援しているMOBIOでは、MOBIO 常設展示場出展企業様・インキュベートルームの入居企業様の「 変革と挑戦 」について、取り組みのきっかけ(背景)、 具体的な内容などをインタビューしご紹介していきます。ここにはヒントが沢山詰まっているはずです。 じっくりお読みください!
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盤石な組織体制で社員一丸となって新たなスタートラインに立つ
株式会社伸和鉄工所 代表取締役 丸山 和俊 氏
会社名 | 株式会社伸和鉄工所 |
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住所 | 大阪府大阪市平野区平野東4-4-34 |
電話番号 | 06-6793-1216 |
代表者名 | 代表取締役 丸山 和俊 氏 |
設立 | 1976年 |
事業内容 | 大型ベアリング内外輪および部品加工、工作機械・建設機械用部品加工、水道・ガス用異形菅および継手加工 |
精度に自信!直径2mまでの大型ベアリングに対応
大阪市平野区にある本社工場に加え、奈良県に24時間稼働の工場をおき、現在65名の従業員を率いるのは株式会社伸和鉄工所の代表取締役・丸山和俊氏。同社では主に産業向けベアリングの加工・製造を行っていて、なかでも建設機械や、風力発電の風車の回転に使われるような、直径2mまでの大型品を得意としている。「このような大型の金属部品を加工できる企業は関西でも数少ない。当社はもともと地中埋設大径水道管の継手加工からスタートし、創業間もない頃から大型の機械を導入していたので、大型のベアリングも手がけられるようになりました」と丸山氏は語る。
とはいえ、機械があればできるという単純なことではない。特に、大型のベアリング部品を真円に削ったり、薄肉加工でも高精度を実現するには、かなり高度な技術が必要とされる。丸山氏によると、その技術力は先代の丸山光俊氏の“Noといわないチャレンジ精神”によって獲得・継承されてきたものだという。「お客様の要望には『できない』といわず、なんとかして応えようと挑戦&改良を繰り返し、そのつど技術を身につけ進化させてきました。それを新しい人たちに継承していくことを、今もずっと続けています」(丸山氏)。
より高い精度が求められる部品にも対応できるよう、3次元測定器などの検査機器も導入。得意先からは「伸和さんの部品は後工程でのトラブルもなく、品質は絶対的!」と太鼓判を押されている。
会社を復活させるべくバラバラだった社員の意識を1つに
今でこそ社員全員が「お客様の信頼に応える高品質なものづくり」という共通認識のもとで仕事をしているが、ここまでくるには苦難もあった。2016年に社長を交代した当初は、社員たちの意識もバラバラで、離職率が高く、技術の伝承はもちろん、丸山氏が営業に出ることすらままならなかったという。「このままでは生き残れない」と感じた同氏は、会社の存続を賭けて様々な改革に取り組んだ。
めざしたのは、社員一人ひとりが自主的に考え、動くことでやりがいを感じられる職場にすること。そのために、まずは工場の雰囲気を明るくして、みんなが意見をいいやすい環境を整えていった。コミュニケーションの基本である挨拶の徹底もその1つ。おはよう・ありがとう・失礼しました・すみませんの頭文字をとった「オアシス運動」では、毎週月曜日にこれらの言葉を唱和したり、門の前に担当者が立って出勤してくる社員に「おはようございます」と声をかけたりしている。また、役職者と部下の面談、部署ごとの会議や打合せなど、話し合いや議論の場も多く設けるようにした。経営理念や品質方針についてもみんなで読み合わせを行い、ものづくりに対する意識統一も図っている。
さらに、職人気質からくる“技量第一”の風潮を改め、それぞれが持つ能力を引き出し、評価できる仕組みづくりにも着手。年齢・体力・能力に合わせた適材適所の配置や、新しいスキルを身に付けるための異動、リーダーシップ研修やマネージメント研修といった勉強会など、各自の可能性を広げるチャンスを幅広く与えている。「この5年で社内の雰囲気はだいぶ明るくなりました。来社したお客様からも、『伸和さんに行くとみんなが挨拶してくれるから気持ちがいい』といわれます。社員たちにも“ここは自分たちの工場だ”という意識が芽生えているようで、一人ひとりが自分ごととして考え行動することが職場への愛着を生み、さらには製品の品質にもつながっているのではないでしょうか」と、確かな手応えを感じているようだ。
自身が営業で回っていると、得意先から「いつもありがとう」「さすが伸和さんやな」といってもらえることが大きな励みになるという丸山氏。「これからは社員のみんなにもお客様と直接接したり、展示会にもどんどん出ていって、仕事をもらえるありがたさ、認めてもらえる喜びを感じてほしい」と親心をのぞかせる。
諦めず行動することで計り知れない可能性が広がる
若手社員たちの自主性が形になった実例もある。展示品として製作された金属製のワイングラスだ。「今までにやったことのない製品を作ることで、自分たちにも新しい物が生み出せるんだという実感を持ってほしかった」と丸山氏はいう。そして、チタン、真鍮、ステンレス、ジュラルミンという4種の素材のワイングラスが
完成した。材質が変わると当然加工の仕方も変わるので、そのつど工夫が必要になる。それも試行錯誤しながら探究していった。通常はガラス製のワイングラスを、金属を削って作ったことで、展示会で目を引きブースを訪れる人が増えたり、同社の金属加工技術の高さを広く認知してもらうことにもつながった。若手社員の自信やモチベーションアップ、新たな技術の獲得も叶ったのだから、得たものは大きいといえるだろう。
「今はベアリング用鋼材のほかに、ステンレスや新素材の加工にも手を広げています。それ以外にもワイングラスで立証したように我々が手がけられる材質はまだまだたくさんあり、参入できる業界も含め、可能性は計り知れないと思っています。ようやく社内が1つにまとまり、やっとスタートラインに立てたところなので、これからどんどん新しいことにチャレンジしていきたい。そして『こんなことやってみたい』とか『この会社で働けてよかった』と思える人を増やすことが、私の最終目標です」(丸山氏)。
自ら動いて力を尽くし苦難を乗り越えてきた人物だからこそ、「無理だろうと諦めるのではなく、自分が行動することで変わる」という丸山氏の言葉には強い説得力が感じられた。
2021年11月16日(火) ライター:成田知子
MOBIO担当者より
大物で、かつ、薄肉の加工。一見相反するような加工製品を、ミクロン単位の高精度で提供されている同社。
先代の「“NO”と言わない」ポリシーを受け継ぎ、さらに、蓄積したそのノウハウを深化・付加させ、若い方に伝える。正に機械内にあるシャフトを円滑に・確実に回転伝導させるベアリングのような役目を実行されてきた丸山社長。
まだまだ、社員のモチベーションアップのために、取り組むことが多いと熱く語っていただきました。
(MOBIO 村井)