ものづくり中小企業の変革と挑戦を支援しているMOBIOでは、MOBIO 常設展示場出展企業様・インキュベートルームの入居企業様の「 変革と挑戦 」について、取り組みのきっかけ(背景)、 具体的な内容などをインタビューしご紹介していきます。ここにはヒントが沢山詰まっているはずです。 じっくりお読みください!
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「できないかもしれない。でもやってみる」を実践
株式会社酒井製作所 代表取締役 酒井 賢一 氏
会社名 | 株式会社酒井製作所 |
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住所 | 〒578-0921 大阪府東大阪市水走2丁目1-47 |
電話番号 | 0729-63-6636 |
代表者名 | 代表取締役 酒井 賢一 氏 |
設立 | 1933年(昭和8年) |
事業内容 | 切削加工によるプラスチック製精密機器部品 プラスチック製 機械カバー・水槽の製造 上水道管の空気弁体のエボナイトフロートの製造 |
期待に応えた信用が仕事を呼び込む!
各種プラスチック製品の精密切削加工に取り組む酒井製作所。代表取締役の酒井賢一氏によれば、創業当時は万年筆の軸に使われるエボナイト材などの切削加工を行っていたそうだ。加工された部品は、業務用電気機器の絶縁体をはじめ、様々な工業用製品に使用されている。
「成形以外のプラスチック加工なら何でもできます。ガラスなどの非プラスチック素材が混ざった複合材料も含めると、素材や特性は多種多様。素材ごとに扱い方を変えて加工していきます」
最近はメーカーとの直取引も増えているが、以前は商社からの仕事が多かった。
「当社の技術を進歩させてくれたのは、商社からの仕事です。プラスチックに関するあらゆる加工の依頼が舞い込んできました。時には一度断った仕事をまったく別の商社から再び依頼されたり。何度断ってもうちに依頼が来るので、最後は根負けしてやらせていただいたこともありますね(笑)」
切削加工の強みである1個から数百個までの少量生産を短納期で行う技術を武器に、着実に成長を遂げてきた。
「当社よりも後発の会社の方が技術力は高い。にもかかわらず、当社にお仕事の依頼をいただけるのは『酒井製作所に持ち込んだらなんとかなるやろう』という期待に応えてきたことで積み重なった信頼のおかげです」
挑戦できる機会を大切に!
酒井製作所を町工場から小さなものづくり企業に進化させたいと語る酒井氏。ISOの取得認証や社内生産システムのIT化の必要性は感じており、タイミングを見計らっている段階だという。
「今から数年間が当社にとって変革と挑戦の時期になるでしょう。社内の変革を完成させてから次にバトンタッチするべきか、取り組む前に次にバトンタッチするか、そこは経営者として非常に迷っていますね(笑)。当社も現場は20歳代の若者が多いですから、新世代の感覚を尊重しながらも、受け継いでほしい部分はしっかりと伝えたいですね」
例えば未知なる仕事への挑戦。職人は今まで未経験の加工や仕事を『できない仕事』として敬遠する風潮があるという。もちろん安定したリピートの仕事も大切、と前置きした上で次のように語った。
「東大阪の人口衛星(まいど1号)の部品を製作した時もそうでした。職人は未知の仕事や、今までと違う方法をやりたがらないんですよ。でも、当社のような小さな会社は、仕事の中で研究開発やノウハウの蓄積をせねばならない。それには難しい仕事、未経験の仕事に挑戦することが必要なんです。もちろん日常業務の中にも挑戦のチャンスはあります。そうした挑戦の機会を大切にする気持ちは受け継いでほしいですね」
『できないかもしれない。でもやってみる』の精神が大切です、と酒井氏。
美しい次世代への会社継承に挑戦する!
挑戦の機会を大切にしたいと語る酒井氏は、MOBIOの展示場を大きなチャンスだと捉えて活用している。
「お客様の期待や依頼に応えるという姿勢を持ち続ける上で、MOBIOの展示場ブースを見て来られるお客様は非常に大切です。未経験の依頼が多く、会社が進化するチャンスだからです。もちろん、お得意様に比べると仕事につながる確率は低い。でもMOBIO経由の問い合わせは、常に職人の成長や進化に役立っていますよ」
最後に、今後の目標について尋ねた。
「若手にどんどん任せていきたいですね。私自身も現場に出ていますが、徐々に自分が使っている機械も若手に任せるよう意識しています。今思えば、もっと早くからやっておくべきでした。それでも未来の当社には必要な取り組みですから、しっかりと会社を引き継げるよう取り組んでいきます」
そして、視線は未来に向いている。
「インターネットを活用して、日本全国のプラスチックの加工の仕事に取り組んでみたいですね。酒井製作所に持ち込めばなんとかなる、そんな合い言葉が日本中に広がったら嬉しいです」
取材日:2013年5月20日(月) ライター:中直照((株)ショートカプチーノ)
MOBIO担当者より
材料メーカーさえも探しているという希少価値の「エボナイト材」六角棒を見せていただきました。また長年の経験を持つ職人さんと、20代の若者が一緒にものづくりをする現場で、今がまさに「変革と挑戦のとき」というお話を伺えた取材でした。(担当:奥田)