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MOBIO入居企業・常設展示場出展企業のスペシャルインタビュー

ものづくり中小企業の変革と挑戦を支援しているMOBIOでは、MOBIO 常設展示場出展企業およびインキュベートルームの入居企業の「 変革と挑戦 」について、取り組みのきっかけ(背景)、 具体的な内容などをインタビューしご紹介していきます。ここにはヒントが沢山詰まっているはずです。 じっくりお読みください!
※出展終了およびインキュベートルームから退居した企業の記事は掲載しておりません。

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新発想で生み出した絶対に緩まないナットで世界中に安全を

ハードロック工業株式会社 代表取締役社長 若林 克彦 氏

ハードロック工業株式会社
代表取締役社長 若林 克彦 氏

会社名ハードロック工業株式会社
住所〒577-0063 大阪府東大阪市川俣1-6-24
電話番号06-6784-1131
代表者名代表取締役社長 若林 克彦 氏
設立1977年(昭和52年)
事業内容HLN(ハードロックナット)、HLB(ハードロックベアリングナット)、SLN(スペースロックナット)、HLS(ハードロックセットスクリュー)
他 上記の製造及び販売(すべて特許商品)

備えあれば憂いなし!振動と衝撃あるところにハードロックナットあり!

ハードロックナットは、偏心構造を持つ凸ナットの上から凹ナットを締め込むことで、ボルトとナットの隙間にくさびをカチ込むのと同じ効果を得ることができる。しかも着脱は自由で、何度繰り返してもくさび機能が劣化することはないという。その確実性と使いやすさから様々なシーンで採用されている。

緩まないことへの安心と安全に対する熱意と努力は、対象の大きさを選ばない。製鉄所や橋梁に使われる260ミリの巨大なナットから医療用品やメガネに使われる1.8ミリの精密ねじまで、「絶対に緩まない」信頼を提供している。これは国策として地震や自然災害の防災・減災に取り組む「国土強靭化計画」への貢献にも繋がっている。備えあれば憂いなし。10年どころか100年でも絶対に緩まない構造のナットこそが安全への備えであると若林氏は力説する。

「絶対に緩まないナット」のヒラメキは日本古来の「くさび」からだった

1974(昭和49)年、若林氏は当時生産していた緩み止めナットを超える、絶対に緩まない新発想のナット「ハードロックナット」の開発に成功した。40年以上経った今では国内のみならず世界中で展開し、高い評価を受けているが、その開発までには難題を大きな発想力でブレークスルーした瞬間があった。
きっかけは削岩機に実装されていた当時の緩み止めナットが激しい振動で緩んでしまったクレームの際に、全て回収し数百万円の取り替え費用を負担したことだった。この時、「何があっても絶対に緩まないナットを作る」と決意したのである。とはいえ、そんな夢のようなナットが簡単に出来るはずがない。諦めずに研究を続け、気付けば1年が経っていた。

ある日、気分転換の散歩で住吉大社に立ち寄ったときのこと。普段なら目に留まることのない鳥居の「くさび」が目に入ってきた。日本古来の建造物は釘を1本も使わずに、くさびだけで何千年も持続している・・・。その瞬間天啓ともいえるようなヒラメキが降りてきたのである。

「『せや!くさびをボルトナットにカチ込んだら緩まへん!』って思ったんです。絶対に何か考えつかなアカン、なんとかせなアカンという意識を普段から持っていたからでしょうね」

しかし、単純にくさびを打ち込むボルトナットでは意味がない。ねじ込むことで自動的にくさび機能が作用するような製品を作り上げなければならない。10年どころか100年でも緩まない構造のナット、「ハードロックナット」が完成したのはそこから1年後のことであった。当時、年商で10数億円の売り上げだった旧製品である緩み止めナットの権利、設備、従業員の全て、3年残したロイヤリティ以外を共同事業者に譲渡して、一から「ハードロック工業株式会社」を立ち上げた。それほどまでに新たな展開への希望と喜び、自信で満ち溢れていたのである。

鉄道メンテナンスから時間と人手を解放し、40年無事故への貢献を表彰される

現在、一編成16両の新幹線に約2万個のハードロックナットが使われている。また車輛以外にもレールとレールを繋ぐ継ぎ目板にも使われており、日本国内のレールの大半をカバーしている。以前は時間と人手を割いてメンテナンスをしていたが、それを削減することができ、安全を確保しつつ大きな省力に繋がったのである。その結果、2014(平成26)年、東海道新幹線開業50年周年にあたって、ハードロック工業はJR東海から納入以来、無事故に貢献してきた功績を表彰された。

国内と同時に世界へも広げていった。台湾高速鉄道の全車輛と、台北から高雄を結ぶおよそ300kmのレール継ぎ目箇所に400万個使われている。

「イギリスの鉄道会社にも代理店を通じてずっと営業をかけていたんですが、彼ら保守的なんでずっと断られてきたんです」

ところが、2007年にグレイリッグで起きた脱線事故をきっかけに状況が大きく変わった。事故の原因は分岐器を固定していたナットが緩み、正しく転換しなかった為に、そこを通過するはずの列車が脱線転覆したのだった。この事故を検証したBBCの番組内で「このナットを使っていれば事故を防ぐことができた」とハードロックナットが紹介されたのである。
「なぜもっと積極的に来なかったんだって言われました。散々断ってきたのにね」と若林氏は笑顔で語っていた。

使用されているシーンは鉄道だけではない。100年保証の付いた戸建住宅や低層ビルの鉄骨部分、現在認可を申請している高層ビルにも近い将来採用されるだろう。2012(平成24)年に完成した東京スカイツリーに40万個使用されている。採用の際には他社との競合であったが、条件に提示された100年間緩み止め機能が持続する裏付けを持っていたのはハードロックナットだけであった。しかし、モノが良くてもナットの締め方が甘くては意味がない。そこで建設中の東京スカイツリーに若林氏自ら作業服とヘルメットをかぶり、作業員に締め付け手順などを直接指導しに行ったこともあった。若林氏が変わらず持ち続ける安全への熱意とその自信こそが、30年前からのキャッチフレーズ「安全は威力」に込められている。

MOBIO担当者より

新幹線、スカイツリーなど私たちがよく知るモノに多く使用されているハードロックナット。長年積み重ねられたアイデアと努力、経験と実績が今、世界で認められている企業様です。『安全が威力』若林社長のお話をうかがっていると背筋が伸びる思いです。(奥田)

取材日:2017年5月18日(木) ライター:大西 崇督

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