ものづくり中小企業の変革と挑戦を支援しているMOBIOでは、MOBIO 常設展示場出展企業様・インキュベートルームの入居企業様の「 変革と挑戦 」について、取り組みのきっかけ(背景)、 具体的な内容などをインタビューしご紹介していきます。ここにはヒントが沢山詰まっているはずです。 じっくりお読みください!
pick up company 067
紙資源のリサイクルに取り組み続けて 20 年
株式会社秀英 代表取締役社長 上田 英治 氏
会社名 | 株式会社秀英 |
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住所 | 大阪府東大阪市水走1-16-37 |
電話番号 | 072-966-1145 |
代表者名 | 代表取締役社長 上田 英治 氏 |
設立 | 1972年 |
事業内容 | リサイクル紙容器、紙製容器、印刷紙器 |
分別と会話をテーマに、リサイクル型紙容器「ホッかる」を開発
湾岸戦争をきっかけに、日本でもゴミの問題やリサイクルへの関心が高まっていった。当時の社長(現会長取締役)の上田秀行氏は、紙容器製造業者である自分たちが、この「ゴミ問題」に対して何か貢献できないかと考えた。そこで、これまでは製造-消費-廃棄、の一方通行だった流れから、再利用まで視野にいれたリサイクル型紙容器「ホッかる」を開発したのだ。この「ホッかる」、その名の由来は「“ホッ”とした気持ちで健康的においしく食べて、食べた後は地球にも優しくリサイクルに。人も資源も地球も助“かる”。」この会長の思いを受け継いだ、現代表取締役社長上田英治氏は「ホッかる」のさらなる改良に取り組む。
「ホッかる」は、内側のフィルムと外側の紙容器の2つの部分からなり、耐熱性、耐水性をもつリサイクル型紙容器。このような機能をもつ紙容器は、牛乳パックのように、内側全面貼りのコーティングが通常だ。しかし、「ホッかる」は、内側のフィルムを剥がして、分別できる仕組みになっている。外側の紙容器は、簡単に広げて1枚の平らな状態に戻せるのでコンパクトに回収できる。回収した紙容器は再生紙へとリサイクルされる。「ホッかる」の紙容器7個分でトイレットペーパー1個に再生できるという。
また、この紙容器とフィルムの接着には、独自の工夫が盛り込まれている。
「もともとスタートした時は、フィルムもしっかり紙について、液状のものを入れても安心、という作り方だったんですよ。でも、それでは剥がしにくいので、分別せず捨てられてしまう。それでは意味が無い。そこで改良を繰り返して簡単に剥がせるようにしました。」と、社長の上田英治氏。しっかり接着し、かつ、剥がしやすい性質をもつ接着面の糊も同社オリジナル開発だ。
“コト”を売る発想が評価され平成30年度「大阪製」を受賞
「ホッかる」には二つの目的があり誕生した商品である。一つは、「分別」を通じて、リサイクルへのつながりをつくり、資源を有効活用すること。一人一人が循環型の社会づくりに一役買い、「分別」を自然で当たり前にすることだ。そして、もう一つ目的は「会話」である。「地域のイベントなどで、エコステーション(回収ボックス設置場所)を置き、そこに人が立つ。食べ終わった後は、分別の仕方を教えます。そうすることで人と人との間に会話が生まれる。イベントを通じて、リサイクルの「わ」がどんどん広がる。そんな社会になればいいなと思うのです。」と、専務の上田孝司氏は語ってくれた。
人々の温かいつながりで心に余裕が生まれる。そうするとさらに、地球環境への思いやりも膨らむのではないだろうか。「ホッかる」を通じた地道な活動が、小さな地域から大きな地球環境の保全へとつながっている。こういった活動の実績として、地元大阪の中之島まつりでは、「取り組みから3年間でごみ処理費用を半分に削減できた。また、そこでつながった縁で学生生協での「ホッかる」の導入が広がった。現在でも各地の大学生協で使用されている。
そして、ここまでの活動が認められ、「ホッかる」は、平成30年度「大阪製」ブランド製品に認証され「クリエイティブワーク部門」を受賞した。「分別を身近に感じる“コト”を売る発想」は環境に対する思いがにじみ出ていると評価された。最近の学生に「分別ってどうですか?」と聞くと、「当たり前だと思っています。」と、かえってくる。「ホッかる」に取り組み始めて約20年。捨てるのが当たり前だった時代は変化し、当初目標としたことが、確実に根付いてきたことが実感できる。
形あるものづくりで地元東大阪を盛り上げたい。
「ホッかる」を通じた活動の他に、社長にはもう一つの目標がある。同じ中小企業同士がつながり、協力しあって、市場で広がるものを作ることだ。委託されたものを製造するだけではなく、自分たちで作ったものを、見える形で世の中に出していきたい。それが、地元東大阪を盛り上げることにつながればと考えている。
「自分の会社だけで新しいことに挑戦する事はなかなか難しい。そのためには周りの人の協力も必要。うまく他の企業と協力して、いろんな技術を生かして、これは東大阪でしかできない!そんなものづくりをやってみたい。それが今の目標です。」
そんな思いを実現すべく、新しい紙製品の製造に挑戦した。製紙工業者の交流会で知りあった、製紙メーカーと協力して、花園ラグビー場の芝生を練り込んで『ラグビーボール型の色紙』を製作したのだ。「甲子園球場に出場した高校球児たちは甲子園の砂を思い出に持って帰れる。花園ラグビー場出場の思い出に花園の芝を持って帰れてもいいんじゃないかと、作ってみたんです。」と社長。今年(2019年)は花園でラグビーのワールドカップが開催される。地元東大阪のものづくり企業として、応援する気持ちも込められている。
「社長はうまいこと神輿の上で太鼓を叩かなあかん。しかし、神輿を担ぐ従業員が一人でもかければ神輿(会社)は傾く。太鼓をたたけるように従業員たちは力を合わせて担いでくれる。だから従業員も、従業員の家族も大切なんですよ。」
採算や効率だけを優先した事業のみではなく、従業員を家族のように思いやり、その家族が暮らす社会を、より良くしようと奔走する兄弟経営者。二人の思いは従業員にも伝わっているようだ。
「やりたいことはいっぱいあるんです」。リサイクル、リユース含め様々な環境支援活動を行っている専務は、希望にあふれた様子で語ってくれた。環境問題に関わる活動を通じて様々な人脈も広がった。人のつながり、企業のつながりから生まれるものづくり。そしてまた、ものから生まれる新しい人のつながり。「株式会社秀英」から広がる、つながりの「わ」は大きな地球を包み込む、リサイクルの「わ」のように少しずつ広がっていく。
取材日:2019年2月4日(月) ライター:ちばあやの
MOBIO担当者より
地球環境を良くするため、たえずthinkグローバル、actローカルを実践されている(株)秀英様。人との絆や企業様との繋がりを拡げ、社会に貢献するための会社として強固なタッグを組む社長と専務でした。(村井)