ものづくり中小企業の変革と挑戦を支援しているMOBIOでは、MOBIO 常設展示場出展企業様・インキュベートルームの入居企業様の「 変革と挑戦 」について、取り組みのきっかけ(背景)、 具体的な内容などをインタビューしご紹介していきます。ここにはヒントが沢山詰まっているはずです。 じっくりお読みください!
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過去の技術的財産×新発想から生まれた製品で、業界を変革する企業
シャープ化学工業株式会社 代表取締役社長 村上 幹男 氏
会社名 | シャープ化学工業株式会社 |
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住所 | 〒592-8352 大阪府堺市西区築港浜寺西町13-12 |
電話番号 | 072-268-0321 |
代表者名 | 代表取締役社長 村上 幹男 氏 |
設立 | 1965年(昭和40年)/ 創業1960年 |
事業内容 | 各種シーリング材・接着剤・防水材の製造・販売 工事関連商品の仕入れ販売 防水等工事の受発注・製品・商品の輸出入 |
お客様のニーズがある限りつくり続ける精神で業界でも独自の存在に
建築分野、工業分野で使用されるシーリング材、防水材、接着材の総合メーカーとして、多種多様な製品を世に送り出しているシャープ化学工業。昭和35年の創業から、自社で企画開発〜製造までをトータルに行う、一貫したスタイルで事業を展開しており、商品ラインナップは、大手メーカーも手がけるメジャーな用途から、ニッチだが必要とされる用途の製品まで実に幅広い。
「当社には、ニーズがあれば、少量でも、どんな製品でも製造可能な技術力とノウハウ、細やかな生産体制があります。中には、同業他社では採算が合わず生産をやめてしまったジャンルの製品もありますから、“シャープ化学工業なら、いつでも必要なものが手に入る”というお客様の評価をいただいていますね」
代表取締役の村上 幹男氏の言葉通り、同社はこれまでに蓄積した技術・製品という財産をフル活用して、顧客のニーズに100%応える力を強みに、顧客との信頼関係を築き上げているのだ。
「昔からある製品や技術を大事にする一方で、私たちは常に新しいこと、他ではやらないモノづくりにチャンレンジしています。私自身、“何かおもしろいことをやりたい”という気持が強いですから、社内的にも“これ何に使えるの?”と用途さえ決まっていない突飛な企画や商品が次々と生まれてきています」
世の多くの中小企業が生き残りをかけて大手に対抗し、売れる商品を大量につくるという方向に向かう一方で、同社は真逆の多品種少量生産スタイルを選択。実はこのことがバブル期以降の不況下でも価格競争に巻き込まれず、安定した経営の実現につながったという。
早期IT化と他社にマネのできないモノづくり体制の構築が成長のカギ
同社のこの事業スタイルは、村上氏が20数年前に技術者として入社し、取り組んだ様々な社内の変革が基盤になっている。その中でも大きな変革は、業界でも早期に行ったITシステム化だった。
「私の入社した頃、当社の業務の処理は、まだオフコンや手書きの時代。そこから早期に脱し、受注から製造までをITシステムを全社的に導入して効率化すること、サーバーも活用して製品データを蓄積し、スピーディな製品開発に活かそうと考えました」
同時にホームページによるプロモーションやBtoC向けのオンライン販売体制にも中小企業としてはかなり先駆的に取り組んだ。特にホームページで通常の商品や独創的な製品をPRしたことは、今までの建築分野や工業分野の顧客からだけでなく、鉄道事業者や時には玩具メーカー等からも問い合わせが来るように。その後、各社との共同開発による製品化や新発想の製品としてテレビ番組に取り上げられる等、ブランディングに大きく貢献した。
「意外だったのは、私たちのコンクリート補修用途で開発した製品が鉄道会社の目に止まり、線路の枕木の穴埋め補修用製品として結実したこと。他にも当社の商品が多分野で活用された例はいくつもあります。このことは、用途やニーズ先行型の製品開発だけではなく、アイデア勝負でもやっていけるという考え方の転換になりましたね」
と村上氏が振り返るように、ホームページを介した新たな顧客との出会いが次々とユニークな製品づくりを加速させるきっかけとなった。
また、製造現場でも多品種少量生産を実現するために、製造ラインの効率化と生産品種をフレキシブルに切り替えられる体制づくりに技術者が取り組んでいたことで、必要な時に必要な量を生産するという、理想の供給体制を生み出している。
同社の常なる変革、新しい挑戦は留まることを知らず、現在は、グローバルな事業展開を見据えて、中国に設立した拠点に村上氏自ら年間100日ほど駐在し、現地スタッフの指導に当たっている。
建築現場の課題解決から生まれた環境対応容器で海外市場に挑戦
中国拠点を軸としたアジア圏への事業展開をはじめ、他方でアメリカやヨーロッパへの事業展開にも新たに取り組もうとしている同社。その突破口となる製品と位置づけているのは、従来からのシーリング材や防水材ではなく、環境対応容器「SKパウチ」である。
「これまでの接着剤の容器は使用後に減容化できず、ゴミの量が多くなるという問題を抱えていました。当社のSKパウチは、使用後10分の1まで圧縮でき、資源も従来の5分の1という環境対応製品です。この製品や技術は、海外では食品分野や医療分野で活かせることが期待され、興味・関心を持ってくれている企業もあります」
得意とするシーリング材ではなく、容器という違う切り口での海外進出は、あらゆる方面からオファーが寄せられており、事業化に向けて、着実に進んでいる。
そんな同社が今進めているのは、グローバルなものの考え方を持った人材の育成。技術者時代、ドイツ等での駐在経験を持つ村上氏が社員に伝えているのは、「失敗しても怒らないから、個人プレーをしろ!」という言葉。日本式の「みんなで一緒に考え、行動しよう」では、海外の早い交渉・決断スピードにはついていけない。海外での事業を成功させるために、1人ひとりが経営者と同じくらい即断即決ができ、交渉を有利にする力の養成に全力を挙げている。
“顧客のニーズに応えるモノづくり”と“新たなニーズを生み出すモノづくり”。同社の2つのモノづくりが、今後どのような広がりを見せるのか、その動きに業界内外の注目が集まる。
取材日:2015年7月22日(水) ライター:北川 学
MOBIO担当者より
海外勤務から学んだスピード経営を大切にされている村上社長。他に先んじた実践第一を掲げ、挑戦後なら失敗は許すという積極的なチャレンジを推進。現場からの提案力など徹底追求しておられる姿勢は、まさに「挑戦と変革」でした。(兒玉)