MOBI6
ものづくり企業の次の一手は? 毎号6つの旬な記事で熱い「変革と挑戦」を紹介するモビロク。
現状打破のヒントやモチベーションアップにつながります。
「考えるをあそぶ、つなぐ」
リアルとデジタルが融合した
IoTプロダクト。
最近のコンテンツやゲームは、最初から楽しみ方が決められているものが多いが、株式会社白紙とロックが開発した多面体のブロック「PLOCO」は少し違う。この製品のコンセプトは「考えるをあそぶ、つなぐ」。代表の渡部一成氏は「あえて組み立て説明書という正解をなくし、ユーザーが自身の発想を解放する場にしてほしいと考えています」と話す。PLOCOは一つひとつにRFIDタグ※を搭載。自由に組み立てて作品をつくり、リーダライター(附属品)で作品をスキャンすれば、Bluetooth経由でアプリと連携が可能に。このアプリを操作することで、作品(キャラクター)同士をスマートフォン上でバトルさせることができる。今後、アプリのアップデートを重ね、いずれはスマートフォン上でキャラクターを育てる仕掛けなども考えていきたいという。このように書くとデジタルに寄った玩具と思われがちだが、PLOCOは「ブロックを組み立てる」という、ものに触れることも大切にしており、「デジタルとの距離感を適切に保ってほしい」という作り手の思いが表れている。また、ブロックで組み立てた作品をアプリで可視化することで、これからの時代に必要とされる創造力や問題解決能力が遊びながら身に付くほか、STEAM(科学・技術・工学・芸術・数学)教育にもつながる。白紙とロックは「知的財産の開発と発展」を事業の中心にしているが、なぜ今回ものづくりなのだろう。これまでいくつかのスタートアップを立ちあげ成功してきた渡部氏だが、受託型の事業内容にどこかでコンプレックスがあったという。そこで「当時32歳。年齢的にもまだ挑戦ができると思い、初めて自社プロダクトの開発に乗り出しました」。とはいえ、ものづくりの経験はない。そこでブロックのデザイン、内蔵するタグの選定、ブロックの成形、アプリ開発など、それぞれを専門とする4社と連携、約2年の歳月をかけて完成させた。大阪府の「ものづくりイノベーション支援プロジェクト」の助成金も役立ったという。現在、同社はエンジェル投資家たちからの出資を受け、IPOをめざしている。それもアメリカ、NASDAQで。PLOCOは2020年3月にアメリカで先行発売されたが、こうしたことも見据えてのことである。その後、逆輸入する形で国内販売を開始している。子どもの遊びは世界共通。プロダクトの魅力で世界に勝負を挑む。
>紙面からの続き
過去をリセットして、新たな挑戦へ。
社名に込めた想い。
白紙とロック代表である渡部一成氏のプロフィールはとても華々しい。20歳で有限会社team-Aコーポレーションを設立し、中小企業のEコマースの立ち上げをコンサルティング。今から約20年前、自社ECサイト構築の走りの頃の話だ。この会社を運営しながら株式会社サイバースター(のちに株式会社アイスタイルに吸収合併)に入社。SEOやリスティング広告などのWEBマーケティングに携わる。その後、バンコクで新たな会社を設立。ニューテクノロジーの開発に携わり、「決済処理システム及び決済処理方法」を発明、特許を取得。GMOペイメントゲートウェイ株式会社へその特許権利を譲渡した後、2018年に株式会社白紙とロックを設立し、現在に至る。
弱冠20歳での起業、それは「選択肢がなかったから」だという。
「学生時代、音楽の専門学校に通っていたが途中で挫折し、同世代は大学生で就活の話をしていて置いてけぼりだと感じました。でも、今からいい大学に入るのは難しい…。となると、ここから競争に勝つには一気に起業するしかない」そんな消去法での起業だったという。その後は前述のとおり様々な経験を得てステップアップしていったが、一度リセットしようと思うタイミングがあった。現在の会社を立ち上げる前、子どもに「お父さんの仕事は何?」と聞かれたときに一言で伝えることができなかった。そこで“子どもでもわかる象徴的な事業がしたい”と。こうして、「白紙とロック」という一風変わった名前の会社を立ち上げた。今までのキャリアや固定観念を「白紙」すること。「ロック」には、“自由に尖ったことをしよう”という想いが込められている。”白紙の心を持って自由に挑め”そんな精神を事業にも込めている。
株式会社白紙とロック
https://www.8969.co.jp/
大阪市中央区平野町3-1-2 キューアス平野町ビル4F
MAIL. info@8969.co.jp