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ものづくり企業の次の一手は? 毎号6つの旬な記事で熱い「変革と挑戦」を紹介するモビロク。
現状打破のヒントやモチベーションアップにつながります。
冷間圧延機の老舗メーカーの挑戦、
レーザー彫刻によるBtoCで世界を広げる。
冷間圧延機の設計・製作で、自動車のエンジン部品であるピストンリング製造の圧延機や、産業機械などで使用されるリニアガイドの線材圧延機、超伝導線材の圧延機などを販売するヤスオカ。圧延ライン上に設置する精密走間測定器では、貴重な国内メーカーだ。同社では30年ほど前からレーザー加工設備を導入。特にレーザー形彫技術に関しては、チタンや超硬合金などの難削材への加工品質が評価されており、地域新生コンソーシアムでは、大学や医療機器メーカーや素材メーカーとともに人工股関節の開発に取り組んだ。「人工股関節を挿入後、リハビリ期間を短縮するために骨組織の侵入経路となる溝をレーザー彫刻でつくりました。苦労しましたが、チタン合金へのレーザー加工時の熱影響層を10μm以下にする目標が達成できました」。そう振り返るのは、同社の4代目となる安岡直樹代表取締役社長。
さらに錫へのレーザー発色の開発へ挑戦も。「ナノ秒レーザーを用いた錫への発色技術の開発」で、ものづくりイノベーション支援プロジェクトに認定された。すでに確立されつつあるステンレスへの電解発色やチタンへの陽極酸化発色技術に対し、融点の低い錫は発色が困難とされていたが、錫へのレーザー発色を実現し、レーザー発色のメカニズム向上をめざしている。
またいっぽうでレーザー彫刻技術による新たな事業が注目されている。行政の依頼で製作したチタン製ミニチュアマンホールが好評を得ている。「着色ではなくレーザー微細加工技術を施して発色させているため、構造色によりキラキラした発色が得られます」
社長就任から6年、だんだん自分のカラーが出てきたかなと語る。「社員には自分の手がけたものが、世に出て人の役に立っていることを感じて欲しい。チタン製ミニチュアマンホールのようなB to C事業は、それを肌で感じてもらえる。社員が自分の役割をしっかり認知して、モチベーションアップにつながれば」。たしかな基盤を持ち、大事な部分は守りながらも自由な発想で展開することで、老舗メーカーは新たな地平をめざす。
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受け継いだ老舗のバトン、どうつなぐか。
4代目が着手した社内改革。
「2代目の祖父は職人気質で圧延機を手がけ、非常に丁寧に装置をつくり上げる人だった。先代はそこに電気的な要素を加え、事業を拡大しました」。そんな老舗のバトンを、2014年から受けたヤスオカの4代目安岡直樹社長。旺盛な探究心で、8軸NC制御の線材圧延機などユニークな製品の開発に積極的に挑戦して、市場に送り出した。
さらに社内の組織体制を改革するべく、コンサルを招いて社風改善、生産管理、営業という3つのプロジェクトを進めている。社風改善では建て増しを重ねて使い勝手の悪くなった旧館の工場にいくつかの扉を設置し、空間を有効活用できるようにした。営業ではインバウンドとアウトバウンドに分け、前者はSNSを活用しての情報発信。後者は具体的に仕事を受注するために、展示会への出展やIT導入補助金で導入したkintoneを使い、社内の情報、やりとりの場を集約して業務効率をアップさせている。
株式会社ヤスオカ
https://www.yasuoka.co.jp/
柏原市国分東条町4331-1
TEL 072-976-0324