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ものづくり企業の次の一手は? 毎号6つの旬な記事で熱い「変革と挑戦」を紹介するモビロク。
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津波発生時に備えた方舟
プロ集団による
救命艇シェルター。

津波救命艇シェルター「+CAL(タスカル)25F」。真ん中の棒は一点で釣り上げることができ、救助の時にも役立つ設計に

和歌山県の新宮を中心に周辺の市や町にガスを提供し、地域のインフラを支える新宮ガスにも納品

きっかけは東日本大震災時の映像。ひとりの男性が、自分も溺れそうな状態で女性を救助するシーンに目が留まった。男性が乗っているのは漁港で使われる簡素なコンテナだった。ミズノマリンの水野茂代表取締役は、「うちが手がける救命ボートを海辺においておけば、もっと多くの人を救助できたはず」と感じたという。その衝撃も冷めやらぬ翌年、水野氏自身がタイで地震に遭遇し、津波から避難するリアルな恐怖を体験する。ここで構想していた救命シェルターを形にしようと固く心に誓う。そうして開発されたのが、南海トラフ巨大地震などに備えた津波救命艇シェルター「+CAL(タスカル)」だ。
マリンエンジンの修理からスタートし、現在は部品やエンジンの販売、大型の外国船に搭載されている救命ボートの検査事業も手がけるミズノマリン。「言わば船のお医者さん。関西でマリンエンジンの整備と救命艇の検査を専門にしているのは当社だけです」。そういったノウハウを凝縮したのが同社の津波救命艇シェルターだ。「高波で横転しても船体が自然復帰するセルフライディング構造や、船体に大きなダメージを受け、万が一浸水しても沈まない不沈構造は、すべてIMO(国際海事機関)のSOLAS(海上人命安全条約)を基準に設計されています」
機能性で一番こだわったのは、繰り返しの衝撃に耐えうる船体強度設計だ。津波到達時は予測不可能な場所に流されるため、360度あらゆる方向からの複数回の衝撃に耐える必要がある。艇体の全周に施されたフェンダー(防舷材)は外側がソフトなFRP、内部には発泡体が充填されており、障害物、漂流物への衝突からシェルターを守るという。内部には非常食備蓄、個室トイレを完備し、1週間はこのなかで生活が可能。艇体は空からの捜索が簡単におこなえるオレンジカラーとし、夜間捜索用にフラッシュライトを装備。当初は25人乗りモデルだけだったが、現在は家庭向けの4人乗りから中小企業向けの8人乗りモデルまで幅広く対応。マリンエンジンを知り尽くしたプロフェッショナルがつくりあげた渾身の作が、もしものときの命を救う。

>紙面からの続き

耐衝撃性を高めながら、
スタイリッシュなデザイン。


大型船舶などに装備されている救命艇をベースにしたオレンジ色のシェルターは、さながら「ミニ潜水艦」のよう。目を引く色や形状など、災害時に逃げ込む場所として直感にアピールする外観となっている。ミズノマリンが製作した初代シェルター「+CAL25」は、大型船搭載の救命艇にシェルターとしての改良を施した実用性重視型のモデルだが、さらに改良を加えた「+CAL25F」は耐衝撃性を高めるとともに、屋外設置を前提に地域の景観を乱さないスタイリッシュなデザインを目指してつくられた。
同社の技術の結晶であるこの津波救命艇シェルターは、2016年グッドデザイン賞で、審査委員1人がひとつだけ作品を選ぶ「私の選んだ一品」に選出されている。こちらを選んだタイのデザイナーEggarat Wongcharit氏は、「シェルターボートは、命の価値を享受する作品だ。差し迫った死の恐怖に直面したとき、命をつなぐようにデザインされている」と高く評価している。


株式会社ミズノマリン
https://www.mizuno-marine.co.jp/
豊中市名神口1-12-15
TEL 06-6863-5233

東海大学海洋学部との実証実験では「+CAL」に乗り組み、パドリングでどれくらい進むかや、シェルター内で数時間過ごした乗船者の心理状態などを検証

地震災害が発生した際、避難ルートを確保することが困難とされる地域、津波の到着が短時間とされる地域で、より多くの人命の安全を確保すべく開発された

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