市場で求められる用途を探るため「自由設計オイルダンパー」として展示会に出展したところ、建材メーカーから声がかかり、地震対策となる木造住宅用制振ダンパーが誕生

カチカチゴニオメーターは5度ごとの溝加工と本体軸側面に傾斜をつけることによって、片手で簡単かつ正確に計測ができる、新しいタイプのゴニオメーター

創業当時は省力化機械の「設計・製造のメーカー」であったテクノタイヨー。そこからアルミ削り出し加工、ダイカスト、ロストワックスなど金属加工、また後工程としての組み立て実績を蓄積してきた。その加工精度は高く1/100mm、部位によっては1/1000mm単位の切削も可能だ。リーマン・ショック後は開発設計ノウハウを全面に出した部品メーカーへと展開を図り、自社商品開発事業を分社化した株式会社テクノライジングも設立。「設計から製品開発、組み立てまでできる技術力が認知されており自信はありました」と水野敏雄代表取締役。2015年にはベトナムで工場を開設、海外進出も果たす。
独自製品の第1弾となったのが、木造住宅の耐震強度を守る制振ダンパー。過去にシステムキッチンのつり戸棚を引き出すダンパーの設計・製造を受託した実績を生かし、2014年に大阪府立大や建材関連の商社と組んで商品化した。この産学連携をきっかけに医療の世界にも進出。理学療法士が関節の可動域を測定するための角度計「カチカチゴニオメーター」を開発する。販売にあたっては医療機器の製造と販売の認可も取得。「理学療法士や訪問看護師の世界は、まだまだ昔からの道具が使われている。そこに活路を見出して、現場でヒアリングしながら新商品を考えています」
2020年にはベトナム事業に関連する「中小企業向け複雑形状立体物の汎用撮像分析装置の開発・事業化」が経営革新計画に採択。ベトナム工場で製造されるステンレスの水切りかごの傷や打痕、バリなどを目視で検査して出荷しても、国内で再検査すると不適合品として識別される場合があった。そこで目視ではなくAIによる撮像分析装置の開発・事業化をめざしている。「検査する人や環境によって左右されるのではなく、確固たるエビデンスを持ったこの装置が完成すれば少子高齢化に伴う人材不足への対応、生産性向上といった社会的課題を解決できるので、いずれは装置の販売も考えており、それによる収益の拡大もめざしています」

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経営理念や「三つのこころ」の
浸透こそが、本当の意味での経営。

リーマン・ショック後、経営不振に陥り無我夢中で営業をしていた水野氏。売上はV字回復し、2013年には過去最高の売上を達成した。しかし気がつけば社内の雰囲気が荒んでいた。「離職率も高く、このままではいけないとはじめて経営について勉強した」という。そして創業30周年を迎えるにあたり、経営理念を定めようと思い立った。「わたしたちの精一杯の知恵と汗で、わたしたちの未来を今よりもっと幸せにします」。それが創業者の父や母、弟と半年間、毎月会合を持ち生まれた経営理念だ。「理念にある“わたしたち”は今は社員のことですが、これをどこまで広げられるか、それが会社の成長につながる。最終的には会ったこともない海外の人々まで幸せにできれば」。そして経営理念に収まりきらなかったキーワード、「思いやりのこころ」「誠実なこころ」「あきらめないこころ」を社是としたのが「三つのこころ」だ。2020年からは経営理念や「三つのこころ」、全従業員の顔写真が掲載されたポリシーブックを作成、配付している。このなかには個人の目標を書く欄があり、これを見ながら年5回の面談をおこなっている。「経営についてあれこれ考えましたが、結局は人。そこをきちんと育成できれば、新しいことをやろうと言っても、みんな一丸となってついてきてくれます」


株式会社テクノタイヨー
https://www.techno-t.co.jp/
堺市東区石原町1-153
TEL 072-255-9559