MOBI6
ものづくり企業の次の一手は? 毎号6つの旬な記事で熱い「変革と挑戦」を紹介するモビロク。
現状打破のヒントやモチベーションアップにつながります。
時代の変化に応える技術とサービス。
絶えず革新の気概を持つ社風。
流通用段ボールの製造で事業を拡大してきた新居紙器株式会社。しかし大手企業が自社生産をはじめ、価格や量産性では勝てない状況が訪れる。そんな現状に得意分野をつくることで打破した。まず新居章良代表取締役社長が考えたのは、洋菓子業界向けの紙器製品の小ロット生産。ダンボールと紙器を同時に扱える会社は少なく、この事業は口コミで評判が広がり顧客を増やしていった。そして70年以上続く包装資材の製造事業を通じて蓄積したノウハウや技術、機械設備などをもとに、2017年からはオリジナルパッケージを作成できるサービス「ORiPA(オリパ)」を展開している。「ORiPA」は極小ロットでも発注可能。オリジナルで紙箱を製造する場合、従来は印刷、型抜き、糊貼りといった各工程を別の加工会社でおこなうことも多いが、デジタル印刷機と独自加工技術を組み合わせた一貫製造により低価格での提供を実現させている。箔押しやフィルム貼りなどのオプション加工も同様の対応ができ、実機を利用したカラーサンプルの提供で製造後のミスマッチもない。社内にデザイナーも在籍し提案型営業ができる体制を整え、デザインはもちろんのことパッケージのディスプレイ方法まで対応と至れり尽くせり。技術面などの下地を社長が整備し、息子である新居慶二常務取締役がサービス内容を考えてウェブ展開した。
新居常務は企業支援にも力を入れている。これはパッケージ抜きの純粋な支援活動。顧客の話を聞いては実施中の行政支援を紹介したり、損得勘定抜きでコーディネーター的な役割を果たしているのだ。「自分自身も入社後は大阪産業創造館にお世話になっており、積極的に行政支援を活用してきました。ですから企業の経営に関して、少しでも手助けできれば」。最近では創造社デザイン専門学校の力を借りて、生徒の課題としてウェブサイトと販促ツールを制作するしくみをつくった。「なにか違う可能性を見つけないとダメかなと。まったく違うところでの活動が、いつか本業に返ってくると思うので」。そんな想いに突き動かさせるように精力的に活動している。
>紙面からの続き
会社である以上、地域に貢献するという使命がある。
顧客支援だけでなく、地域貢献でも新居氏の活動には眼を見張るものがある。新居紙器では5年前から八尾の福祉作業所に、手作業が必要なパッケージ製造を依頼して雇用を創出している。「今後は大阪工業大学の皆川健多郎教授に協力を仰いで、福祉作業の方でも今より生産性が上げられるように考えています。専門家の意見を取り入れパッケージを工夫すれば、町工場並みに生産性が上がるかもしれない。そうすれば仕事も増え、彼らの給料も上がりますから」。これには顧客である洋菓子店も賛同してくれ、箱の組み立てから商品つめ、できれば出荷までしてもらえるように準備をしている。「これが成功して違う地域でも導入してもらえたら嬉しいですね」。さらに、昨年9月からは同じパッケージでも封筒や貼箱専門の製造会社、営業力の強い紙器加工会社など5社ほど集めてチームとして活動をはじめた。「お互いの強みを集めれば、小規模企業ならではの小回りの効いた対応とか、パッケージのプラットフォームがつくれるんじゃないかと考えています。今年中にはそれをつくってみんなで展示会に出たいですね」
新居紙器株式会社
https://www.arai-shiki.co.jp/
八尾市太田新町8-218
TEL 072-949-2744