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自在に音を楽しむ
ファンスピーカー。
ふだんはデスクに置いて聞くBluetooth小型スピーカー。それがリビングで映画を観るときには、首掛けサラウンドデバイスに早変わり。それが「popen」。3チャンネル方式を採用することで、その可愛い外観からは想像できない迫力と広がりのサラウンド音響で「感動体験」を提供してくれる。開発したのは自在設計の代表社員、八田敦司氏。大手電気メーカーでエンジニアを経験し、独立。自分でプロダクトデザインをした「popen」は、ぽっぺん(ビードロ)の名前どおり、ほかの首掛けスピーカーとは、一線を画すキュートな形。これはラジカセのように据え置くための造形を模索し、最初はダンボールから試作を重ね、使い勝手も改良していくうちに、たどり着いたカタチ。
この商品を開発したときに、いちばん最初に考えたのが特許だという。「会社員時代に特許申請書はよく書いており、“新しいものをつくったらまず特許”という考え方」。独立後、ソフト産業プラザiMedio(現・ソフト産業プラザTEQS)に在籍していたときに知り合った、(一社)大阪発明協会の人に相談して申請を手伝ってもらった。同社は短い開発期間中に特許・意匠・商標の3点を押さえるという知財戦略を実施し、平成30年度大阪府中小企業等外国出願支援事業にも採択された。2年前に開発をはじめた頃は、首に掛けるタイプのスピーカーはほとんどなく、ユーザーや用途が限定されてしまうニッチ性に課題があった。そこで「popen」は発想を逆転させ、「置いて聴く」ことを基本に日常使う小型スピーカーに首掛け機能をもたせることで、より多くの人が気軽に使えるようにした。その後大手メーカーから次々と首掛け式のスピーカーが発表されたが、「戦略としては、市場が広がればこの商品の特徴が際立ち、シェアは取れるはず。機能性も高く、通話やスマートフォンの音声操作もできますから」。将来的には「popen」と連動して、AIスピーカー的な役割のできるスマートフォンアプリも開発予定だ。
>紙面からの続き
自在設計の「popen」の原型、それはラジカセ。ウォークマン世代で「将来はソニーに入ってウォークマンをつくる」のが夢だった八田少年。中学校に上がるときに、ずっと欲しかったラジカセを買ってもらえた。「ラジオ講座で勉強する」という親のもくろみとは裏腹に、FMラジオを聞いてはエアチェックする日々。そして次第に、オーディオそのものに目覚めていく。あるとき壊れてしまったラジカセを解体してみた。そこで「ヘッド部分をいろいろ調整すると、格段に音が良くなる事に気付いた」。アナログオーディオは、自分で調整できるのが面白いところ。高校生の頃にはCDが発売されたが、デジタルには自分で手をかける余地が残されていなかった。そこでオーディオへの興味はいったん冷める。次に家庭用ゲーム機で、ソフトウェアのプログラミングに興味を持ち、入社した大手電気メーカーではパソコンソフトの開発にたずさわった。巡り巡って独立後手がけたのは、やはりオーディオ。それもオーディオに目覚めるきっかけとなった「持ち運べるラジカセ」だ。
自在設計合同会社
https://www.jizai.design/
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