MOBI6
ものづくり企業の次の一手は? 毎号6つの旬な記事で熱い「変革と挑戦」を紹介するモビロク。
現状打破のヒントやモチベーションアップにつながります。
設備投資と内製化を進め、
提案型企業へと成長。
多くの人の目に触れるが、そこには製造する会社の社名が入らない。それがパッケージ。メーカーの黒子や縁の下の力持ちのような存在。時代のニーズに合わせた変化も求められ、「一時期、企業がパッケージにかけるコストを削減した時期もありましたが、現在では売り場で映えるパッケージが求められており、同時に売り場のディスプレイとしてもパッケージのデザイン性が強く求められています」。そう語るのは巽製函株式会社の巽 教代表取締役。祖父が「貼箱」と呼ばれる手作業で貼るパッケージづくりをはじめ、先代がトムソン機を導入して製造ラインを拡大。3代目となる巽氏によって、新たな改革が進行中だ。
「企画力がなければ、価格競争に巻き込まれる」と、入社後から企画会社とコラボ的に仕事を進めていた巽氏。そんな矢先、大手の取引先を失う。これをきっかけに大量生産型から小ロット多品種へと方向転換を図る。また先の企画会社がプロッター部門を切り離すことになり、オペレーターと一緒に引き受けた。その後、社内にデザイン事業部を設けデザイナーも採用。「ものづくり補助金でレーザー機を、2015年にはインクジェット印刷機を導入してアクリルへの印刷もできるようになりました」。オンデマンド印刷機も3台所有し、展示会のポスター、パンフレットなどのDTP印刷から、ノベルティなどの販促商品の提案、製造、加工まで一貫生産できる体制を整えた。
そこから一気に仕事の幅が広がり、パッケージ以外の顧客も着実に増えている。最近ではアニメ業界にも参入。こちらでは新規提案から商品開発まで行っている。そうしてできたアニメグッズを入れるものを、イベント用につくって欲しいという依頼から生まれたのが、初のオリジナル商品の「BOXガシャ」だ。もとはアパレル企業デザイナーをしていた巽氏、企画やデザインする人の気持ちがわかるから、社員には「面白そうなことなら、とりあえずやってみたら」と言う。設備、企画提案力、社員のやる気が揃った今、「いつかは自社商品でヒットがつくれたら」という夢が叶う日も近い。
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TSデザイン事業部は若手中心で、サブカル好きが多い。アニメ業界のノベルティ商品に参入できたのも、彼らのコネクションがきっかけだったという。「好きなものを考えるのは楽しいんでしょうね。クライアントとの会議にも出席して、自分たちが思いつかないような提案をどんどん出してくれる」。そう頬をゆるめる巽氏。アニメ業界は不況知らずのビッグマーケットであり、海外からも熱い注目を集めている。巽氏は「全然詳しくない」「覚えられない」と言いながら、そこはビジネス。年2回東京ビックサイトでおこなわれる一大イベントであり、1日約20万人もが来訪する「コミケ」や専門ショップ「アニメイト」にもみずから足を運んで、しっかり現場を視察。ファンの熱量やリアルな販売の現場を肌で感じている。
巽製函株式会社
http://www.tatsumi-hako.co.jp/
藤井寺市北條町10-12 TEL 072-939-0840