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カーテンレールづくりの技術が
街を、世界を変えていく。
カーテンレールと聞けば、誰しも同じものを想像するだろう。しかし岡田装飾金物株式会社の事例を見れば、そんな既成概念も吹き飛ぶ。同社のカーテンレールは工場、店舗などで使われるタイプがメイン。代表的なところでは大型工場・倉庫の大開口部にビニールシートを吊るして雨・風を防ぐ大型カーテンレールがある。シートの端に縦のポールをつけることでピタッと閉まり、冷暖房効率もアップさせる。東日本大震災後の省エネやエコへの関心も追い風となって、この製品から同社の躍進がはじまる。
1921年創業の同社はその名が示す通り、装飾金物である家具の金物からスタート。ホテルの装飾品などを扱っていた関係で内装や一点物の装飾金物がメインであったが、先代が既成品製造へと舵を切る。時おりしも70年代はじめの高度成長期、住宅も増え生活様式も和から洋に変化した頃である。そして次代を見据えて産業用にも進出。先の大型機能カーテンレール「OSエコレール」を製造してわかったのは、まだまだ可能性がある市場だということ。4代目となる岡田和宏代表取締役曰く、「吊って動かすことのみに徹している」。ものをつくるだけでなく、用途提案できる強みもある。「カーテンレールを2本這わせれば、開閉式の屋根ができ、砂場やプールの上に設置することで、ずいぶん涼しくなるでしょ」。事例を見れば見るほど、そんな使い方があるのかと驚かされる。
商品開発のアイデアはまず顧客の要望をカタチにすること。要望を丁寧にすくい取れば、いくらでも商品はできるし、その使い方も一緒に考えることができる。また営業と製造現場が一体になっている点も大きい。営業が持ち帰った案件を、すぐに工場へ相談に行くことができるためだ。「もともと一点物をつくっていたから技術力がある。だから別注対応や試作、新商品もスピーディにつくれるんです」。新しいものをつくることで現場もワクワクする、すべてが好循環で回りだす。「これからも世の中に必要とされるものをつくっていく」。その言葉通り、想像もつかないところで、同社のカーテンレールに出会うことだろう。
>紙面からの続き
スタンディングの小さな飲食店はドアが開け放たれ、雨風をしのぐため申し訳程度にビニールシートがかけられていることが多かった。それがある時期から、ドアのようにしっかり閉じられるタイプが増えてきたように感じる。これも岡田装飾金物のOSエコレールの功績。それはさらに進化し、たとえば高級店などデザイン性が高い店舗であればレールを黒にしてお洒落にするなど、店舗のカタチをも変えてきた。あらためて街中を見わたすと、いたるところで同社のカーテンレールが使われているシーンに出会うだろう。「これまでならビニールシートを吊り下げていただけのものが、私たちが密封性という機能を持たせることで、そこにデザインを加えることが可能になったんです」(岡田氏)。同社が新商品をつくって用途提案すれば、採用する側のアイデアの扉も開く。カーテンレールというパーツが、街の風景を変える。こんな痛快なことはない。