MOBI6
ものづくり企業の次の一手は? 毎号6つの旬な記事で熱い「変革と挑戦」を紹介するモビロク。
現状打破のヒントやモチベーションアップにつながります。
自動車部品製造で磨いた技術を結集。
わくわくするようなものづくりを。
インサートワイヤーとは自動車シートのウレタンフォームに入っている自動車ワイヤー部品。1987年の創業以来、このインサートワイヤーを中心に製造してきたのが毎日発條だ。しかしインサートワイヤーは、シートクッション内部に入って埋まってしまう部品なので、自社が誇る曲げ加工の技術は人目に触れることはない。「安全を徹底し、1本目から20万本目まで安定した品質を供給できる技術があるのに、それを人に見てもらえないのはもったいない」。同社の前山綾子氏はそう感じていた。
それと同時に今後の会社の柱となるものも模索していた。今まで、厳しい自動車の製造業界で培った線材曲げ加工技術を活かして、時代の要求する、デザイン性に富んだ高品質・高付加価値なオリジナル製品が作れないかと考えた。「個人的に帽子が好きでたくさん持っていたのですが、その収納に困っていて。クローゼットに入れたり、フックで吊るすと型崩れをしてしまうんです。それで帽子を飾れるオブジェをつくることに決めました」
とはいえノウハウもないので、大阪府内の中小企業者を対象に、専門家による商品開発や販路開拓を支援する「大阪商品計画」に応募し、アドバイスを受けることに。またイメージを図面にできないと先に進めないと、前山氏は並行してCADを学び始めた。帽子を載せる部分はすぐにイメージができた。しかし3DCADで作成した図面で曲げ加工をしてみると、ワイヤーの重なりで、帽子を置く上の部分が浮いてしまった。何度もやり直し、太さも長さも限界まで挑戦した結果、直径8mm、長さ2mのアイアンワイヤーで美しい曲げ加工を実現。1本のワイヤーが描き出す大胆なアールの曲線が際立つ「Hat Tree」が誕生した。「これを機に社内に雑貨部門も立ち上げブランディングしていきたい」。今後はデザイナーとも組む予定で、いろんなアイデアが生まれつつある。
>紙面からの続き
毎日発條は、自動車業界の非常に厳しいコスト、デリバリー、クオリティ基準を長年クリアしてきた技術力を誇る。量産・供給体制は整えられており、全国からの注文にも対応できる。最近では「最新型3Dベンダーの導入による自動車内装部品製造の高精度・低コスト・短納期化計画」がものづくり補助金に採択され、ロボットアームを昨年12月に導入。金型、芯金部分を3Dベンダーに設定して、使いこなす「線材曲げ加工」こそ、自社の技術。
それを次世代に継承していくことが大切だと考えている。「これまでは90%が自動車関係でしたが、今後は会社を支える屋台骨となる事業を増やしていきたい。技術をひと目に触れさせたいという想いと、これまでの実績があるからチャレンジできたと思います」(前山氏)。4年前に立ち上げた宮城県の東北工場では近ごろ、板金加工もスタート、線材加工と板金加工の技術を持つ総合金属加工業としての可能性も見えてきた。今後は「大阪ものづくり優良企業賞」の受賞にも意欲を燃やしている。
毎日発條株式会社
https://www.mainichi-metal.com/
大阪市西淀川区竹島3-1-25 TEL 06-6472-0370