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ものづくり企業の次の一手は? 毎号6つの旬な記事で熱い「変革と挑戦」を紹介するモビロク。
現状打破のヒントやモチベーションアップにつながります。

理論でなく、
経験が「過熱水蒸気」の可能性を広げる。

過熱蒸気発生装置の現物は驚くほど小さい。シンプルな構造で、基本的に消耗するような部品はなく、強固で故障も少ない

「過熱蒸気は昔からある技術なのに普及しておらず、そのため過熱蒸気の特性や使い道も知られていなかった」。そう語るのは野村技工の創業者である野村正己代表取締役。過熱蒸気はボイラーなどでつくられた飽和水蒸気を、さらに加熱することで生成され、170℃以上になるとその特性を発揮する。酸素を含まない不活性ガス状での応用が可能なため、加工物を酸化・燃焼させずに加工・減容・炭化させることができる。また乾燥能力にも優れており、熱風乾燥に比べて3~5倍の乾燥能力を持つという。こんなにすぐれた過熱蒸気の普及を妨げてきたのは何か。それはひとえに「大量発生の難しさ」だ。
「過熱蒸気で大切なのは温度よりも発生蒸気量。対象物に、より多くの過熱蒸気を、いかに当ててやるかなのです」。さらに低い電気容量で大量の過熱蒸気を安定して出せるか。電気容量や装置を大きくしたり、装置数を増やすとランニングコストに影響する。そのような課題をクリアにする、従来とまったく異なる「発熱体構造」を持つのが、過熱蒸気発生装置「Genesis(ジェネシス) 」だ。100%過熱水蒸気だけを利用した実用加工機で、ヒーターなど補助熱源を使用せず、短時間での処理ができ、低酸素状態なので発火せず、炭化の連続処理も可能。食品関連、プラスチック成型機や鋳造・乾燥・炭化・焼成・脱脂などさまざまな機器に組み込まれた実績を持つ。
同社は製缶熔接加工や水産関連の乾燥機の設計・製作・販売業として1961年に創業、現在は過熱蒸気発生装置の設計・製造を一貫しておこなう。このGenesisは10ヶ国で特許も取得し、2015年には大阪ものづくり優良企業賞 知的財産部門優秀賞を受賞した。現在バイオマスによるクリーン発電が注目されているが、そういった再生可能エネルギー関係からの問い合わせも多いという。「自分たちは職人。理論よりひらめきを大切にしてきた。だからこういう構造がつくれたと思います」。過熱蒸気の世界は今ようやく入り口に立ったところ。野村技工はこれからもその可能性を広げていく。

>紙面からの続き

現在、野村技工が製造するGenesisが活躍する業界は多岐にわたる。その礎をつくったのは、あらゆる産業界の装置製造に携わってきた経験と技術。1961年の創業当初は溶接や製缶を中心とし、1968年には水産関連の乾燥機を専門に設計・製作販売。これは水産加工会社からの依頼で乾燥機を手がけたのがきっかけ。当時は干物や煮干しをつくるのに、浜辺で「蒸籠」といって網の入れ物のなかに入れて積み重ね釜に入れてボイルする、いわゆる釜揚げをしたのち、手作業かつ天日干しで乾かしていた。でき上がりまでに数日、もちろん雨の日は乾かすことができなかった。そういった加工時間を大きく短縮させ、天候に左右されずに安定供給できるこの乾燥機は、水産加工の現場に革命をもたらした。以降約20年にわたって、野村技工は水産加工の乾燥機のパイオニアとして、シェアの80%を占めるほどに成長する。また乾燥機製造が軌道に乗りはじめるとボイラーの製造販売もはじめる。100℃の蒸気が熱交換器を通して水を沸騰させるのだ。蒸気を有効利用するための装置として、ボイラー製造を手かげたことが、今につながっている。

野村技工株式会社
https://www.nomura-genesis.com/
東大阪市柏田西1-14-15 TEL 06-6722-0967

大容量の過熱水蒸気発生装置のGenesis(ジェネシス)。その特徴は装置の心臓部に組み込まれた、発熱体とする熱交換器の内部構造にある。発生装置1台あたり電気容量20kwで最大120kg/hの過熱蒸気発生量、約5分で500℃到達後、出力70%の連続運転に移行する省エネに配慮した設計となっている

木材を炭素化、乾燥・圧縮して木質バイオマスのペレットにする。生木から炭になるまで約10分、全工程でも25分ほど。炭素化することでカロリーも30%アップ

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