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ものづくり企業の次の一手は? 毎号6つの旬な記事で熱い「変革と挑戦」を紹介するモビロク。
現状打破のヒントやモチベーションアップにつながります。
技術のブランディングから躍進。
未来社会の技術をつくる。
精密な設計、複雑な曲げ加工、そんな匠の技があっても技術を売るのは難しい。1968年の創業以来、事務用品から空調、デジタルまで幅広い機器のプレス用金型を手がける小西金型工学では、技術をブランド化して価値を高めることに成功した。機械加工に加え複数工程が必要であった複雑な加工を、プレス機1台で実現できる技術を「コーニシュ金型VE技術」とネーミング。2012年には「ものづくり日本大賞」を受賞し、認知度とともに業績を飛躍させた。代表取締役の小西修史氏は、勉強会やセミナーに参加するなかで「技術のブランド化」を考えだした。現在はそのイメージを高めるべく、さらなる技術の付加に着手している。「工程の短縮だけでなく、AIによる監視機能を付加することでブランドを進化させていく。結果として職人技でしかできなかったことを可能にして、生産性向上につなげていければ」
以前から積極的に進めてきた産学連携も5大学と継続中。九州の高専とは、AIを使って加工段階でロスを減らす技術を共同研究中で、そこには次男の小西遥大さんの姿も。現在大学2年生で大学では機械工学をベースに、ロボット・メカトロニクス技術を身につけ、現場でも学んでいる。「AIに関しては彼に任せている」と小西氏。長男は大手企業で修行中と、ものづくり企業が悩む事業承継も順調に進む。「息子たちが“継ぎたい”と言える会社にしておかないと」。現在はそのための基盤固めに尽力している。
同社では医療・水素・次世代自動車と、国が提唱する未来社会の分野に携わっている。最近ではKSP(近畿中小企業連携プロジェクト)にも参加。たとえば電気自動車は水を嫌うため、従来よりも強くて軽い「水を弾く素材」が求められるが、ここでは金型の枠を超えて高付加価値な部品開発に関わっている。「こういった最先端のプロジェクトに参加できるのもリーマンショック後、セミナーに通って人脈を広げ、チャレンジし続けてきた実績があったからこそです」。今後は自社の躍進のみならず、人材不足、同業の廃業といった現状を打破して、業界全体を盛り上げていきたいと熱く語った。
>紙面からの続き
小西金型工学では大学と技術開発に取り組んでいる技術力や将来性に興味を持った若手技術者が入社し、さらに大学で工学分野専攻の息子たちが、後継者たるべく着々と準備をはじめている。長男は製造業大手に就職し企業の経営手法・製造工法を学び、次男の小西遥大氏は通学しながら自社で現場経験を積みはじめた。遥大氏は高校2年生の頃から機械の掃除をしたり、現場の手伝いをしてきた。祖父や父が金型と真摯に向き合う姿を間近で見て、いつしかこの道に進みたいと考えるようになる。
「祖父である会長からよく言われるのは“一人前になるのは10年後”ということ。普通の人は大学を出てから経験を積むことになりますが、自分は学生時代から学ばせもらっているので、一歩も二歩も先に進めている気がしています」。彼が卒業する頃は、AIもさらに進化しているはず。そこは大学で最先端工学を学び、英語の論文も読みこなす遥大氏の出番となる。「だからこそ現場で基礎をきっちり学んで、万全の体制で働けるようにしたいです」
株式会社小西金型工学
http://konishikanagata.sakura.ne.jp/
東大阪市中石切町6-4-47 TEL 072-981-3477