ものづくり企業の次の一手は? 毎号6つの旬な記事で熱い「変革と挑戦」を紹介するモビロク。
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樹脂切削加工の利点を活かして日進月歩する医療技術の力に。
多くのものづくり企業が参入を狙う医療機器産業。試作メーカーのリングスはこの業界で高い評価を得てきた。医療機器メーカーとの仕事を、宮本義彦代表取締役はこう語る。「手術の結果、すなわち命にかかわるものに携わることへの責任感と、同時に前例がないものをつくれる面白さがあります」。医療機器は「こんなものが欲しい」という漠然とした話からはじまり、用途から求められる機能性、材質の特性・入手性まで検討したうえで最適な製作設計を提案していく。また実際に病院で使われる製品も小ロットで製造しているという。
最初は要求の幅が広く、それをすべて満たすことはほぼ無理。いろんな要素をそぎ落とした実際の試作品を目にすると、先方も何が必要で何が必要でないかがはっきりしていく。そうやって試作を重ねながら完成に近づける。ところで樹脂で透明といえばアクリルがイメージされるが、同社にはそれ以外の樹脂を透明にできる技術がある。このメリットはこれまで「内部の確認用」と「素材感の確認用」と、2種類必要だった試作品をひとつにまとめられること。また製品に実装される樹脂で透明な試作品を作れば、それで衝撃テストもおこなえるためコストも削減できる。「いい意味で驚かせたい。完成度だけでなく、納期でも予想を超えることを心がけています」。試作の現場はつねに状況が変わるため、同社では1日3回の3分間ミーティングをおこなっている。これはリーダーが、全体を俯瞰しながら機械の稼働状況や作業の進捗を確認、ときには仕事を再采配することも。「ものづくりをする人は職人気質で、自分の仕事に没頭して全体の流れが把握できなくなり、遅れを見過ごしがちです」。それをリセットして臨機応変に動ける体制をつくっている。社員教育にも力を入れており、最近取り入れたのは「褒める」こと。毎日の朝礼でミーティング・リーダーが誰かを褒める。この役割は毎日変わるので、おのずとみんなが日々「褒めること」を探す。「効果はわかりませんが、褒めることを探すという行為が大切なんです」
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大手家電メーカーの試作品を1年間かけてつくることからはじまったリングスの歴史。タイトなスケジュールでも業界のルールを知らなかったので、言われるがまま納品してみせた。すると「すぐ対応してくれる会社」と評判となり、仕事が増える。「無知ほど怖いものはない」と宮本氏は語る。それは素直さや柔軟さにつながる。
「少しでも知っていれば戸惑うことも、躊躇なくできてしまった」。医療機器産業への参入も、その難しさを分からなかったから、ハードルの高さにひるむことなく飛び込めた。何に対しても自分のなかに先入観やこだわりはなく、アンテナを張って柔軟に取り入れているという。「面白そうだやってみようという気持ちが先に立つ。ダメだったら止めればいいだけ」。その考えは社内にも浸透しており、現場からも「こんなことをしてみたい」という提案が多く、「いいね、やってみたら」と宮本氏も背中を押す。だからか、この会社は風通しのよさがある。
株式会社リングス
https://www.rings.jp/
守口市南寺方南通2-16-23 TEL 06-6994-5355