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ものづくり企業の次の一手は? 毎号6つの旬な記事で熱い「変革と挑戦」を紹介するモビロク。
現状打破のヒントやモチベーションアップにつながります。

照明板金に半世紀以上携わる職人の技が注ぎ込まれた捕虫器。

同社の強みのひとつが、110wの長尺の蛍光ランプに対応できる機械を所有すること。工場などの施設用に3mまでの長尺に対する量産体制も整っている

曲げ工程は板金加工でもっとも技術が発揮されるポイント。トレテーラでもR形状の反射板の先端をカール曲げにすることで、捕虫紙のホールドを確実にする

照明がLEDに移り変わることで、大きな転換期を迎えた会社がある。1963年に創業し、特注施設照明器具の板金加工や作業デスク向け照明器具の製造を手がける西當照明だ。2012年後半、LED人気が高まり一気に受注が激減。リーマンショックで業績が落ち込んだところへ大打撃を受ける。自社製品を開発して展示会に出展するなど、開発型の企業へのシフトも図るがうまくいかなかった。「失敗の原因は、自分たちのコア技術の捉え方が間違っていたから」と当時を振り返る代表取締役の西當和久氏。「当社は板金ありきと考えていたが、本当の強みは照明器具製造。特注照明器具では反射板がR形状のものが多く、R曲げ加工を得意とすること。同様に特注製品の設計製造のノウハウもあり、多台持ちのため量産対応もできる」
打開策が見つからぬまま迎えた2014年夏、工場に隣接する水田が一時的に休耕したことで大量の虫が発生、飛来するが、鉄板を多く扱うため殺虫剤が使えずに煩わしい思いをした。これを機に「捕虫器」に目を向け、粘着式捕虫器の開発に着手。調べるほどにニッチな分野だと分かった。同社には携帯型の照明器具を長年製造してきた技術も材料もある。今こそ自社のコア技術を100%注ぎ込む時、そう確信した。そうして生まれた粘着式捕虫器「トレテーラ」は反射板の工夫によって10W型で20Wと同程度の誘虫力に上げられている。
難しかったのは粘着紙を蛍光灯の近くに置くこと。熱がこもると粘着紙が発火する可能性があったため、本体に穴を開けることで熱を逃がし、課題をクリアした。また捕獲した虫が正面から見えないように、片面仕様の粘着紙を特注するなど改良を加え、2016年3月に販売。翌年には「トレテーラrumie( ルミエ)」も発表された。これは二酸化チタンを塗布したブロック状の消石灰を内蔵したモデルで、ブロックにブラックライトを照射し、発生したCO2と温熱で虫を呼び寄せる。すでに化粧品関連を筆頭に殺虫剤が使えない金属加工業など、製造業によく売れているという。50年以上の技術の蓄積が思いもよらない場所で花開いた。ここから西當照明の第二章がはじまる。
自社製品の開発と並行するように、社内改革も進めてきた西當氏。LED照明普及の影響で、受注量が減少すると、MOBIOで開催されるセミナーや勉強会に参加するなど打開策を求めて動き出す。今では3S活動も定着し、就業規則の制定や展示会への積極的な出展、さらには自社製品によって社員のモチベーションも上がってきた。またインターンシップとして、地元の中学生や高校生の受け入れもはじめた。頭に描いた姿に少しずつ近づいていると語る。「東大阪の小さな町工場であっても、日本を代表できるような工場を目指して、これからも努力を続けます」

株式会社西當照明
http://www.saito-syoumei.jp/
東大阪市菱江2-3-12 TEL 072-964-5110

反射板形状と合わせた独自の形に、板金の美しさも感じさせるトレテーラrumie。高温防止の放熱穴、電流を一定の値に保つ安定器内蔵と自社のノウハウを注ぎ込んだ

毎朝の3S活動により整理整頓された工場。切断、プレス、溶接など各工程において機器を複数台保有し、数多くの加工を同時進行でおこなう体制を整えている

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