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“ものづくり×ダイバーシティ”
多様性のある人材活用やITの導入で、新たな時代を切り拓く。

現在、グローバル化による競争の激化、労働時間と価値の関係性の変化、人口・労働力の減少など、企業を取り巻く環境が劇的に変わってきている。優秀な人材の採用に頭を悩ませるものづくり企業の経営者は多い。女性やシニア世代の活躍、外国人労働者の受け入れなど従業員の確保や、それをサポートする制度も求められている。働き方の多様性が拡大する現代、事業の拡大や発展に貢献するコア人材を発掘し、長く活躍してもらうにはどうしたらいいのか。同時に中小企業が生産性向上を実現するためには、ITを活用した働き方の多様化も必須課題である。今回はそれらの課題に対して先を見据えた対策を講じ、自社の独自性や強みを発揮している3社の代表に、それぞれの会社の人材を「雇う」「磨く」「継ぐ」と3つの視点から語っていただいた。

製造業の工場のあり方が変わってきている。

ファシリテーター
松下 隆氏
大阪府商工労働部
大阪産業経済リサーチセンター主任研究員

フセハツ工業株式会社
代表取締役社長
吉村 篤氏

松下 本日は多様な人材の活用に、企業としてどのように対応されているかをお聞きします。まずは自己紹介からお願いします。
佐々木 先代が刃物の熱処理を始め、次に刃物の熱処理をする機械を製造したのが当社の基礎です。現在はフードスライサーを中心に、設計や製造、ソフトの開発まで一気通貫でものづくりをし、販売、メンテナンスまで手がけています。
吉村 ハイテクとローテクが合体したバネの製造が当社の特徴です。ハイスペックな最新のNC旋盤設備を使ったものから、受け継がれてきた職人の技術を活かした一点もの、量産まで手かげています。生産の1/4はマニュアル自動車(MT)のクラッチ用リングバネで、この分野に関しては国内トップシェアです。
山本 当社は精密な金属加工と計測評価という技術を、コアテクノロジーとしている会社です。切削・研磨・接合といった基盤技術の精密な加工技術と、金属加工時に発生した熱や伝わってくる力を「見える化」できる技術が大きな特色です。この2つを融合させながら、独自のフィールドを開拓しています。
松下 次に戦略や将来像を教えて下さい。
佐々木 食品機械の業界でトップに立ち、世界でも知られる企業になること。もうひとつは当社の機械はほとんどステンレスでつくっています。これまで培った技術をもっと磨いて、医療という新しい分野に挑戦したいと考えています。
吉村 自動車のMT部品では世界でもトップのシェアを目指して、オリジナル技術の改変などに精進しています。同時にひとつの特注品から手がけられる工場であることにもこだわりたい。バネ製造だけでなく、プラスαの表面処理や塗装までワンストップで量産につなげ、日本のものづくりを支える工場にしたいです。
山本 製品を販売して収益を上げるビジネスモデルから、プロセスや体験を売る会社へ。そのために匠の技とデジタルテクノロジーを融合させた生産性の高い加工技術を生み出し、その取組みを顧客にも提供していく。もう1点はラーニングファクトリー(学習型工場)への転換。ネガティブな工場のイメージを変え、未来型の工場へと変貌を遂げる体験も提供できる企業を目指します。

「雇う(採用)」では、魅力的な職場であることを伝えることが大切。

吉泉産業株式会社
代表取締役
佐々木 啓益氏

株式会社山本金属製作所
代表取締役社長
山本 憲吾氏

松下 ここからは本題である「人材と働き方」について語っていただきます。企業における人材は「雇う(採用)」ことから。良い人材を集めるための工夫をお聞かせください。
吉村 採用にはまず出会いが必要なので、自社のウェブサイトに重きを置いています。自分の考え方や、近頃は製作動画を数多くアップしています。最近の若い人は動画を重視する傾向にあり、動画を見て「この製品をつくりたい」と遠方から応募してきた人も。時代の変化で、ここ数年は動画の威力を感じますね。
山本 私たちと学生では感覚が違いますよね。ですから当社では採用に関する権限を、より学生に近い世代に任せています。自分流に工夫して、「若い人が興味をもつ媒体に変えていきなさい」と。そしてなにより大切にしているのは、将来の会社やものづくりに対する夢を、私が自分の言葉で語ることです。
吉村 それも大切ですよね。採用に関しては私が面接して、そこではやる気や熱意を見ます。面接も一期一会。一人ひとりとの出会いをいかに大切にしていけるか。気持ちとしては全員採用したいし、採用した以上は社長を目指して頑張って欲しい。
佐々木 当社では新卒の採用を30年続け、現在約100人の社員の4割ほどは新卒採用です。景気の悪いときでも必ず数名は採用してきました。その人材が、今や立派な戦力になっています。雇用に関していうと私は女性と外国人がキーだと考えています。優秀な男子学生は大手志向が強い。それならガッツのある女性と外国人を採用しようと、ある時から方針を変えました。
吉村 それはいつ頃からですか?
佐々木 7~8年前です。同時に女性を採用するのであれば、保育園の必要性も考えました。今春ようやく念願かなって社内保育園を開設します。また外国人研修生も優秀な人には、3年間の期限が過ぎても技術職として再度働けるようにしています。
山本 市街地を一望できる社員食堂も立派ですね。
佐々木 ここはレストランだった建物を購入して開いたんです。それと福利厚生でいうと、以前おこなっていたリフレッシュ休暇の9連休を今年から再開させました。
松下 働き方の多様化のなかで、女性の雇用はキーワードのひとつです。みなさんの会社では、女性に工場の機械のオペレーションを任されていますか?
佐々木 採用した女性の中に、大学卒業後、旋盤や加工がしたくて技術専門校に入りなおしたという人がいたので、驚きました。非常に優秀な人材で、現在は育児休暇に入り社内保育園の利用者第1号にもなってくれて嬉しい限りです。そういった環境が整っているのを見て、入社を希望する女性も増えてきました。
吉村 当社もここ数年女性が増えています。工場で機械を扱う約4割が女性で、未経験者ばかり。私が社長に就任した頃は、60代以上が従業員の4割を超える構成でした。そこで男女関係なく、やる気のある人はどんどん採用した結果です。機械を使ったものづくりがしたいのに検査しかさせてもらえない、経験がないので面接さえ受けられない、そんな女性はたくさんいます。しかも彼女たちは情熱があるから成長も早いんです。
山本 今年も現場オペレーターとして女性を採用し、今後も増やしていく予定です。当社ではものづくりは男性中心の職種でしたが、女性が働きやすい制度や環境づくりをどこまで組み込めるかが、企業の成長の鍵を握ると思います。
佐々木 女性の活躍するフィールドは、ものづくりの世界にどんどん広がっていく可能性があります。だからこそ企業としては受け皿をしっかり用意しないといけない。

女性や外国人、シニア世代の活躍こそ、生き残りの道。

かつての3Kのような工場のネガティブなイメージを払拭し、未来型のラーニングファクトリーへの変貌を目指す山本金属製作所。今まで感性や感覚で伝えてきたことを数値化することで理解しやすくするため、IT化に積極的に取り組む。匠の技とテクノロジーを融合させたソリューションなどの開発にも余念がない

企業が集積する工業団地、津田サイエンスヒルズに立地する吉泉産業。社員のワーク・ライフ・バランスを重視する同社では、女性社員に結婚・出産などのライフイベントがあっても第一線で活躍できる環境を用意。さらに2018年4月、団地内に「吉泉さくら保育園」を開園予定。子育てと仕事の両立をサポートする

松下 2つめの課題は人材をどう磨くか。現場に女性が増えたという話が出ましたが、女性に対する教育や設備環境については、どのような取組みをされていますか。
佐々木 マシニングセンタや旋盤の担当として女性を採用していますが、現場の力仕事は男性に任せるなど「体力差を補うこと」を工夫しています。
吉村 「男女同権」ですね。採用時から一貫して男女差を意識しないようにしています。背が低い女性が機械を扱いやすいように専用の台をつくったりはしますが、高齢者や障がいを持つ社員に対しても同様に接しています。また女性のマネージャー登用も、個人のマネジメント能力に適性があったからです。
山本 まずは環境整備が基本。もう一点は「なるべく任せる」。できるだけ彼女たちに主導権を持たせ、学びたいという研修があれば受けさせます。当然、失敗もあります。でも自分の意志で選択した失敗は、経験としてフィードバックされるはずです。それと女性社員への差し入れは男性よりも気を遣いますね(笑)。
吉村 そんなことも気を遣われているんですか(笑)。
松下 女性以外の社員の育成ではいかがですか?
佐々木 団塊世代の有効活用ですね。社内での教育も考えて、大手企業のOBを技術顧問という形で採用しています。大手企業で高度成長期を駆け抜けた世代は、技術だけでなくパワーもありますから、彼らをトレーナーとして社員を育てています。まだまだ元気な彼らに活躍する場を提供するとともに、持ちうる技術を伝承して若手の育成へとつなげていきたいですね。
吉村 今、現場の熟練職人はどんどん減っていますから。
佐々木 当社の場合は75歳の方でも、ものづくりが好きな人には仕事を続けてもらっています。切磋琢磨してきた技術力や知恵はまだまだ現場に活かせます。
山本 当社も大手企業で技術開発に携わった方が数名います。
佐々木 そこはやっぱり大事ですよね。
山本 はい。それもアドバイザー感覚ではなく、若い社員に技術の伝承を含めてノウハウを吸収させて、会社のものづくりに貢献してもらいたい。それと若手の育成でいうと、ポリテクカレッジ(職業能力開発大学校)※にも定期的に社員を行かせています。
佐々木 うちもポリテクセンター(職業能力開発促進センター)※で検査をされていた人に来てもらって、設計について教えてもらっています。

※ものづくりの基本を習得し、企業の製造現場で最新の技能・技術に対応できる人材の育成をおこなっている。

ITツールの活用は、働き方や人材育成にも改革を起こす。

男性も女性もいきいきと働くことのできる取組みを進める意欲ある事業者として、2017年には大阪府より「男女いきいき・元気宣言」に事業者登録をされたフセハツ工業。現場で機械をオペレートする従業員の約4割が女性であり、女性管理職も在籍。能力や意欲次第で男女差なく働ける環境が整えられている

松下 IoTやAIの新潮流が広がる一方、ITツールの活用と人材育成は融合されていくと思いますが、そのあたりいかがですか。
吉村 バネづくりでは、1本ずつのデータを取って蓄積しています。たとえメッキ屋のクセで荷重が変わったりしても、それもデータ化することで逆算して製造できます。
山本 それは素晴らしい。これこそ正しいITの導入ですよ。
佐々木 私たちも今後は「人の眼で見ていたものを機械に置き換える」仕事をしたいと考えています。たとえば最近よく話題になるAIについても、カット野菜用の機械の場合、これまで虫を取り除くのは人力でしたが、AIでできるように画策中です。
吉村 今後取り組みたいIT化は営業活動です。営業担当の日報もデータ化して無駄な動きのない営業データを作製し、経理のデータとつなげて経営分析していくためのソフトを開発中です。
山本 ちょっと掘り下げたら、ものづくり企業の仕事のなかにも、たくさんIT化できるものはあるんです。
吉村 超大量生産をしないので、段取り替えで現場が煩雑化してきますから。やらざるを得ない。
山本 多品種少ロットでやっていると、段取りと用具替えのオンパレードになりますからね。
吉村 だからそのへんの管理面は、どんどんIT化していく。
山本 その段取り替えやセット交換という時間のロスを、ITで解消しました。たとえば刃物の交換基準が職人の感覚と経験に頼っていたのを、センシングや情報収集によってロスを低減。売上と出荷数量が15年前と比べて約3倍に伸びても、工具代は変わりません。今後熟練工も引退するなかで、自分たちのものづくりのコアエッセンスを次世代につなぐには、「ITによる新しい技能継承のしくみ」をつくらない限り未来はないと思います。
佐々木 具体的にはどういうことをされているのですか?
山本 加工に使われる工具の中にセンサーとマイコンを内蔵し、職人の経験や勘に頼っていた加工情報を、工具から熱・振動・力といった物質的プロセスに数値化します。それをベースに新しい加工技術や人間の知恵を使って人工知能と融合させていく技術開発です。これで熟練工しかできなかった作業が、入社2~3年目の職人でも置き換えることができるようになります。

「磨く(育成)」と「継ぐ(継承)」をうまくやるには、その仕組みづくりが大切。

松下 数値化されていれば経験が浅くとも機械を扱える。人を育てると同時に仕組みも必要ということですね。最後の課題である「継ぐ」というのは技術の伝承だけの話ではなく、そういった仕組みの話にもなってきますね。
吉村 人が育つためにはなにより経験が大事。その経験を順序立てて踏ませてあげる「計画的経験」を会社が用意する。教えるだけでなく、目の前に課題を与えると、考えたり工夫をします。仕事を任せるのも経験させるため。そこには失敗も含まれます。それも会社のノウハウとしてためておく。入社から経営陣になるまでを、マップ化していくことを意識しています。
佐々木 各部門の人材育成も大切ですが、当社は次世代へのバトンタッチ「後継者の育成」が当面の課題です。経験と同時に若い新しい考え方を入れて経営に取り組んで欲しい。あと食品加工現場は人海戦術なので、難しい食品加工技術を機械に取り込んだ自動化を考えていて。人手不足解消にもつながりますし。
吉村 大阪近辺で小さなバネ製造業がなくなってきています。そういった町工場の技術も伝承するために、機械を買い取って改造して稼働させたりしながら、日本一のバネ工場をつくりたい。
山本 先ほどのIT化の話とは真逆ですが、「非合理のブランディング」も大切です。技術や知識といった要素をそぎ落としたとき、どこで差別化するかというと、顧客や社員に寄り添えるかとか、一緒に頑張ろうという気持ちではないかと。デジタルでは表せないものに、本当の付加価値は隠れている。人材育成や人と人とのつながりを大切にしなければ、企業の成長はありませんし、そこから発生した技術や商品、サービスをつくっていくことが、ものづくりの原点だと思います。
松下 多様な人材の活用など、企業の活性化に向けて独自の対応をされているのがわかりました。環境の変化に適応し、ITを取り入れながら人として成長できる環境を用意する。それこそものづくり企業が生き残っていくための戦略だと実感しました。

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