MOBI6
ものづくり企業の次の一手は? 毎号6つの旬な記事で熱い「変革と挑戦」を紹介するモビロク。
現状打破のヒントやモチベーションアップにつながります。
トライ&エラーの積み重ねで進化する。フロントランナーの新たな挑戦。
ECの急成長などで物流業界は飛躍的に発展し、現在は自動倉庫なども増えてきた。倉庫での商品の移動は、あらゆることが想定され、そこで使われる機器も扱う商品によって大きく異なる。たとえばフォークリフトは戦後まもなく、占領軍が神戸港で使い出したのが始まりといわれる。さらに狭い倉庫でもフォークリフトのような働きができるものとして生まれたのが、ハンドリフトだ。
をくだ屋技研は1934年の創業以来、油圧ポンプをベースにしたハンドリフトを中心に、どのような作業環境にもマッチする多彩な運搬機器を開発してきた。物流の 「載せる(LOAD)・運ぶ(MOVE)・揚げる(LIFT)」を原点に、多様化するニーズを的確にとらえた荷役運搬機械や環境機器は約450種類にも及ぶという。これほど種類が多いのは、事業所ごとに扱うものによって異なるパレットの幅・長さ・厚み・材質に合わせた商品展開と、さらには顧客が求める細かなカスタマイズに丁寧に応えてきた結果。「平均値からつくられた標準サイズのものもありますが、ほとんどがユーザーごとのオーダーメイドに近いですね。自社でイチから開発製造しているから、細かな注文にも対応できるのです」。そう語る代表取締役社長の林正善氏。これらのなかには、現場の声をすくい上げて開発されたものも多い。腰痛対応タイプや低音型などは、事業所ごとに異なる困りごとに対応するモデルだ。そういった現場の不満を解決するのが、業界のフロントランナーの役目と林氏は考える。「いつも営業担当に言うのは、製品を売りに行くのではなく、困っていることを聞きに行きなさいということです」。顧客が自社商品のどこに価値を求めるかを聞くこと。それが大切だという。同時に最終完成品のメーカーにとって、研究開発も肝である。
そんなハンドリフトのパイオニアが新たな領域に挑んだ。それがリハビリ用足踏み式車椅子「Joyfum(ジョイフム)」。関西大学研究室との共同開発で、堺市ものづくり新事業チャレンジ支援補助金の特定技術開発テーマ枠に選ばれた。
「Joyfum」は日常生活の中で移動しながら、簡単な操作で安全・安心にトレーニングすることが可能で、従来の車椅子の機能にはない「使用者が自分の力でステップを踏むことで前進」するのが最大の特長。遊び心を盛り込んで、つらいリハビリを楽しくするというコンセプトだ。同社の油圧ポンプのノウハウを注ぎ込みつつ、安全面から油漏れしないように水圧ポンプに置き換えられている。タイヤも共同で製作し、2016年11月から販売された。今までとは販売ルートが違うため、認知度を広げることから取組みを始めている。林氏は、自分たちの方法論を「一本足打法」にたとえる。「当社はこれまで、ハンドリフト一筋でやってこれた恵まれた会社です。しかし今、会社に力があるときこそ進化しないといけない。常にトライ&エラーを心がけること。これを嫌がると、企業として先細ってしまいます」。昨年は本社工場に隣接して新工場も開設し、新たなジャンルの製品開発にも踏み出した。「これからもビジョンを持ちながら、リハビリの世界だけでなく色々なことに挑んでいきたいですね」
株式会社をくだ屋技研
http://www.opk.co.jp/
堺市美原区丹上263 TEL 072-362-2111