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ものづくり企業の次の一手は? 毎号6つの旬な記事で熱い「変革と挑戦」を紹介するモビロク。
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24時間365日営業、金属に魂を吹き込む、熱処理加工の心意気。

今ある設備と技術を活用して、もっと多くの方々に役立つことはできないかと考え、カスタムナイフの材料加工にも取り組んでいる

手前がイオン窒化処理の装置。奥にあるのは真空熱処理装置。カメラで製品が装置の中心にあるかを確認し、少しでもズレていたら調整する

熱処理は金属材料の機能を制御する工程であり、さまざまな工業製品の品質を左右する重要な技術だ。八田工業は真空熱処理やイオン窒化処理といった金属熱処理加工を中心に、ワイヤーカット放電加工や細穴放電加工、平面研削加工といった機械加工の両方が同時にできるのが強み。特徴ともいえるのは、1993年から展開する「24時間365日営業」。そもそも同社は、株式会社八田製作所の熱処理部門から1979年に独立、現在は八田クラフト株式会社との共同運営となる。順調に業績を伸ばしていたが、メインであった自転車産業の国内における衰退やバブル崩壊によって陰りが見えてきた。そんなときヒントになったのは、年中無休で賑わうある店。不況で休日を増やしたり人員削減をする企業が多いなか、工場の24時間稼働を決意。いつでも高い技術ときめ細やかなサービスで、多品種少ロットに対応できる「プロショップ」の誕生だ。
緊急の駆け込み工場としての需要は、ことのほか多い。他の加工部門に特化している会社からの受注もあれば、社内に熱処理部門を持っていても、普段は扱わない温度のものが発生した場合などにも持ち込まれるという。「当社の炉は1tクラスで、小さいものに特化して扱っているため、極端に大きなものが混在することはありません。形状が違う別々の製品をうまく組み合わせて、ひとつの炉で加工するのが長年培ってきたノウハウです」。そう語るのは代表取締役社長の隅谷賢三氏。さらに「当社は技術・サービス業」というだけあり、クリーニング店のように、加工の種類や材質ごとの仕上げ期日を明記した「サービス表」も用意されている。たとえば夕方の仕事終わりに預けて、翌朝出勤前にピックアップすることも可能だ。「いかに早く炉にセットし、洗浄し、冷却するか」をマニュアルではなく、ノウハウとして持つからこそのスピーディな対応。「熱処理業としては後発組だからこそ、こういった新しいことに挑戦できるんです」。これ以外にも隅谷氏が掲げる「生き残るべき戦略」は、「キロいくらの熱処理の世界で、あえて軽・薄・細の製品に力を入れる」「一社あたりの売上ウェイトを10%以上にしない」など、独自の方針が貫かれている。特筆すべきは金属熱処理の一つ、アクティブスクリーン・プラズマ窒化処理を工業化したこと。ワーク表面の放電ダメージなく、均質に被膜形成できる優れた技術だ。
熱処理の歴史を紐解くと紀元前にまで遡る。遥か昔から道具を硬く強くするために熱処理はおこなわれてきた。それほど古い技術でありながら今でも基礎研究がされており、理論的に未知な領域が残っている、ものづくりとして珍しい分野。だからこそまだまだ進化の余地ありと、同社では独自の開発や産学連携にも積極的に取り組んできた。この春にはまた新たな成果が見られそうだ。「熱処理加工は製品が生まれるなかのひとつの工程に過ぎないが、命を吹き込み、魂を入れる仕事」だと熱っぽく語る隅谷氏。「この技術で本当に困っている人の役に立ち、一緒に地域を盛り上げたい。そこに自分たちの存在価値があります。いつか熱処理加工が、子どもの憧れる職業になるのが夢です」

八田工業株式会社
http://www.hatta.co.jp/
堺市中区八田西町2-18-40 TEL 072-277-7227

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