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工業用高圧ポンプのパイオニアが次世代の切削法で高効率加工を実現。
現代のものづくりにおいて、切削加工はもっとも重要な基盤技術のひとつであることは言うまでもなく、次世代のものづくりにおいてもこの事実は変わらない。そんな切削加工の高効率化を実現する手段として注目されているのが、超高圧クーラントを利用したもの。
そしてこの分野を牽引するのが、トクピ製作所の超高圧クーラント「HIPRECO」だ。同社は1967年プランジャーなど高圧ポンプ部品の開発販売からスタートし、1984年には国内初のセラミック(アルミナ)を採用した工業用高圧プランジャーポンプを開発。2009年に初の自社ブランドとなる「HIPRECO」を発表した。高圧ポンプ製造に関わるノウハウを基盤に大学などの研究機関と連携して技術力の進化を図っている同社では、理論的根拠をもとに研究開発をするためその精度も高い。この超高圧クーラントによる切りくず分断システムHPB(ハイプレッシャーブレーカー)は、超高圧(7~30Mpa)のクーラント液をピンポイントで刃先に当てて冷却、その高圧水の液圧がチップブレーカーとなり、切りくずを細かく分断し切削エリアから迅速に排出。従来のシャワー式クーラントはクーラント液を全体にかけるため、インサートチップの刃先への冷却効果が弱く、インコネルなどの難削材を加工する際は、熱がこもりやすく刃先摩耗による効率低下が問題だった。HPB方式では生産性の向上・刃物寿命・補正作業という長年の課題を一度に改善する。
代表取締役社長の森合主税氏は語る。「従来のクーラントの役割は、切りくず除去・冷却や潤滑効果ですが、ここに超高圧クーラントで切りくずを分断するという役割を加えたのが当社の製品です。航空業界はじめ各業界から高い評価を得ており、すでに自動車用部品製造ラインに採用されています」。「HIPRECO」の原動力である高性能高圧プランジャーポンプは最高品質のパッキンを使用し、セラミックのプランジャーを使用することで長寿命を誇り、消耗部品の交換も容易だ。「普通の旋盤に「HIPRECO」を設置することによって、既存の機械が高速機に生まれ変わります。これによって難削の加工生産性を飛躍的に高め、加工時間も大幅に短縮し、エネルギーの使用量も削減できるのです」
同社では産業用高圧ポンプをベースに、その応用商品の設計や製作も手がけ、食品業界の清掃・衛生用、自動車部品の洗浄機、建設業界や航空業界などさまざまな分野で使われている。さらに新たな事業としてこの技術を応用した空気清浄式加湿器も開発。これはミストにUVライトを照射し除菌するもので、高圧ポンプが超微細水をノズルより6MPaの圧力で噴射し、室内の加湿をおこなう。センサー搭載で湿度の設定と自動管理が可能で、噴射した超微細水は室内空間に浮遊する有害物質や臭いを吸着・溶解する。
「切削は日本のものづくりの得意技です。しかしグローバル化の波とともに、生産拠点が海外へとシフトし続けています。私たちは国内生産のメリットを高めるため、“生産性の向上”“コストダウン”をテーマに超高圧プランジャーポンプ及び応用製品の開発に注力しており、それがひいては国内のものづくりの復権につながって欲しいと考えています」
株式会社トクピ製作所
http://www.tokupi.co.jp/
八尾市大竹3-167 TEL 072-941-2288